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砂川見聞録  作者: ぢだぱぢぴぢぱぢ
3話「砂川、裁く」
57/336

[3-21]なりたいかな

 「なりたい、かな」笑星くん、お見舞いも頑張ります。何をとは云いませんが無理矢理ぶち込んで次回ラストな3話21節。


挿絵(By みてみん)




――[Time]19:15

――[Stage]邊見の病室




【笑星】「……ってことがあったんだー」

【邊見】「だからえっちゃん、今日クタクタなんだねー」


 その夜。俺は病院を訪れていた。


 勿論、親友に会うために。


【笑星】「邊見の方は、どう? 頭痛くない?」

【邊見】「ばっちしー……とは云えないかなぁ。明日には退院できるっぽいけど、運動はダメだってー」


 意識の無い姿を見た時は可成り心配したけど……邊見は案外、すぐに目を覚ました。頭を怪我したんだから軽くは決してないんだけど、さほど重傷ってほどでもないみたいだ。


 だけど頭の怪我の影響はどのタイミングで何回表に出てくるか分からないので、暫く様子を見なければいけない。


 ……何も悪くないのに、また一方的に被害を受けた邊見は、それでも邊見らしく、のんびり笑っていた。凄すぎると思う。


【邊見】「ふふ……」

【笑星】「? どうしたの、いきなり笑って」

【邊見】「ううん、ちょっとね。あの頃とは、逆だなーって思って」

【笑星】「……そういえば、そうだね。」


 あの頃は、俺が病院に住んでいて、邊見が俺に毎日会いに来てくれていた。


 あの時邊見がやってくれたことを多少体験してるみたいで……改めてもう1回思う、この親友は凄すぎる。


【笑星】「そうだ、今日はお土産持ってきたんだー」

【邊見】「それを云うならお見舞いじゃないの~? って、何これ?」

【笑星】「漫画ー。俺漫画部の皆とも何か仲良くなれてね。少し前に作ったやつを貸してくれたんだー。薄いから簡単に読めるかなって」

【邊見】「へー。確かに、薄いね~。ありがとえっちゃん~」


 ……邊見は漫画を読み始めた。


【邊見】「……………………」


 ……………………。


【邊見】「……んん? このキャラ、どっかで見覚えが~……んんん~?」


 ……………………。


【邊見】「うわ……うわわわわわ……」


 ……………………。


【邊見】「~~~~~~~……!」


 ……読み終わったっぽい。


【笑星】「どうだった?」

【邊見】「すっごく……笑顔だったねー」


 邊見は何かポカポカしてそうだった。ちょっと無理をさせてしまっただろうか。


【邊見】「えっちゃんは、その、こういうのをもういっぱい読んでるの~?」

【笑星】「漫画部から借りた分は全部」

【邊見】「そっか~~……そっかぁー……」

【笑星】「邊見?」

【邊見】「ううん、何でもない~。そういえば……えっちゃんって、好きな人いるの~?」


 話題が急に変わった。


【笑星】「え、いきなり何?」

【邊見】「別に大したことじゃないんだけどね~。今のって、えっと~、恋愛系? だと思うから。えっちゃんがそういうのにハマったのちょっと意外に思ってね~」

【笑星】「冒険ものも普通に好きだけどなー。でも、初めてそういうの読んだけど……何て云うか、凄く幸せなことだと思うなって」

【邊見】「幸せ?」

【笑星】「悩んで苦しむこともあるけど……好きな人が居るから、その人と一緒に笑いたいから頑張ろうとするのって、良いじゃん!」


 普段の茅園先輩と松井先輩も良いけど……この漫画は、もっと、満面の笑顔が咲いていた。


 咲けば咲くほどに、その人は……その世界は幸せに満ちるに決まっているのだから。


 だから人を好きになるってことは、総じて素敵なことだと思った。


【笑星】「でも……そっか。俺の好きな人、かぁ……俺、基本的に皆のこと好きになりたいけど」

【邊見】「それもえっちゃんらしいけど、特別な人がいるっていうのも素敵だと思うな~」

【笑星】「邊見は誰かいるの? 好きな人」

【邊見】「ひみつー」

【笑星】「人に訊いておいて……じゃあ、俺も秘密ー!」


 ……ていうか、誰か居るんだろうか。


 ほんと、好きな人っていうならいっぱい居るけどさ。父ちゃんたちも、姉ちゃんも、邊見も……。


 茅園先輩も、松井先輩も、玖珂先輩も。それに――




*****



【鞠】「――何で敗者が勝者に命令してるんですか?」

【児玉】「試合を組ませないつもりか!! この外道が!!」

【鞠】「組めるなら組めばいいのでは? ただそこに紫上学園は関与しない、それだけの違いです」

【信長】「ま、待ってください会長……!! 学園としてしか……公式試合には出れません!!」

【鞠】「困るなら、解決は簡単なことです」

【児玉】「――!?」

【鞠】「誓約書を、部長が、私に、手渡せばいいんですから」



【鞠】「――誰に口聞いてるんですか」

【学生】「「「――――」」」

【深幸】「全ッッ然!! 笑星じゃねえじゃん!! ていうかこれ、お前らじゃねえか!!?」

【信長】「なんと……なんと卑劣な!! 恥を知るのはどちらだ!!」

【四粹】「……動かぬ証拠が、見事に揃っていますね」

【鞠】「……(←パシャリ)」

【学生】「!?」

【鞠】「学園設備の毀損及び不当な方法で紫上会に攻撃を仕掛けるに飽き足らず、紫上会の面子に――というか1人の学生に甚大な心的ダメージを負わせた貴方がたには、少なくとも全恩恵の剥奪、可成りの可能性で停学、私の匙加減によっては退学処分が待ってるので、まあ明日を楽しみにしておくように。以上」

【学生】「「「――――」」」

【鞠】「ごきげんよう」



*****




【笑星】「…………」


 ……あれ。


 何だろ。


【邊見】「――えっちゃん?」

【笑星】「え……?」

【邊見】「何か、顔赤い気がするよ~? 大丈夫?」

【笑星】「そ、そうかなぁ? 疲れてはいるけど、体調悪いって感じじゃないよ」


 だけど――何か、変だ。ちょっとだけ、動悸がぽわぽわしてる。


【笑星】「…………??」

【邊見】「ん~~~?」


 何て云ったらいいのか分からなくて……感情、だよね多分。だとしたらこの感情は、初めてで……初めて過ぎて。


【笑星】「……あぁ……もしかし、て……」


 手に持った漫画に、目を落とす。


 パラパラと捲って……


 笑顔の茅園先輩と松井先輩を、見開く。


【笑星】「これが……なのかな。分かんないけど」


 ――俺は、皆を笑顔にしたいけど。


 俺も、こんなに笑えて、こんなに幸せに、なれるかな。


 あの人は、未だに一度も見たことないけど。俺が頑張って……そしたら、笑ってくれるかな。


 そうしたら俺は、予想できないぐらいに、笑い合えるかな。


 だったら……


【笑星】「なりたい、かな」


 恩返しを、しつつ。


 なってみたいかな。この2人のように。


 一緒に、頑張れる仲に。一緒に笑う、2人に――




 作者は入院は多分したことありません。1回してみたい気もしますが、それは老後にとっておきましょう。

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