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ミホの言う通り、担任はすでに一クラス分歩いていた。
「ああ、悪かった。それで何の用だ?」
「あっ、あの、進路のことなんですけど」
わたしとミホはお互いの顔を見て、頷いた。
「わたしは手芸の専門学校に進むことにします。駅前の学校に行きます」
「あっアタシは今は部活に専念したいと思います! なのであと一年はあたたかい目で見守っていただければと思います!」
ミホ…他に言いようがなかったのか?
隣で呆れているわたしに気付かず、ミホは言い切ったという満足そうな顔をした。
「…そうか。分かった。後で進路調査の紙を渡すから、それに書くように」
「「はっはいっ!」」
と言うことは、ミホの言い分も認められたってことか。
やっぱり全国大会の功績があるのは、強みだな。
「あっ、皆藤はちょっといいか?」
「はい」
「じゃあ先に教室で待っているわね!」
ミホは満面の笑顔で教室に戻っていった。
「それで林田先生、何でしょう?」
「いや、実はその…もうすぐ家内が誕生日でな」
「はい」
「皆藤は手芸が得意なんだよな? 悪いが一つ、作ってくれないか?」
「プレゼントですね? 良いですよ。何が良いですか?」
今の季節なら毛糸を使った編み物が良いだろうが、一年を通すならビーズアクセやレースの編み物も捨てがたい。
「そうだなぁ。皆藤のご両親と近い歳だし、喜びそうなので頼む」
ウチの両親…はあんまり良い手本にならないと思う。




