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「…それじゃあ毛糸生地のケープなんてどうでしょう? オシャレな編み方を最近覚えたんで、作ってみましょうか?」
「ああ、頼む」
テレながら頼んでくる先生に、親近感がわく。
あんまりプライベートを明かさない人だからな。
「何なら先生には腹巻でも作ってさしあげましょうか?」
「腹巻?」
「はい。今から冷えますし、ウチの家族は冬になると全員着用しますよ」
ちなみに全部わたしの手作りで、わたし自身も付ける。
「ははっ、そうだな。じゃあその二つを頼む。できあがったら料金を教えてくれ」
「分かりました。それじゃあ早く作りますね」
「それは嬉しいんだが、せめて目の下にクマができない程度にしとけよ」
うっ! やっぱりバれるか。
「ほっほどほどにしときます」
「ああ、そうしてくれ。妻の誕生日は三週間後だから、急がなくてもいいからな」
「了解しました」
そこで担任とは別れ、教室に戻った。
「カナぁ、どっか寄ってく?」
「仕事が入ったから、やめとく。それに寝たいし」
ふわぁ~っと大きな欠伸をして見せると、ミホは苦笑した。
「また徹夜したのね。そろそろクマが定着しちゃうわよ」
「そうね。今日は大人しく寝ることにするわ。でも仕事は予約されちゃったから、編み方と毛糸の種類だけ、決めてから寝るわ」
「それだけで徹夜になっちゃうんじゃない?」
「あっ、決めるのは早いのよ。編むのも早いけど。だから徹夜しちゃう」




