A・BLUE
土日はバイトをして過ごし、月曜日になった。さあ、今日からホントに部活頑張ろ。あたしは決意を新たにしつつ、我が高校名物の桜並木の坂道を登っていく。坂道前の長~いリムジンが気になったけど、まあいいや。
木々には小さな緑が生えている。あ、和泉ちゃんの顔から飛び出してきたような、ゲジゲジ眉毛みたいな毛虫も発見だ。
その坂道途中で後ろから「おはよう愛ちゃん」と声をかけられる。振り向いたら爽やかな朝にふさわしい健やかなソウ君だった。あたしも挨拶を返そうとしたけど、とっさに嫌がらせを思いつく。
「ロックンロール!」
へへ、いつかのお返しだ。元気よく言う。
「……こんにちばんはっ」
お、イヤミで返しますな。
ソウ君はちょっとむくれてる……でもカッコいい。何をしていても絵になる男です。
「ごめんごめん。おはよう」
「まったく、愛ちゃん……今日の部活は覚悟してね」
うーん、センパイ厳しいっす。お手柔らかにお願いしますよ、イケメンさん。
二人揃って歩きだすと、あたしは女子生徒たちの視線を感じる。「何あの女、消えろよ」とかしゃべってる。
……あれ多分、ソウ君のファンだ。超絶美形の王子の横に立つのはハードル高いっすね。
でもソウ君はそんなのお構いなしみたいで「愛ちゃん連絡先教えてよ。ボクとしたことが、聞くの忘れてた」なんて軽口叩いてくる。
はいはい、おおせのままに重音楽部のプリンスさま。あたしは従者にございまする。
あたしはソウ君に家の固定電話の番号を教える。
「ふんふん……って、家電なの!? 愛ちゃん、ボクのことキライ?」
「あたし中学の時はスマホ持ってたけど……こわしちゃって、それ以来ないんだ。だから家電オンリーです」
「どうせ愛ちゃんの事だから荒っぽく扱ってこわしたんでしょ? また買ってもらいなよ、写メとかも送れるし。ほらコレ、焼肉の時に撮ったやつ」
ソウ君がスマホの画面をこちらに向ける。その液晶には、変な顔のあたしが映ってた。いや、あたしはもっと可愛いはずなので、別人ですよ。
「ほら~。いい写真でしょ?」
「全然」
「ええ~。ボクの人生の中でもトップクラスの子だけど」
「えっ、うふっ。そう?」
「うん。だから一枚百円で絶賛販売中。実はもう二年生の中で予約殺到中」
ソウ君やっぱ、せっこい! つうか、本人に断りなく売んなし。
「……あたし写真嫌いなの、昔から写り悪くて。しょーぞーけんの侵害だよ?」
「そうかな? 可愛いけど。じゃあ、消すよ」
ソウ君は慣れた手つきで、あたしの画像を消してくれた。
「あれま、消さないで待受け画像にしてもよかったのに」
「それはヤだよ……じゃあ愛ちゃん。ボクの中学時代に作った曲、聞く? だから今夜電話するね、何時が都合いい? あ、ちなみに一曲五百円ね」
うわわ、マジ勘弁。あたしのプライベート壊さないでください。
そしてソウ君はいかなる時でも商魂たくましいですな。よしあたしも対抗してソウ君セミヌード写真でも和泉ちゃんに売ったろか。もちろん、あたし分の手数料はいたたきますけどね。
いや、くだらないこと考えてないで、断ろ。
「あたし、知らない番号は基本出ないから」
「これボクのスマホのナンバーです。ガードの堅い剣崎愛さん、ぜひ登録お願いしますっ!」
慌ててメモを渡してくるソウ君。レスポンス早い(普段から用意してんのか?)。あたし、朝から楽しくなってくるぜ。
「ソウ君は今二年生で、部活は一年の時からなんだよね」
「うん。リュウに誘われてね」
「やっぱり、きっかけはリュウ君なんだ」
「愛ちゃんも? なんだか不思議な奴だよね、リュウって」
「不思議っていうか、変」
「愛ちゃん容赦ない……ボクもともと中学の時からバンドやっててさ、ギターとボーカル」
そういえばソウ君、前にそんなこと言ってた。バンドと言えばギターとボーカル。女にモテるのもギターとボーカル。
「で、ボク高校でも軽音部入ろうと思ったけど。女子軽音楽部はダメって断られてさ~」
あっちに入部しようとしたんかい! あたりまえだけど女子限定でしょ。
「そしたら、どこで知ったのか放課後にカエルの化け物に付きまとわれてさ、仕方なく重音部に入部する羽目になっちゃった。その時のボク、毎日顔面蒼白だったよ」
リュウ君ってばソウ君のストーカーしてたのか。恐ろしや~。
「でも、重音部入ったら楽しくてさ。いまはリュウに感謝してる……かな。ベースもやってみたら面白いし。リュウに『指長いからベースやれ』なんておだてられたせいだけど。中学の頃は女の子目的みたいな部活で正直活動なんかほとんどしなくて。だけど今は月一で放課後ライブって目標があって、張り合いあるよ」
そっか、前に言ってた放課後ライブは月一か。ハードだな。
「それに、愛ちゃんが入ってきたおかげで正式に部活動になったわけだから、全国大会も出れるからね。まずは十月の関東予選を突破しないと、だけど」
「うう……今から緊張してきた。あたしできるかな」
「大丈夫、ボクがいるんだから。あ、ボクたちね、たち」
自意識過剰気味王子をしり目に不安で胸がいっぱいな、あたし。
校門につくと人だかりができてた。どうやら、抜き打ち身だしなみチェックを高橋先生監修のもと風紀委員会が執行しているらしい。
そこで高橋先生につかまっている生徒が一人。金髪ロングでフワフワヘアーの生徒だった。あれは多分、一年生の間でも噂になっていたハーフの子だ。名前は……
「おいコゥルァ、林田ぁ! 自毛証明書はぁ!?」
イカレ先生がヒステリックに叫ぶ。朝からお元気ですなぁ~(猿は山に帰れ)。
「申し訳ございません。わたくし、家に忘れてきてしまいまして……」
消え入りそうな声でハーフ女子こと林田さんが言う。
「たくぅ、忘れ物多いんだよ~、お前は。反省文コースな」
「そんな……。先生ならご存知じゃないですか。わたくしがハーフだってこと」
「規則は規則だ。とりあえず職員室来い」
地毛かどうかなんて見ればわかるだろ、高橋先生のアホが。また『書類』ですかぁ? お役所仕事お疲れ様でーす。別にいいじゃん。そもそも自分だって茶髪のくせに、えらそうにしちゃって説得力ないぞ。学校の理不尽に対して、あたしは腹が立ってきた。
でもあたしが動くよりも早く、一陣の風が頬をなでる。
「高橋先生おはようございます」
爽やかな五月の新風、如月蒼ことソウ君が高橋先生に立ち向かう。あたしのカラオケナンパの時と一緒だ。こういうトコはホントに王子みたいで、素直に惚れるぜ。
「……如月君。なに?」
「ボクも茶髪ですけど」
「君はクオーターでしょ」
「ボクがそれでいいなら、別にこの子もいいじゃないんですか?」
グイグイ食らいつくソウ君。いけいけ!
「君は二年生で、こっちは一年生。だからルールを徹底させる意味で」
「何のための決まりなんだか。先生の為ですか? 頭かたいですね」
気のせいか、周りの生徒たちも騒ぎ出す。よしよし、風向き変わったかも。
そこで人混みの中に太陽ーーいや違った、松田先生が現れた。スキンヘッドがまぶしいぜ。
先生助けてと念を送り手招くと、思いが通じたらしく、こっちへ歩いて来てくれる。
「まあまあ、いいじゃないですか高橋先生」
松田先生をそのまま高橋先生へぶつける。召喚完了。反撃開始。やっちゃって下さい。
「まっつん!」
ソウ君が嬉しそうに言う。あ、犬っぽい。
「だれが『まっつん』だ。まったく、顧問の名前もまともに言えんのか、うちの部活連中は」
松田先生も発言に反してフレンドリーに言う。
「ですけど、風紀委員規則では……」
「高橋先生、教師として職務を全うしようとする姿には敬服いたしますが、いささか柔軟性に欠けるのでは?」
「そう、ですかね……うぜぇな~、タコマッツが」
「なんか言ったか、高橋? ……ここは私の顔に免じてどうか」
深々と頭を下げる松田先生。ひえっ、光の反射で目が開けられない。いぶし銀だぜ。高橋先生とは役者が違いますなあ。
「松田先生、頭を上げてください、アタシ別に先生を責めてーー」
「それに、あっちの男の方がよっぽど規則違反では?」
こちらの騒ぎに乗じて校門を通ろうとしているのか、金髪ツンツン頭のコーキ君を指さす松田先生。
あ、金髪野郎が駆け出した。
「クォラァ! 待ていっ三年、いや五年生、瀬名光樹! ノーネクタイ、ノーエンブレム、ド金髪! 校則違反の役満だな、てめえ!」
逃げるコーキ君を見て、竹刀と共に陸上のお手本みたいな走りで追っかけだす高橋先生。二人で仲よくね。バイバイ。
こうして何とか正門を潜り抜けた我々だった。あたし関係なかったけど。
「皆様、ありがとうございました」
金髪ブロンドのハーフ女子、林田さんがお礼を言い、お辞儀する。その身姿にあたしは圧倒された。
彼女の制服着こなしはカタログにそのままつかえそうなデフォルト具合だ。超ダサエンブレムつけて、リボンとシャツの第一ボタンもしっかりとめて、スカート丈も膝隠れるくらいロング。
でも、野暮でなく可憐。なんとも清廉。お嬢様ってこの人のことですね。
このお方、あたしと同学年か。揺らぎまくるあたしのアイデンティティ……かみさま不公平じゃないですか。あたし作る時、仕事さぼってましたねっ!?
「い……いやぁ~、あたくしぃ、それほどのことはしておりませんことよぉ!」
プライドを引き裂かれつつも、あたしは精一杯の強がりで答える。
「愛ちゃんは本当に何もしてなかったじゃん」ソウ君がブーブー文句。
「いやいや、剣崎が私を呼んだんだ。な?」
「ありがとうございました。『松田』先生」
あたしは苗字をことさらに強調し、先生にコビを売る。
「うむ」と、まんざらでもなさそうな松田先生。よし、ゴマすり完璧。しばらくこの路線で行こう。教員用玄関で松田先生と別れた後に、林田さんがソウ君に近寄った。
「あの……如月蒼先輩ですよね?」
「ボクのこと知っててくれたんだ。嬉しいよ」
「先輩は有名ですから」
はにかむ、林田さん。和泉ちゃんライバル登場か? 勝てないぞ、こりゃ。お姫様と平安貴族じゃ勝負にならんね。
「そんなことないよ~。新歓のライブも見ててくれた?」
「はい。かっこよかったです。凄く」
ソウ君、鼻高くなってるよ。ナルシストっぷりがこっちに伝わってきてんぞ。
それにしても林田さん。あの『重音学部ハート事変・新歓地獄絵巻』がカッコいいだと? 変な趣味。
「いやいや。ボクなんか、全然だよ」
「でも、特に重音楽同好会のメンバーの中でもーー」
「うんうん」
あたしが入ったんだから、もう「同好会」じゃないでしょ。そこ訂正しろ。
「素敵ですよねーー瀬名さん」
「それ程でっ……ひゅう」
とっさに変なごまかし方をするソウ君。ザマアミロ。コーキ君が素敵ってのも、どうかと思うけどね。やっぱ変わってる林田さんだ。上品な子はゲテモノ好きなのかな?
「わたくし去年、この高校の文化祭で重音楽部同好会のライブを拝見しまして」
「ああ。去年の……」
魂が半分抜けてるソウ君。霊界お土産は甘いものでいいよ。
「力強くて繊細で、瀬名さんのドラム、最高でした。先ほどの駆け足もですが」
ふーん、そんな風に伝わるんだ。あたしも同じこと感じたな「新歓」で。
「じゃあ、林田さんも楽器か何かやってるの?」
親近感がわき、あたしは口をはさみつつ、二人の間に入る。どけっ腑抜け王子。お嬢様とはあたしがお近づきになるんだい。
「はい。わたくし、中学校ではブラスバンドでドラムを」
「おおー。だったら重音楽部に入部しちゃう?」
やった、部員もう一人ゲットォ! むさい部よ、さらば。時代は女子だよ、女子。
「でも、瀬名さんがいらっしゃいますし。それに、他の部に入ってしまいましたので」
「あ、そっか~。残念です。ちなみに、どこの部活? 吹奏楽とか?」
「女子軽音楽部……もとい、今は同好会ですね。わたくしを含めて三人ですから」
ほほう。あの美人二人組が今度は三人組になったわけか。林田さんなら見劣りしないし、ピッタリだ。
前に高橋先生が言ってた〝大型新人〟ってこの子のことか。あの脳みそカチコチ三十路ババアも自分が顧問してる部活の子なら、服装チェックくらい融通きかせろっての。
「実はあたし、重音楽部に入ったんだ。今度ライブやるから林田さん、聴きに来てね」
あたしの話を聞いて、林田さんの顔面が鬼に豹変(!?)なさった。なんですか、あたくし至らないとこがありましたかっ!? ごめんなさい!
でも彼女はすぐに柔和な顔に戻られる(よかった……さっきのお顔は、気のせいですよね)。
「そうでしたか……わたくし、林田梓と申します。お名前は?」
「あ、ご、ご丁寧にどうも……あたし、剣崎愛です」
「ケンザキアイさん。今後ともよしなに」
『よしなに!?』リアルで使う人いるのか。林田さんてば、お嬢夫人(?)ですね。
「あたしも一年だから。名前で、愛でいいよ」
「わかりました。愛ちゃん。わたくしの事も、梓とお呼びください」
玄関で林田さん、いや、梓ちゃんと別れる。すると足元の覚束ないソウ君が「今日は帰ろうかな」とか言い出した。メンタル弱いな~、豆腐王子。自分の王国に帰れ!
心の中で呆れながら、さっき気になる発言があったことを思い出した。
「そう言えば。ソウ君ってクオーターなの?」
「え? うん。母方がドイツ人」
「へえー。じゃあ帰省とか海外いくのか。いいな~、あたし飛行機乗ったことない」
「でも親が離婚してるから行かないよ。今は父親とボクで二人暮らし」
「そうなんだ、ごめん。プライベートに踏み込みすぎたね、あたし無神経でした」
「いいよ、小さい頃の話だし。そんな事より愛ちゃん、ボク相談があるんだ」
一変してマジメな顔になるソウ君。親の離婚話より重要なのか。あたしは身構える。
「女子軽音楽部って、どうやったら入れるかな?」
王子がアホなことぬかしよった。入れません、男は。
朝のホームルームが終わったあとでプリントが配られた。各列全員分のプリントを前方から一人ずつ取っていき、残りを後ろの人に回していくっと。あれ、あたしの分が足りないぞ。高橋先生に「足りませぬ」とアピールする。
「いやあ、朝っぱらから重音部のアホに引っ張りまわされ大変でな。いや~、重音部の五年生さんにさ~」
コーキ君を馬鹿にしながらも、鉄面皮の微笑を絶やさない高橋先生。
「アホなセンパイですいません。で、プリントは?」
高橋先生は無言で竹刀の先端にプリントを突き刺し、こっちに伸ばしてきた。
……あたしのこと、どんだけキライなんですか。あたしもあなたのこと大っ嫌いですけど。
プリントを竹刀から引き抜くと違和感が、「高橋先生、これ違うヤツですよね?」
「うん。反省文だけど? じゃ、アタシはスマホアプリと女子軽音同好会で忙しいから。もう話しかけんなよ? 重音部期待の新人、剣崎さん」
「反省文だけど?」じゃねーよ、現国教師のくせに会話も出来ねーのか、色香ゼロのジャージ女。あなたはマイライフのワースト教師に認定です。高橋先生コングラチュレーション!!
「愛ちゃん、わたしが後でコピーあげるよ」
ありがとう、和泉ちゃん。あなたこそがマイライフのベストフレンドです。
「んで、蒼様と瀬名さんの写真が欲しいです。ツーショットね。裸なら現金交換も可」
見返り求めてんじゃねーよ。タレ長目のオカメ女が。あなたはワーストフレンドに決定!
いや、そもそもあたしにフレンドなんていなかったか。んじゃ、ベストもワーストもないね。あはは……さ、授業の準備しよっと。
放課後、部室に行く途中でコーキ君に会う。和泉ちゃんと同じく真っ赤なおでこだ。よっ、お揃いだね!
「朝、あの後どうなった?」
「高橋センセー様につかまって、ハンセイブン書かされた。チクショー」
結局、つかまったんだ。ご愁傷様~。
「金髪生まれつきって言っても、信じてくんねーし」
「ウソつかないの。毛の根本、黒いし。マユゲも黒だし」
「けっ、クソが……そういや車で登校し始めてから、身だしなみチェックなんぞ忘れてたぜ。車側の門には先公いねーからよ。徒歩通学に切り替えた日にこのザマだ」
「え、車どうしたの? また悪戯された?」
「ちげえよ。お前が金を大事にしろっていたんだろが。工場の単発バイトも土日でやってみたがキツいな。あれで二万ももらえねえとはな」
「へえ~、コーキ君偉いじゃん。これでやっとお金のありがたみが分かるね。お互い頑張ろ」
「けっ、ずいぶんいい笑顔だな。確かに働いた後のメシはうまかったけどよ……腰が痛え」
「うん。充実感あるよね。バイト代入ったらおごってよ」
「バカ、食いに行くなら割り勘だ。すぐ無くなっちまうだろが。しかし、ソウのエロDVDも没収くらったから、どうすっかな。あいつ、ベンショーしろとか言いそうだ。ったく」
「あはは、ソウ君なら絶対言うね。しばらくは黙っとこ」
コーキ君をおちょくりながら歩いていると部室についた。中に入るとリュウ君とソウ君が、もう楽器の準備に取り掛かってる。
「遅いよ、二人とも」
そんなに遅くないはずなのに、ソウ君が文句を言ってきた。朝に帰るとか言ってたけど、ちゃんと残ってたか。いかがわしいDVDを失ったことを教えたくなるぜ。エロ王子め。
「ずいぶん張り切ってんだな。ソウらしくねえぞ」
「別に。今度の放課後ライブの日程も決まったし。あの子も振り向かせないといけないからね」
「あ? あの子って誰だ?」
たぶん林田さんのことだろうけど、話が逸れるのであたしが会話に割り込もう。
「お、ライブやる日決まったんだ。場所はどこ?」
「いつも通り、隣の視聴覚室だよ」
リュウ君がボソッと答える。なんだ隣の部屋か。体育館とか貸し切ってやるのかと思った。
「演奏する曲は何にするの?」
「いつも一人一曲選んでやってる。今回から四人だから、四曲だな。カバーでもいいし、オリジナルでもいいよ。キミが作曲出来るなら」
ニカっと笑うリュウ君。あたしできませんよ、歌作りなんて。いじわるカエルめ。
「そんなに、睨むなよケンちゃん。じゃあ、今日はライブ用の曲探しから始めるか」
「おうっ!」あたしの返事が窓揺らし、三人はしかめ面して耳ふさぐ。
さ、頑張るぞっ!




