先輩と小嶋くん
「んっ……ぁ」
誰もいない放課後の教室の隅で、私たちは体を重ねていた。
「こ…じまく…っ」
「もうイク?」
「ぁ…っ、やだ……」
体の奥からぞわぞわと何かがくる。
思わず小嶋くんの服の袖を握る手に力が入る。
それでも小嶋くんは動くのを辞めない。
むしろさっきよりも激しく、早く。
「あ…や、だめ…っ!」
途端、体にビクッと衝撃が走り、力が抜けた。
そのまま小嶋くんにもたれる体勢になって、荒くなった呼吸を落ちつけようと息を吐く。
「先輩、本当にイクの早いよね」
「こ、小嶋くんが…弱いところばっかり攻めるから…」
「けど、もう慣れた?」
「慣れるわけないじゃん!入れるとき、毎回痛いんだから…」
二人で向かい合って、少しだけ笑いながら、そんな話をする。
今の私にとって、小嶋くんと共有できる時間はこれしかない。
その為だったら、例え小嶋くんにとってただのセフレであっても、私は構わない。
事を終えると、小嶋くんはもう私を見てくれない。
それぞれ無言で片付けをして、支度ができたら出ていく。
さっきまで触れていた肌には、まだ小嶋くんの温もりが残っているのに、その温もりはあっという間に冷めていく。
最初の頃はそれが辛くて、やっぱりこの関係を辞めようと思っていた。
けど、小嶋くんが私を求めてくれるから。
"彼女がヤらせてくれない"
"じゃあ…私とする?"
"いいの?"
"…うん。いいよ"
そうして私と小嶋くんは周りには誰も言えない関係になった。
こんなのだめだってわかってるけど、小嶋くんを嫌いになれない私は、小嶋くんと一緒にいられるならなんでもよかった。
もう恋人に戻れないのは分かってるから。
だから、一瞬だけでも小嶋くんが私の全てになるなら、それだけで満足だった。
「小嶋くん」
「…なに」
「…ううん。また、明日ね」
小嶋くんは私の方なんて見ない。
そのまま教室から出ていく。
「…」
1人になったとき、途端に虚しくなる。
風が吹いてるわけでもないのに、寒気がする。
「小嶋くん…」
唇に指を這わせる。
小嶋くんは、体は重ねてくれるけど、唇は重ねてくれない。
その事実が私に特別な女なんかじゃないことを突きつけてるみたいで、嫌気がさした。
(早く帰ろう…)
私は鞄を背負って教室をでた。