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第九話

「かかって来いよ。潰してやるから」

俺がそう言うと、相手は苦虫を噛んだ様な顔をする。

「クソッ!!ふざけやがって!!たった1人に半数近くやられて残りは逃亡だとぉ〜!?」

流石に十数人いたのが自分一人になれば余裕も無くなるか。

…しかしその喋りは素なんだな。

「使えねえにも程があるだろぉ〜!!どいつもこいつも!!」

喚きながら頭を掻きむしる。が、諦めた様に溜め息を吐く。

「全くよぉ〜。そのせいで俺が直接戦うしかねえじゃねえかぁ〜!!」

顔に余裕が戻った。そんなに自分の能力に自信が在るのか。

「だぁ〜がぁ〜。その前にだぁ〜」

相手が俺を見てくる。

「気に入ったぜぇ〜。お前、俺の下につけよぉ〜。歓迎するぜぇ〜」

「アンタの下に、ねえ」

「良い思いさせてやるぜぇ〜。悪くねえだろぉ〜」

そう言ってカス(今決めた)は笑った。

馬鹿だろこいつ。俺がカスの下につく意味が無いからな、答え決まってるだろ。

「自分より弱い奴の下につく理由はない。だから却下」

俺はカスの方に手を向け、親指を立て、下に向ける。

カスの顔が見る見る赤く険しくなる。

「いい度胸じゃねえかぁ〜。だったらオメエ、潰してやるぜぇ〜!!」

言うと同時にカスの身体に変化がおきる。

身体がメキメキと音を立てながら、大きくなっていく。

服は裂け、大きくなりながら毛で覆われていく。

細かった腕は太く、毛深くなり、手も同じ様に太く、毛深くなり、鋭く爪が伸びていく。

脚も同じ変化をした。

顔はもはや人ではなく別の生き物の顔に変化している。

変化が終わってそこにいるのは2mを越える熊だ。

「‘獣化(じゅうか)’。自分のDNAの中にある人間とは別の遺伝子を覚醒させて、自身に上乗せする能力」

「ヒャハハァ〜!!その通りだぜぇ〜!!」

熊となったカスが笑いながら返事をする。

「確かにテメエはつええ、だがな。ちょっとした身体能力向上と武術経験だけでこの俺に勝てると思うなよぉ〜!!」

そう言いながらカスは武道館の壁の方に歩いていき、拳を壁に叩きつけた。


ドゴン!


壁がカスの拳型に凹む。

「見ろよぉ〜。異能者が使っても問題ねえ硬さを誇る武道館の壁を拳型に凹ませられるんだぜぇ〜!!」

カスが力を自慢している間に、服が裂けその時に落ちた手錠の鍵を拾っておく。

「あ、終わったか?」

カスがこちらを向いていたので自慢が終わったか確認する。

「こ、の、ガキィ〜!!」

ガキって、たった2年しか違いないだろ。

まあ、カスから見たら、俺が完全にカスを嘗めきってると思ってるんだろうが。

「別に武道館の壁凹ませるくらいで威張るなよ。そのぐらいA以上なら可能だぜ」

まぁ、‘あの人’なら指チョンで破壊するだろうがな。

「それに、熊なら六歳の時から戦ってるから何とも思わねえよ」

むしろその戦ってた熊の方が強そうだわ。…元気にしてるかなぁ。

「訳わかんねえ事言ってんじゃねえぞぉ〜!!」

俺がかつての強敵(熊)を思い出していると、カスが接近し、左腕を振り下ろしてきた。

俺はそれを回避する。

カスは逃がすまいと右腕を振ってくる。それを身を低くして回避し、カスの懐に入る。

「大振りだろ」


ドゴオ!!


カスの腹に掌底を打ち込み距離をとる。

「…きかねえぜぇ〜!!」

カスは苦しむ様子もなくピンピンしている。

思ったより毛が分厚いな。衝撃が通らなかったか。

「行くぜぇ〜!!」

カスが再び近付いて腕を振り下ろしてくる。

後ろに下がって避ける。

「おらおらおらおらぁ〜!!」

逃がすまいとカスが接近しながら連続で腕を振り下ろしてくる。

俺はそれを後退しながら避ける。

…このカス。掌底がきかなかったから遊んでるな。

「大和!!後ろ!!」

九条が気付いたのか声を挙げる。

分かってるよ、後ろに壁が迫ってるくらい。

「ヒャハハァ〜!!そろそろ終わりだぜぇ〜!!」

カスがそう言った瞬間、俺は後ろの壁目掛けて跳び、壁を蹴ってカスの顎に左膝をあてた。

「ぐがっ…!?」

そのままカスの後頭部を両手で掴み、右膝を顔面に叩き込んだ。


ドズゥゥゥン!!


カスが床に倒れる。

「さて、2人とも今から手錠外してやるよ」

俺は拾っておいた手錠の鍵を取り出す。

先に染宮かな。会話する為にも…

「…寝とけよ。今のは結構なダメージになってる筈だぜ」

振り返ればカスが立ち上がっている。

「こんな…こんな程度でこの俺がやられるかぁ〜!!」

威勢よく声を出すが、カスの体は僅かにふらついている。

さっき顎を攻撃した事で脳が揺さぶられているのだろう。

「Fランクごときがぁ〜!!」

それでもカスは声を挙げながら右腕を振り下ろしてくる。

俺はその腕を掴み、止めた。

「なっ!?」

カスが驚愕するが気にせず、そのままカスの体を片手で持ち上げる。

「バ、バカなぁ〜!?今の俺は200キロを優に超えているんだぞぉ〜!!それを片手で持ち上げるなんて…」

俺はそのまま後ろに振り返り、カスを床に叩き付けようとする。

「させるかぁ〜!!」

床に叩き付けられる前にカスが俺に左腕を伸ばし左手の爪で引き裂きにきた。

俺はカスを掴んでいた手を離し身体を僅かに捻り、爪を回避する。

しかし思っていたよりも爪が長く、胸を僅かに掠めた。

「大和!!」

(神裂さん!!)

2人が俺を心配そうに見る。

「大丈夫だ。服を掠めただけだ」

「ちぃ〜!!今のが決まってりゃ…!?」

カスが体制を立て直して俺を見て驚愕する。何だ?

染宮も驚きの表情をしている。いったい…

「や、大和…その左胸は…」

「あー……」

九条の言葉に気付き、俺はカスの腕が掠めた服を見る。

右脇腹から左胸までバッサリと切れている。

その結果、俺の左胸に赤黒い色をした特殊な文字が逆向きの五芒星を描く様に刻まれているのが丸見えである。

「コイツか。…コイツは…」

俺は一度深呼吸をし、口を開く。

「俺の身体にかけられてる、“呪”だよ」

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