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けれど姉のことについては、わたしとの血のつながりをより強く感じてしまうので、両親には何も言えない。
アトリエにつながる引き戸を、わたしはドンドンと叩いた。
「おねぇ、朝だよ? 朝食できたよ」
「えっ! もう朝?」
中からはハイテンションな姉の声が返ってきた。
…どうやら徹夜で仕事をしていたらしい。
やっぱりわたしの姉だな。
変なところで感心しながら、ケータイをポケットから取り出し、時間を確認する。
「うん。六時半」
「ヤダぁ!」
引き戸の向こうから、
〈ガッシャン ゴロゴロッ!〉
という不吉な音が聞こえてきたので、両耳を手で塞いでやり過ごした。
「キャーッ! 売り物がぁ!」
「片付けたら来てね」
無情にも姉を見捨て、わたしは本宅に戻った。
そして今度はリビングを通って廊下に出て、地下一階へ下りる。
そう、ウチには地下がある。
ここには季節外れの物や、使わない物を入れたりする部屋の他、書斎や兄の部屋もある。
兄の部屋の扉を叩く。
「おにぃ、朝だよ。朝食できたよ」
「ああ…もうそんな時間か」
か細くも、はっきりとした声が返ってきた。
扉はすぐに開き、ぼんやり顔の兄が出てきた。
「…シャワーを浴びたら、行く」
「分かった」
兄と共に廊下を歩く。
ちなみに三年前に改築して、地下にもおフロ&トイレが作られた。
これは兄の為に、だ。