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三年目の追憶  作者: 青鷺 長閑
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三章……三年目、其の二。

 何ということか。

 講義が、終わっていた。

 今までも眠くなることは多々あったし実際夢の世界に浸っていたこともあったが、一時間全てをそれに費やすなんてことは初めてだ。

 しかも見ていた夢が夢だ。

 高校時代の記憶を今更掘り起こしてどうする。

 俺は急いで、上下に可動の黒板に列挙されているトンチキな横文字を手元のルーズリーフに次々コピー&ペーストする。


 そう。

 俺はあれからずっと、道なき道を彷徨い歩き続けていた。

 拓海の意志が変わらないのなら、せめて自分はその道、拓海が自ら切り拓いた道について行ってやろうと思った。


 つまり、俺は志願を出した。

 拓海と同じ大学に。

 

 両親は「正直受かっても落ちてもいい」みたいに考えていたようだ。一か八かってヤツだ。

 後悔したくないから、せめて死ぬ気で勉強して、幸運の女神を少しでも引き寄せてやろうと俺は努力した。

 結果。

 どうやら女神は味方してくれたらしい。

 共通一次も二次も見事合格ってワケだ。


 午前の講義中、俺はずっとそんなことしか考えていなかった。

 昼になって、俺は拓海と中央玄関で待ち合わせ昼食をとることにした。

 大学にコンビニを併設しているので、一日講義を取っている日はいつもそこで適当に買って食べることにしていた。

「なぁ一紀」

「はん?」

 拓海がさっきの夢に出てきたような神妙な面持ちで話しかけてきた。

「神菜、今頃どうしてるかな」

「カンナァ?」

 カンナ、カンナって誰だ? 俺は記憶の底の人物データから「カンナ」に一致する日本語のページを検索する。

 検索を開始、したと同時に思いだした。


 春浦神菜。アイツだ。

 小、中、高校まで俺ら二人と一緒の学校だった女。こいつもまた小学校入学以前から知っている幼馴染だ。

 しかも中一まで三人例外なく同じクラスだったというのだから衝撃的だ。

 そんな奴をすぐに思いだせない俺もどうかしてるが。

 身長が150センチ程度と小さく、肩にかかるくらいの赤茶色がかったストレートヘアーが特徴的な神菜。

 そう言えば中一以来、俺らが神菜と同じクラスになった記憶はないな。俺が咄嗟に思いだせなかったのも仕方な……くないか。

 でも何で今更……あぁそうか。

「お前、そう言えばアイツのこと好……」

「だぁぁ! 違うっつの。ほら、俺らの学校同窓会みたいなのないじゃん」

「ないというか幹事がやる気ないだけなんだけどね」

「とにかくさ、神菜怒ってないかなと思って」

「? そりゃまた何で」

「高校卒業するとき、俺大学行くってお前に言ったろ。それまで就職って決めてたのに」

 その記憶をたったさっき夢で見たんだがな。

「それがどうかした?」

「あの約束、揃って就職っていうの、神菜にもしたよなぁ」

「……そう、だっけ」

 よく覚えていない。でも拓海が言うのなら三人でそう約束したのだろう。

 あれ、でもさっきの夢では……

「じゃあ、やっぱり大学目指すって話は神菜には……」

「してない」

「そうだったのか。じゃあアイツは就職したのか?」

「それが分からないんだ。多分どこかしらに就職したとは思うけど」

「じゃあ何も危惧する必要はないんじゃないか」

「だって神菜はプライド高かったじゃんか。そういう事気にしてそうだなと思って」

「今さら心配することでもないさ。……さてそろそろ午後の講義が始まるから行くわ」

「そっか。分かった。じゃあ俺は帰る」

 拓海は今日の午後の講義はない。じゃあ何でここでメシ食ってたんだよ……


 拓海と別れ俺は午後の講義へと向かうことにした。

 何故だろう、神菜の話を聞いてから妙に引っかかるものが脳裏にある。


 それに、嫌な予感もする。

 アイツとは中二になってからというもの全く――少なからず俺は――会っていない。

 だが確かに覚えている。

 小学校の卒業式を終えて暫時、俺達三人は各々の将来について語り合ったことがあった。

 幼馴染だからといっていつまでも一緒なわけじゃない。いつかは必ず別れの時が来る。

 その制限時間-タイムリミット-とは、即ち「死」を以って別れるということ。

 もちろんそこまで三人寄り添って生きていくわけではなかったので、いや、だからこそ決めたのだ。


 高校を出たら就職しよう、と。


 正直「こんなこと小学校卒業してすぐに考えることじゃねぇや」と思っていたが、どうやらそうして正解だったようだ。



 なぜそうして良かったのか、俺はこののち知らされることとなる。


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