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姉は蝶々や花を彫刻するのが得意で、若い女性に絶大な人気を誇っている。
リクエストなんかも受け付けていて、そういう時はアトリエから一歩も出てこない日もあるぐらい、仕事熱心な人。
そして兄はマンガ家。週刊少年誌でマンガを書いている。
アシスタントは一人も使わず、部屋で黙々と書いているにも関わらず、毎回締め切りをキチンと守っている。
しかも大人気連載で、今ではアニメや映画化の話まできている。
そして母は料理家だ。料理のみならず、お菓子も大好評。
父が言った通り、全国から注文が殺到するぐらいの人気がある。
そう…『注文』。
姉と母は、自分の作品をネットで販売しているのだ。
販売を取り仕切っているのは、実は父だったりする。
新作をホームページに載せたりするのも、父の役目。
なので姉と母は、作品作りに没頭できる。
個人で作っているので、数に限りが出てしまうが、それが人気の秘訣でもあるだろう。
兄は兄で、家から出ようとしない。
地下の他に、各階に書斎がある。
専門書からマンガまで、家族の本好きが高じて書斎が四つもできてしまった。
下手な本屋より品揃えが良いので、家から出て行くという考えはおきないみたい。
まあかく言うわたしも、そういう職に就くつもりなのだから、血は濃いものだ。
高校二年の秋、進路がこれほどまでしっかり決まっているのも、珍しいことだろうな。
わたし、皆藤花菜(十六歳)は深く息を吐いた。
すると隣に座っている姉が、茶碗を差し出した。




