ドント・ストップ・アス・なう①
熱気で包まれた体育館は、いまだにその温度を保っていて、暑い。あたしは汗で肌にまとわりつくワイシャツの襟をつかんでバタバタし、上半身に風を通すも、ぬるい。ぬぐってもぬぐっても絶え間なく垂れてくる汗……でも達成感のおかげで、不快感はない。
とりあえず戦いが終わって、ほっと一息だ。いま、ステージとオーディエンスを分断する幕がおろされて、その向こうで文化祭の実行委員が投票結果を集計してくれてるらしい。たのむぜ会場の皆さん。
この待ち時間に壇上へ集められた、あたしたち「ダンデライオン」と「フリージア」は、距離をとり、一触即発の冷戦状態でお互いにらみ合いを――
「お疲れ様~、フリージアさんたち~。どうだったボクの、じゃなくてボクたちの演奏は」
空気を読まない特攻チャラ王子が、見えている地雷をものともせず突っ込んでいった。よし、爆発しろ。もしくは女王様に捉えられ、公開処刑されてしまえ。
「もちろんステキでした、特に……」
優しい梓ちゃんが口を開いた。でもどうせ「瀬名さんが」でしょうね、ストーカーちゃん。
「瀬……いえ、みなさん!」
「よっしゃー! ボク、大勝利!」
急に叫ぶソウ君に、あたしびっくり。まだ結果出てないからね? 何と戦ってんだ、このアホプリンスは。ぴょんぴょんすんな、床が揺れる。
「それと瀬名さん、申し訳ありませんでした!」
ピリピリしたムードが崩れたのを皮切りに、梓ちゃんがコーキ君に深々頭を下げてきた。
「ああ、スティックのことか。気にすんな」
「わたくしがはしゃぎすぎたばかりに……申し訳ございません。弁償いたします」
「俺は構わねえよ。いまになって手が痛くなってきたけどな。んなのより、お前らも大した演奏だったな、良いもん見れたぜ」
良いもんって(燈さんの白じゃなくて)演奏のことだよねぇ? 梓ちゃんは「ですが……」と食いつく。
「なあ? アンタが弁償ってもよ、そりゃ親の金だろ?」
「はい、元をたどると、そうなりますが」
「だったらよ、自分で稼いだ金で、今度なんかおごってくれ。俺はそっちの方がよっぽど嬉しいぜ」
梓ちゃんが、目を輝かせて「はい、喜んで」とブロンドのロングヘアーをフワフワさせた(わたあめみたいで、美味しそう)。うん、いい感じですな。お二人さん。
「ま、どうしても弁償って言うなら、そのデカいむ――がっ!?」
あたしのケリで、コーキ君の股間を真後ろからジャストミートして黙らせる。あたしの目が黒いうちは、言わせねえよ?
「てめえ……アイコ……うぐぐ」
「ごめんあそばせ、足が滑ったものでございますしてよ? おほほ」
「愛ちゃんったら、胡散臭い丁寧語ですね。そういえば、さきほどライブが終わった後、言ってた『よしなーにゃ、よしなーにぇすと』って何ですか?」
「えっとぉ~、比較級と最上級のよしなになんだけど……」
あ、梓ちゃんが、目線で射抜いてきた。ちょっとした遊び心じゃないですか。広い心でお願いしますよぉ? お嬢様ぁ。
「なるほど。愛ちゃん、今度遊びに行きましょう。山と海どちらがお好みですか?」
「…………空で」
「わかりました、自家用セスナを手配しておきます」
やばい、あたしピンチ。しかたない対梓ちゃん用最終兵器の投入だ。さっき拾ったアレを手のひらに乗せ、差し出す。
「これは……瀬名さんが折られたスティックのチップ!?」
ごめいさつぅ! さっすがぁアズアズ、理解はやいですね。あたしは言葉を発さずに、黙って彼女に見せつける。ほれほれぇ。
「愛ちゃんもたまには、役に立ちますわね」
捨て台詞と一緒に、あたしの手からドラムスティック先端をかっぱらうお嬢様。懐柔完了です。らっくしょう~!
梓ちゃんはギンギラギンに目を光らせて、ゴミをあがめている。蒼ガールズといい勝負ですな。すると股間を押さえたコーキ君が、
「くそ……おい、俺のドラムソロどうだった?」
「復活早いね、コーキ君。会場中のみんなが聞きほれてたよ。まちがいなし」
「みんな、なんぞ、どうでもいい。おま――アイコはどうだったんだ」
「うん、ホレた。当たり前じゃん。いままでで一番、コーキ君のことカッコいいと思ったよ」
無言で両手を掲げるコーキ君、でも声に出さずとも顔は喜びに満ち溢れてます。あたしなんかに褒められてそんな嬉しいか? あれ、梓ちゃんがわなわなしだして、
「こんなチップなんかいらないっ、愛ちゃんのおバカ!」
叫んでから、あたしに先ほどの宝物を投げつけてきた。またおでこに跳ね返って、チップ君はコロコロ転がっていく。痛ったいなあ~、なに怒ってんだか。わがままお嬢様は、ツイストドーナツよりねじ曲がった精神状態です。……さっきから食べ物ばっか連想する。お腹すいたな。あとで、和泉ちゃんといっしょに屋台で食い歩きしよ。
「うちの新人がごめんね~、剣崎さん。ほらアズアズってば、瀬名さんLOVEだから」
苦笑いしながらフリージア部長の燈さんが謝ってきた。ショートボブが軽やかにはねて艶めいてるぜ(さながら大きくて黒いリンゴ飴)。いやいや苦労人ですな、お互いに。
「平気です、あたし慣れてますから」
「うんうん、さっきも当たってたもんね。でも、ワタシもあなたが投げたピック当たったよ。お揃いだね、ほら」
そう言って、アシンメトリーの短い部分の前髪をわける燈さん。ほう赤くなってる、あたしが調子乗って投げたピックがステージ直下に座ってた彼女に当たったのか。もっと遠くに投げたつもりだったのに……。
「ごめんなさい、燈さん」
「気にしなくていいよ、剣崎さん。それと、ワタシのことはアカリンと――ぬわっ!」
あたしと燈さんの間に竹刀が割り込んできた。
「おうおう、アカリン。なれ合ってんじゃねえぞ、まだ結果は出てねえんだからな。仲良くするのは勝ってからだろ。な、ケンちゃん?」
高橋先生は出しゃばりますなあ~。そして彼女の天敵、まっちゅんこと松田先生が、突き出した竹刀をつかみ、握りつぶした!? ひええ、怖いよう。
「高橋先生いいかげんにしなさい。どっちの演奏も素晴らしかった、だからお互いをたたえる。今はそれだけでいいのでは?」
「う……はい。タコマッツ先生」
「コラァ! 反省しとらんな高橋ぃ! まったくお前は、私が担任の頃から変わらんな」
え? お二人とも昔からのお知り合いってことですか。高橋先生はここの卒業生で、あたしらは後輩……ということは?
「なんだ、剣崎。アタシが初代桜ヶ丘高校女子軽音部部長。如月翠だ。なんか文句あるか」
いえ高橋先生、なにもございませんとも。だから女子軽音部にやたらご執心だったわけですか、納得です。うん? きさぁらぎいぃ、みどぅりぃ!?
「なんだ剣崎、知らなかったのか。お前の先輩の如月蒼の姉だぞ、高橋先生は。ま、ご家庭でいろいろあっての高橋姓だがな」
「たはは、ばれちったな。すまん、蒼。学校では黙っとく約束だったけど、アタシのお口のロックがロールしちった」
「はあ……もういいよ、翠姉さん」
うお、聞きたくなかったそんな事実は。いまからでもなかったことにしませんか。
「うっそ、蒼君が……翠ちゃんの弟!? やっぱワタシはナイトハルト様一筋にしとこっと、二次元最高!」
燈さんがよくわからないことを言いながら離れていった。なんだ、ソウ君狙ってたんですか? 和泉ちゃんもどうすんだろ。衝撃の事実を知ったうえで、ソウ君への愛がトゥルーラブか否か試されますな。
「いやあ、如月じゃなくて五月だったら、面白かったのにな。残念ながらアタシ、誕生日が八月でさ」
「八月の誕生石がペリドットで翠ってことですか。五月生まれなら本当にエメラルドだったんですけど、おしかったですね」
「お、詳しいな剣崎。誕生石だなんて、やっぱ女の子だな。でも、あたし緑系の色って嫌いなんだよ。やっぱ自分のカラーなら、情熱の赤に限る」
朗らかに笑う高橋翠先生は、実年齢より若く見える、童顔の赤ジャージお姉さんだった。
「ということは高橋先生もソウ君と同じ、ドイツ血筋のクオーターですか。なるほど、姉弟なら高橋先生が美人なのもガッテンですね(年の差もけっこうですけど)」
「クオーターなら美人ってのも偏見だぞ、剣崎。ま、生まれがどうでもアタシはアタシだ。ビール好きで尿酸高いのは血筋のせいだけどな」
高橋先生がポッコリお腹をパンパン叩き、ソウ君がため息をつく。
「なんだ蒼、死んだ魚の目してんぞ。そんな顔すんなよ、今日のライブのお前かっこよかったのに。いわゆる、ベストアクトってやつだ」
「アクトって、なんだよ。役者じゃあるまいし」
「蒼はいつもベース弾いてる時、首の動きがキメぇからな。さながら人間ししおどしだぞ。今日はやってなかったトコを見ると、よっぽど集中してたんだな」
「だれがキモいだよ、ねえ、愛ちゃん?」
あたしは目を伏せ、ひたすらサイレンス。我は岩なりき。
「……ウソっ!? 本当なの!? ボクもう帰る!」
振り返って駆け出そうとしたソウ君を、リュウ君とコーキ君が捕まえる。お、ヘタレ王子がカエルとライオンに絡まれて、乙女心をそそる構図。
ほら和泉ちゃん、撮りなよ写真、漫画の資料用になりますぜ。あ、すでにバシバシ撮ってますか。燈さんも、嬉しそうなお顔。
「おいソウ。まだ、結果でてねえぞ」
「そうそう、コーキちゃんの言う通り。せっかちさんですね、我が部のアイドルは。そもそもなんでイスの代わりに脚立なんだ? 他にもなんかあったろ、跳び箱の一番上段の食パンみたいなのとか」
いまさらリュウ君が言うな。あなたが諸悪の根源です。
「ボクあせってたんだよ、あの時は。タイマー進んでたし!」
「そうだ伊沢ぁ! イスを蹴とばすな。お前は学校の備品をなんだと思っとるんだ! それと瀬名、お前は血まみれになってまで……」
松田先生のお説教タイムが始まって、静かになる重音部メンバー。なんかソウ君もついでに巻き込まれてるし、やれやれです。あたしは距離をおくぜ。
「ねえ、剣崎さん。あなたのギター……」
おおっと、まさか、ギターの女王様こと弦音さんが、キレイな黒髪ロングストレート(酢昆布に見える)を揺らし、あたしに話しかけてきた。
「あはは、いや、我ながらヘタっぴでして、ど、どうも」
「ホント下手くそだったわ。リズムギターだとしてもストロークの強弱くらい、つけなさいよ。カッティングも、弦のミュートも甘すぎ」
いきなりダメ出しっすか、弦音さん。コミュニケーションって言葉、知ってますぅ? お久しぶりのトークなのにぃ。
「あと左指も力入りすぎ。それじゃ、第一関節痛めるわよ」
「……それ、先輩に言われました」
「あら、一応指導くらいはしてくれるんだ、重音部の先輩」
「いえ、バイト先の先輩が、です」
「おたくの先輩はなにしてるの? ……ヒドイ先輩たちね、私たちなら、優しくちょうきょ――教育してあげるのに」
絶対「調教」って言いかけたよね? ムチを持ったボンテージ姿の弦音さんを想像して、会いたくなさすぎて震える。その筋の男には人気出そうだけども。
「でもほら、あたし、ちょうきょ――チョーキングは出来てましたよね」
「……出来てたけど。それ以上にあなたの変顔がオモシロすぎたわ」
「いやあ、クセになっちゃいまして~、あはは。ライブ映像の見過ぎですね。アームもそれの影響でちょっとアドリブで入れすぎちゃいました。トレモロアームで音をうぃんうぃんするの楽しいですよね」
ギターについてる棒状の金属で弦の張力を変え、音を変化させることができる。飾りじゃなかったアームは、うぃんうぃん。
「あなたってギター覚えたての子供みたい。いや、そのものか。アームのいじりすぎで最後の方、チューニング狂ってたわよ」
げ、ばれてる。怖えな、ギターの化身は。
「……フリージアさんの演奏、素晴らしかったです。三人が混ざり合って、シチューみたいにドロドロでしたね」
「なによ、会話そらして……そうね、それだったらシチューより、カレーがいいな」
「へ? カレーですか。まあ、三人とも仲良しで三位一体でしたね」
お、けっこう会話に付き合ってくれるのう、弦音さん。あなた、そんなキャラでしたっけ。
「あら、翠ちゃん先生も忘れないであげて。私たちが溶け合ったカレーなら、あなたたちは――肉ね」
はあっ!? よりにもよって肉ぅ? 女王様センスないです、リュウ君なみです。
「ベースのやさ男がタン。ドラムの瀬名がロース。カエル部長はカルビ」
なにそれ、しかも部位別っすか。ビーフオンリーっすか。
「そしてあなたは……タレ」
「あたしタレェ!? せめて、サラダとかになりませんかね」
「いや、あなたはタレ!」
断言されてもリアクションに困りますが。あたし、そんなに粘着質な女じゃないですよう……多分。
「タレでいいじゃない。私は好きよ? おいしくない肉でも自分味にする、あなたみたいにね。おかげで、バラバラ重音部がまとまったじゃない」
「褒められてる気がしないですけど、ありがたく受け取っときます。あの……最後の歌って、オリジナルだったんですけど、どうでしたかね弦音さん的には」
この流れで聞いてしまおう。いまなら優しく褒め言葉をいただけそうだ。
「えっと……歌詞のアツがナツいって、間違えた?」
あつがなっつ! 一番痛いとこを突いてきますね。その通りです。だって、リュウ君が夏の間ずっと「アツがナツい」言ってくるから、あたしもマネしてたらクセになって……はい、いいわけです。
「あれは……ライブアレンジバージョンなんです。ほら、ライブでもよくあるじゃないですか、アコギバージョンとか――」
「ウソつけ! 目、泳いでるわよ? やっぱり間違えたんじゃない」
「え、えっと、そうだ。サビ前のソロで、メロディのピアノと伴奏のギターが入れ替わるのがカッコよくなかったですか? あたしのアイデアなんです」
「よくある、ざらにある。凡庸」
クソがっ。グレてやる。前のコーキ君みたいなアホ金髪にして、高校五年生になってやろ。
「でも、コードチェンジで手元見なかったの、よかったんじゃない?」
「あどうも、えへへ」
「コード進行はよくあるパターン、いやパクリね。ソレとかコレとかアレとか――」
弦音さんがパクり元を次々と言い当てる。なんでわかるんすかね。つれえ、つれぇっす。どんどん丸裸にされてく、あたしたちの曲。
「歌詞はよくわからなかったけど、相手は『キミ』なの? 『あなた』なの?」
おっと、やっときましたね。まともな質問が。
「あれは別れた『キミ』と時間が経ち『あなた』に呼び方が変化したっていうことなんです」
なんです、はい。時間が無くて修正できなかった、というわけではないのです。
「そう、考え無しではないのね。ま、歌詞の意味聞くなんて無粋ってもんよね」
「そうです。解釈は個人的なもんですから」
「ふん、生意気な子ね。調教しがいがある」
「おほう! もはやドSを隠しませんね、弦音さん。勝つのはあたしたちですから」
「うちに来たら絶対ギターで死ぬほどしごいて、死なす!」
イヤだ、こんな先輩は。あたし殺される、練習でいびり殺されるぅ。甘党のあたしには激アマに接して下さい。剣崎愛のトリセツ、作りましょうか?
「あなたのせいで興奮して、私の血圧上がっちゃうじゃない。スイちゃんじゃあるまいし、この年で健康気にしたくないのに」
「高橋先生は尿酸ですよ。あたしの担任なんで、間違いないです」
「うわ、そうなんだっけ。ご愁傷様」
「それ以前におたくの顧問ですから、そちらこそごしゅ~しょ~さまで~す」
「やっぱりムカツクわね、あなた。高橋先生か……私はイトイじゃない。私はトイトイ……ふう、落ち着いた」
弦音さんってば、なんのおまじないなんだか、ブツブツ呪文を唱えてた。なんだ、やるのか。
「ねえ、剣崎さん。私、あなたに肝心なこと言ってなかったね」
ひう、宣戦布告ですか。望むところだぜぇ。よし、コーキ君の影にでも隠れよう。
「あなたたちの曲――いい歌だったね。私、感動しちゃった」
にかっと笑う弦音さんは、まるで晶ちゃんの笑いみたいな純粋無垢百パーセントな少女の笑顔だった。
「タイトルは何?」
聞かれても……決定案はないんだよな。どれもしっくりこなくて、今日にいたったので。「えっと~」と、口ごもるあたし。
「ふ~ん、決まってないんだ。変なの」
「あ、あ、あたし……いや、『ぼくたちのうた』です……」
「はっ、安直。その『うた』って、漢字の『歌』か『唄』? それともひらがな?」
「いや、ポエムの『詩』で……『うた』です」
「ふん、私のおかげで決まったようなものね。じゃあお礼はスコアでいいわ。ねえ、くれるんでしょ? ちょうだい!」
とっさにあたし「うんっ!、いいよっ!」なんて言いかけた。あぶね。そんなカワイイ顔でお願いされてもダメです。
「スコア渡す直前に叩いてくるんですよね。いつぞやみたいに」せいいっぱいの皮肉で対抗。
「いまのあなたのセリフでそれ決定、ぜったいぶん殴る。まっ関係ないか、どうせ私たちの部に入るんだし。そうすれば自動的にスコアも――」
「ぜったいごめんです。あたしダンデライオンの紅一点ですから」
「うちにきたら、美人ヒエラルキーの最下層ね。ケンザキアイさん」
小競り合いをしているあたしと弦音さんを、他のみんなが見てた。なんだよ、全員ともニヤニヤしちゃって。相容れないですからね、ホルスタインとまな板じゃ。乳でか女は、みんな敵だぁ。
「失礼します」申し訳なさそうに文化祭の実行委員さんが言ってきて、あたしたちが使った脚立で金紙メッキのくす玉を天井に吊るす。それが終わると、お互いのバンドが横一列に並ぶよう指示された。
あたしたちと会場を分断していた幕が再びあがり、明るくなったオーディエンスの顔が現れた。いろんな人が作り上げてくれたこの舞台もクライマックスか。
「おい、アイコ、手ぇつなぐぞ」
「えっ? コーキそんなキャラだったっけ?」
「こえ~んだな、コーキちゃん。ビビりだビビり、けけケ」
「いいよ。フリージアさんもやってるし。あたしたちも、みんなでやろうよ。ほい」
そうやってあたしたちは手をつないだ。うん、ぬるぬる。両隣のリュウ君の手とコーキ君の手が汗をかいてるのがわかる(あ、リュウ君の三本指が震えてる。自分だってビビってんじゃん)。ソウ君は残念ながら、コーキ君と手をつないでる。
そして、安っぽいドラムロールが会場に響き始める。
「さあ、会場の皆様、壇上のバンドの方々。お待たせいたしました。ただいま集計が終わりましたので結果発表となります。総投票数四百八十二票、両者を分けた票はわずか十七票でした。が、みごとこの戦いを制した勝者は――」
ジャンとシンバルが鳴り、ドラムの音が止まった。




