48
日をまたいでしまうのなら、まだ妥協して途中で止めるということができる。
でも作り上げてしまうのだから、途中で止められないのだ。
「ミホ、アンタも今日は早く帰りなさいよ。そしてミユちゃんにそれ渡して」
「あっ、そだった」
ミホはカバンと荷物を持った。
「じゃあ今日は大人しく、真っ直ぐ帰るとしますか」
「うん。お昼も家族全員で家で食べる予定だし。食べたら寝る。夜まで寝るわ」
「そうしな」
わたしは校舎を出ると、深呼吸した。
「う~ん。秋の匂いがするなぁ」
「ホント。食欲の秋よねぇ」
「…ミホの食欲は年がら年中な気がするわ」
背伸びをして、空を見上げた。
進路が決まったからと言って、楽になるわけじゃない。
これからが本番だ。
手芸についても、人生についても、いろいろあるだろう。
けれどわたしの心には、一本の芯が通った。
今後いろんな苦しみを味わうことになっても、何となく…そう何となく、大丈夫な気がする。
「カナぁ、早く帰ろうよ」
「あっ、うん」
わたしは先行くミホに駆け寄った。
「どうしたの? ぼんやりしちゃって」
「うん。進路も決まったし、とりあえずは…」
わたしは笑みを浮かべ、再び秋空を仰ぎ見た。
「ゆっくり眠れそうだなって思っただけ」
〔お終い〕




