まずはプレイヤー神木龍臣(かみき・たつおみ)の紹介から
俺は神木龍臣という、ヲタ野郎と呼ばれる引きこもりの男子中学生。
いわゆる典型的な異世界ファンタジーRPGのヲタ野郎だ。
そんなヲタ野郎でありながら、趣味の合う友達がいない。
中学校から学校になじめず、不登校になった。
リアルで友達ができなかったから、ネットで友達を求めていたが、そのネットでさえ、相手にされていない。
そんな俺の唯一の趣味は、異世界ファンタジーRPGで遊ぶことだ。
最近では不特定多数のプレイヤーたちともゲームを通じて交流をはかることができるという。
そんな俺の最近のお気に入りの異世界ファンタジーRPGが、『美女とヲタ野郎の異世界転生RPG』という、まさにこのタイトルの『ヲタ野郎』は、俺のことを指しているんじゃないか、と思うようなタイトルのゲームだ。
実は、この『美女とヲタ野郎の異世界転生RPG』は、第1作から第10作まで発売されており、さらにはPC、スマホ向けにも配信されているという大ヒットのシリーズだ。
そしてさらには、歴代シリーズの全ての主人公、ヒロインとなる美女たち、さらには歴代のラスボスや伝説の装備、究極魔法や究極召喚獣に至るまで全て登場してくる、デラックス詰め合わせ版まで発売、配信されるという。
ちなみに、そのデラックス詰め合わせ版のタイトルというのが、
『美女とヲタ野郎の異世界転生デラックス外伝 歴代の全勇者、全ラスボス、全仲間キャラクター、そして!歴代全ヒロインが全員集合スペシャル!』
という、見ての通りのタイトルである。
そしていよいよ、神木龍臣は、アプリを起動し、実際に『美女とヲタ野郎の異世界転生RPG』の1~10までのシリーズをプレイすることにした。
ところがこれがとんでもない試練となった。
なんと、その瞬間に部屋の扉が閉じられ、特設のトイレと、さらには食堂のカウンターらしきものが現れる。
つまり、食事とトイレだけは確保できるようだが…。
そして一枚のメモ紙が、龍臣の目の前に。
「なんだよ、これ…。」
そのメモ紙には、こう書かれてあった。
「ようこそ、神木龍臣君。
私はこのゲーム『美女とヲタ野郎の異世界転生RPG』の開発者だ。
今から君は、ひたすらこのゲームをプレイし続けろ。
とりあえず、食事とトイレだけは好きな時に行かれるようにしておいたが、
『美女とヲタ野郎の異世界転生RPG』の1~10までをクリアし終わるまでは、君はこの部屋からも、そして家の外にも出ることはできない。
部屋の外に出たければ、そして家の外に出たければ、
このシリーズの1~10まで、さらにはデラックス版も含めて、ひたすらプレイし続けて、そしてその全てをクリアするのだ!
ふはははは!」
「おい、ふざけんなよ、このゲームの開発者とかいって、何だよ、これはよ…。」
とんでもないことになってしまったが、こうなった以上は、全てのシリーズをクリアするしか無い…。
順番をとばしたりとかは、できないというルールのようだ。