10
「いい加減決めないと、担任の胃に穴が空くよ」
「アタシだって決められるもんなら決めている。ただ勉強はしたくないけど、働きたくもないだけ」
「…じゃあ将来は『ニート』って書けば?」
「アンタ、けっこう言うわね」
「親友として、心配だわ。ミホの将来」
言いながら袋から肉まんとコーヒーを取り出す。
「あれ? 朝食食べなかったの?」
「ううん。足りなかっただけ」
「足りない分、無かったの?」
「おねぇとおにぃ、それと母さんに取られただけ」
未だに姉と兄は良く食べる。
昨夜、ご飯がけっこう余っていたので、炊かなかったのがマズかった。
おかわりの二人分をよそったら、空になったジャー。
味噌汁も余分には作らなかったから、母のおかわりで最後だ。
何より時間がなかったので、コンビニで足りなかった分を調達した。
「でもさ、朝、ご飯と味噌汁、目玉焼きにウインナーと漬物食べて、それでも足りないってどうよ?」
「一杯ずつだったんでしょ? 足りるわけないって。アタシ、ご飯三杯と味噌汁二杯おかわりしてきたもん」
「…さすがバスケ部主将ね」
「秋になると、その権力も薄れるわよ。体育館、使う機会減るから」
冬になると校庭やコートで練習していた運動部達が、体育館へと練習の場を移す。
なのでバスケ部も、練習の回数が減ってしまうのだ。
ミホは運動神経が良く、面倒見も良い為、一年の秋から主将になることが決まっていた。