えっ森田くん…タクマくん…
私、小泉 菜々子は控えめな高校二年生!
緑が鮮やかな7月上旬…
朝のホームルームで、ジェイ(後藤先生)が
『おはよう、入ってくれ。』
(ガラガラガラ)
「えっ!転校生?!」
『今日からみんなと一緒に過ごす、近藤タクマ君だ。仲良くな!』
なーんて、ありえない事をまた妄想してしまった。
いつも通りのジェイ。
『明日は、模試だぞー。頑張れよー。』
と言い、教室を出た。
〝小泉!〟
後ろから声がした。振り返ると…
「山下くん!どうしたの?」
『今日、一緒に帰れないかな…?』
そんな事など言われたことないし、いわれる予定のない妄想。
単純に新刊の漫画を貸してくれって言われただけだ。
放課後の図書館、ちょっと静かな空間は少し緊張する…。
〝菜々子〟
「あれ…?森田くんも図書館で勉強なの?」
『中間試験近いからな〜!
菜々子は勉強はかどってる?』
「ぼちぼちかな…」
『菜々子って化学得意だよな?
教えてくれないか?』
「えっ…うっうん…」
皆さん。お分りいただけただろうか。
〝菜々子〟から全て妄想。
『7月の終わりに新刊でるよな!!楽しみ!じゃあな!』
と言われただけだ。
今日も小泉 菜々子は妄想を糧に生きてゆくのである。
終わり。