27
そもそも手芸はもう、わたしの人生の一部になってしまっているので、やめられないことは自分自身が良く分かってしまっている。
「はあ…」
暗い部屋の中、ベッドの中で何度も寝返りをうつ。
「~~~っ! ダメだ! もう起きよう」
一時間も悩んでいると、ノドも渇いてくる。
リビングに行くと、電気がついていた。
もうすぐ日付けが変わる時刻だ。
扉をそっと開くと、兄がいた。
小さな音のテレビをつけながら、スケッチブックを開いて、エンピツで一生懸命に何かを書き込んでいる。
「おにぃ、起きてて平気なの?」
「ああ、カナ…。お前こそ起きてて…って、明日は学校休みか」
兄はため息をつくと、スケッチブックとエンピツをテーブルに置いた。
「次のネーム、書いてたの?」
「うん…。今日原稿渡すついでに、打ち合わせしたから…」
「そうなんだ。あっ、ココアでも飲む?」
「ああ…お願い」
兄はズルズルとソファーに寄りかかり、ぐったりしてしまった。
マンガを書いている時に、激しく集中力を使う為、それ以外はズルズル・ダラダラしてしまうのだ。
気力がもたないらしい。
わたしはキッチンへ行き、二人分のココアを作って、リビングへ戻った。
「はい、おにぃ。ココア」
兄用のマグカップをテーブルに置くと、眼を開き、ゆっくりと飲む。
兄は生まれ付き、体が丈夫ではなかった。
病気をしやすく、寝てばかりだった。
そんな中、マンガを読んだり書いているうちに、マンガ家になることを決めた。




