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「おねぇの本はある意味、マニアックだから。本屋にずっと置いてもらえているかどうか、見て来いって」
姉の本は、姉の作品の写真集。
彫刻好きな人や、姉の作品が好きな人にはたまらないだろうけど、万人受けするような本ではないと、本人も苦笑しながら言っている。
「なぁる。やっぱり自分の作品のこと、気になっているんだね」
「そりゃそうでしょ。立派な収入源なんだから」
調べてきたら、わたしの本代は出してくれるとのこと。
だから本屋には行くつもりだ。
「おもしろそうだから、アタシも付き合っていい?」
「いいよ」
「んじゃ、食べ終わったら早速行こう」
「うん」
その後は二人ともケーキに夢中になった。
いろいろ話し込んでいたせいか、夕方になっていた。
なので同じ駅ビルの中の本屋に行くことにした。
まずは新刊として、母の本だ。
この本屋は新刊で、そこそこ人気がある本ならば、目立つ所に平置きしてくれる。
新刊売り場に行くと、おっ、あった。
「あっ、菜雪さんだ」
ミホが嬉しそうに小声で言った。
本の表紙はエプロンをして、アップルパイを乗せた皿を両手で持って、ニッコリ微笑んでいる母の姿がある。
「これで三人の子持ちには見えないわよね」
「それ、本人の前では言わないでね。コンプレックスに感じているみたいだから」
わたしはケータイ電話を取り出し、母の本を写真に撮った。




