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「言ってくれるわね!」
静かに火花を散らす姉と兄が近くにいるのに、両親はとっとと朝食を食べ始めた。
なので止めるのはわたしの役目。
「おねぇ、おにぃ、いい加減にしないと朝食冷めるよ?」
「おっと」
「食べる」
二人はすぐさま我に返り、各々自分のイスに座った。
「うん、美味しい! 肌寒くなってきたし、あったかいご飯が嬉しいわね」
姉は満面の笑顔で朝食を頬張る。
兄も黙々と箸をすすめる。
「アンタ達、少しは料理覚えなさいよ。いつまで妹に頼っているつもり?」
母がジロっと睨むも、二人はサっと視線をそらす。
「だってアタシ、料理苦手なんだもん。彫刻なら得意なんだけどなぁ」
「オレも…マンガを書くのは得意」
「二人ともそれが職なんだから、得意で当たり前! ちったぁ努力しろって言ってんの」
「なによぉ。母さんだって、料理しないじゃん」
「掃除とか洗濯なら…オレ達もやっている」
「掃除と洗濯は主に父さんがやっていて、アンタ等は手伝う程度でしょう! それにあたしは料理なんて毎日イヤッてほどしているから、うんざりなのよ!」
「母さんの作る料理、評判良いからね。特にお菓子とか、全国の人から注文くるぐらいだからね」
父が穏やかに言う。
…今までの会話で、大体は察せるだろう。
実はウチの家族、全員が外に働きに出ていない。
姉は彫刻家。まあ彫刻家と言っても、アクセサリーを専門で作っている。




