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わたしの作品を買ってくれた人が、書き込む感想板には、かなりの数、書き込まれていた。
感想のほとんどが、喜びの声だった。
『ステキなマフラー、ありがとうございます! 感激しました!』
『可愛いレースのコースター、買ってよかったです♪』
『ビーズのストラップ、ありがとうございました。友達に自慢しちゃってます!』
…こうやってわたしの作品を買ってくれた人の感想を知るのは、久し振りだ。
いつも適当にしか、読んでいなかった。
ホームページの中には、リクエストを受け付ける掲示板がある。
時々リクエストが入るので、そっちの掲示板はよく見ていたけれど…感想はろくに目も通していなかった。
手芸に集中し過ぎて、本来大切にするべきもの、そして大事なことを見失っていたかもしれない。
買ってくれているのは女性が多いからか、感想は多かった。
その一つ一つに目を通しているうちに、何だか無性に手芸がしたくなった。
今なら、スゴイのを作れそうな気がする!
「でも、感想を全部読んでからにしよう」
逸る気持ちを抑えて、一つ一つ慎重に見ていく。
わたしの手芸はすでに、わたし一人だけのことじゃない。
周りにいる人や、購入者との間にも関わりができている。
それをわたし一人の勝手で断ち切ることは、それこそ無責任だ。
わたしは一人の仕事人としての責任を、自覚していなかった。




