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姉と兄は徹夜明けで、テンションがおかしいからな。
…わたしも気をつけなければ。
父こと皆藤柊(四十八歳)は、歳にしては落ち着いている。
いっつも穏やかで、怒ったところなんて見たことがない。
母こと皆藤菜雪(四十五歳)は、歳のわりには若く見える。
まだ三十代後半に見えるんだから、我が母なら恐ろしい人だ。
姉と一緒だと、姉妹に間違われてイヤだと言っている。
普通の母親ならば喜ぶんだろうが、母はそれが『母親らしくない』と言われているみたいでイヤそうだ。
そんな個性豊かな家族に、愛情いっぱいに育てられた。
だけどわたしには悩みがあった。
それは進路のことだった。
「はぁ…」
ため息がまた漏れてしまう。
重い足取りで、二階に上がった。
わたしの通う高校は女子校。
徒歩十五分で、途中にはコンビニがあってありがたい。
わたしはコンビニに入ると、温かい缶のブラックコーヒーと肉まんを一つ買うことを決めた。
お菓子売り場に行き、新作が出ていないかチェックする。
するとチョコレート菓子で、栗味とサツマイモ味の新作が出ていた。
「栗とサツマイモかぁ。…栗にしよ」
栗味のチョコと、缶コーヒーを持って、レジに向かった。
店員に肉まん一つを注文して、買い物終了。
「おはよー」
「おはよっ!」
学校近くになると、同じ制服に身を包んだ女の子達が増える。