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私は隣の田中です  作者: 秋月 忍
小噺集
60/64

七草粥

新年、おめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

(外伝、光る海、後くらいかな?)

「わあ、七草粥ですか。さすがに防魔調査室!」

 私は、食堂で思わず声を上げた。

 長年、食品会社に勤めていて、社食もあったけれど、正月七日に七草粥が用意されていたことなんてなかった。

 防魔調査室の社員食堂は、数種類のメニューが選べる方式なのだが、今日は特別に七草粥がある、と張り紙されていて、なんとなく、テンションが上がる。

「一応、宮内庁直下だし、伝統食文化にうるさいんだよねー」

 既にメニューを選び、テーブルへ移動しようとしていた田野倉が、にやりと笑った。

 いつも伝統的な法衣を身にまとっている田野倉は、七草粥に、生姜焼きをプラスしている。

「田野倉さんは、生姜焼きですか」

 田野倉の食生活は、最初、本当に驚いた。もちろん、肉を食べてはいけないとは思わないけれど、田野倉は『法衣』のままで、焼き肉屋に入るツワモノである。法衣で焼肉は、絵面がワイルドすぎると思うのは、私の価値観が古いのかもしれない。

 というわけで、七草粥のサイドメニューが生姜焼きだということくらいは、驚くに値しないのである。

「マイちゃんは真面目に、七草粥だけなの?」

「一応、そのつもりです」

 一人暮らしが長いせいか、あまり『伝統』のごはんって食べないから、とってもワクワクする。

 七草粥を選んで、テーブルへ移動した。

 とうぜん、如月も同じかなと思いながら、先に座っていた如月を見ると、手にしているのは、カレーライスだった。

「如月さんは、カレーですか?」

 なんとなく、精進とか伝統食を食べそうなイメージだったから、驚く。

「正月過ぎると、カレーって食べたくならないか?」

「……なるかも、ですね」

 カレーライスも既に日本食かも。

「今晩はカレーを作ろうかな」

 ふと、呟く。

 平日にカレーを作るのはたいへんだけど、なんだか食べたくなってしまった。

「じゃあ、食べに行ってもいい?」

 如月が笑う。

「え? 今、食べているじゃないですか?」

「マイのカレーが食べたいんだ」

 それは嬉しいけれど、そんなにカレー好きだったけ? と、首を傾げながらおかゆをほおばる。

「ま。カレーより、食べたいものがあるんだけどね」

 耳元で、如月に囁かれ。

 新年早々、私は、喉を詰まらせそうになった。

 

 


時事ネタSS。みなさまにとっても素敵な一年になりますように。

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