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三年目の追憶  作者: 青鷺 長閑
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四章……三年目、其の三。

 何だかんだで、拓海が神菜のことを話してから一週間が過ぎたある週末。

 拓海も最近見ないし、あの話はまとまったのかなと思っていた矢先のことだ。

 プルルル……

 いつもの講義を終え俺が家に帰ると、間もなく家の電話が鳴り始めた。

「もしもし」

『俺だ、拓海だ』

「拓海か。何か用か」

『あぁ、丁度先週、昼メシのときに話したことなんだけど』

「昼? あぁ、神菜のことか」

『先週末な、実家に帰ってたんだよ』

 ……どうりでしばらくコイツと音信不通だったわけだ。

「へぇ、それは良かったじゃないか」

『でさ、俺の実家と神菜の家って近所じゃん』

 確か直線距離20メートルぐらいだったか。

 三人とも実家は工業団地の一角なので大差はないのだが。

「それで?」

『まぁ久し振りだったんで、ちょっと挨拶に行ったんだよ』

「まぁ三年振りだしな。で、ご機嫌はよろしかったのか」

『それがな、家に誰もいなかったんだよ』

「そうか」

『それだけなら、じゃあ家族で出かけたのかなってなるんだけど』

「何だ、違うのか」

『何度かインターホン押してるうちに近所の爺さんが来て、ここ一カ月ぐらい家に誰もいないって言うんだ』

 何度もインターホン押すお前バカだろ、と思ったが今突っ込むところはそこではないようだ。

「一か月?」

『そう。これまた近所の方の話なんだが、どうやら神菜は寮にも全然戻っていないらしい』

「寮? てことは何だ、アイツも結局大学に進学したのか」

『独断なんだか何なんだか知らないがそうみたいだな』

「まぁ、進学してもおかしな話ではないが……で、その近所の人は誰からその話を?」

『知り合いで神菜と同じ寮で生活してるヤツがいるって』

 しばらく俺は声が出なかった。

 海外旅行? いやにしたって一カ月は長すぎないか? じゃあ何だ。

 ……当たって欲しくはないがこれはひょっとすると先週の悪寒はあながち間違いではなかったのでは……?

 拓海もどうやらそこへ思い当たったのか、

『明日お前暇だろ』

「暇だけど急に何だ」

『探しに行こう』

「神菜をか? だって進学先も分からないし、第一寮ってことは相当遠くにいるんじゃ……」

『通ってる大学は分かる。近所の方が知っているらしい。そこで誰か責任者に訊けば大まかな事情ぐらいは教えてくれるだろう』

「大学側は神菜が何で休んでるのか分かるのか」

『一か月も休んでることになるんだよ? どう考えてもおかしいことに気付いて親に連絡くらいはとってるだろう。問題なのは近所の方と大学の間になんの情報伝達手段もないから俺達もわけが分からなくなることなんだよ』

「さっきの、神菜が寮に戻ってないこと知ってた人は」

『同じ寮でちょっと小耳にはさんだぐらいだから詳しい事情は分からないらしい』

「そうか……」

『一紀、どうだ? 深く探しに行こうとは思っていないし、事態は俺達が思ってる程大変なことじゃないかも知れない。でも近所の人たちが心配してることもあるし……』

「そうだな。ちょっと見に行ってみるか」

『そうしてくれると助かる。じゃあ明日の朝九時に俺の寮に来てくれ』

「分かった」

 ガシャン、と俺は受話器を力なく置く。


 事態は俺達が思ってる程大変なことじゃないかも知れない。


 俺はその日、一睡も出来なかった。


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