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「うんうん。今日は早く寝ると良いよ。明日はガッコ休みだしさ」
「あ~でも帰りに本屋寄るの。新しい編み物の縫い方を紹介している本、今日発売だからさ」
視線を感じて顔を上げると、ミホが呆れた顔をしていた。
「…全然休めないじゃん」
「本ぐらいは良いじゃん。勉強したいのよ」
わたしには手芸の師匠や先生がいない。
子供の頃に祖母に教わり、後は独学と練習と研究を繰り返して、腕を上げてきた。
だから最新の情報は知っておきたい。
「あっ、それと母さんの本が出ているか、見るんだった」
「菜雪さんの本? 今度は料理? それともお菓子?」
「お菓子。焼き菓子特集の本、出したの」
母は料理の他に、本も作って出している。
料理の内容はさまざまで、最近ではお菓子の方が注目されている。
どれも五十万部を突破するベストセラーで、でも本人は本より料理をしている方が好きらしい。
なので編集は実質、父がやっている。
母からレシピを聞いて、それをまともな文章にして書籍化をしているのだ。
だから両親は本当に相性が良いパートナーなんだな、って思う。
「あとおにぃの本の置き方を見とくのと、おねぇの本もあるか見てくるように頼まれてたんだった」
「菜月さんの本の置き方?」
「うん。書店によってオススメにされているか、平置きされているか、本棚に入れられているか、さまざまだから」
「なるほど。んで、菜摘さんの本があるのかって、どういう意味?」
わたしはミホに顔を寄せ、小声で説明した。




