第八話
グッダグダ。バトル苦手。早く日常(コメディ?)に戻したい。
「1年のFランクだあぁ〜!?なめちゃってんじゃねえぞぉ〜!!」
何だコイツ。アホか?馬鹿なのか?喋り方がおかしいだろ。ウケ狙いか?取り敢えず頭が切れるか確かめるか。
「別になめてねーよ。顔中ピアス先輩」
「オイオイオ〜イ!!テメエ人の見た目描写されてないからって無茶苦茶言ってんじゃねえぞぉ〜!!」
「じゃあアフロ先輩」
「誰がアフロだコラアァ〜!!」
「気にすんなよ。見た目描写の無いモブとそのオマケ達」
『誰が(モブ)オマケだ1年が!!』
「たかがFランク、異能なんざ必要ねえ!!」
「ぶちのめしてやる!!」
決まり、コイツら全員アホだ。
だって全員が俺目掛けて突っ込んで来たから。
…染宮の周りが減ったな。
シュン。
『消えた!?』
別に消えてねーよ。只隙間を抜けて行っただけだ。
「染宮から離れよーぜ」
「なっ!?」
「何時の間…」
ドスッ!!ドガッ!!
染宮の近くにいた2人にそれぞれ鳩尾に拳と顎に膝を決めた。
「寝てろ」
その場に倒れる2人。
「まず2人、っと。…残りはまだ十数人いるな」
俺が瞬時に染宮の元に行き、2人を倒した事で、警戒しだしたようで大人しくなった。
「はぁ、警戒するのは良いけどよ。動かなかったら…」
1人の懐に入り顎を殴り、倒す。
「ただの的だぜ」
「うおおおおぉぉぉ!!」
1人の大柄の男が突っ込んで来る。
「うらあぁ!!」
突っ込んだ勢いから拳を振ってきたので、俺はその拳を流しつつ、腕を掴み足を払い、一本背負いを決める。
ドゴオォォン!!
「かっ…!?」
ズズウゥゥン!
男は気絶した。
しかしこれは何とも…呆れるな。
「おいおいお前らさぁ。何考えてるか知らねえが、異能者だったら異能使えよ。でねえと…このままサクッと終わらせるぞ」
少し威圧を込めて声を出すと、連中は怯んだのか、僅かに後ずさる。
「ビビッてんじゃねえぞぉ〜!!相手はFランク、少し武術をやってるだけに決まってらぁ〜!!異能を使えば簡単に倒せる筈だぁ〜!!」
リーダーっぽい奴が指示を出す。
顔にまだ余裕が有るな。勝てると思ってるって事か。
「そ、そうだ!異能を使えばあんな奴!!」
「近付かなきゃ問題ねえ!!」
リーダーっぽい奴の言葉に周りの奴等が同調していき、全員が異能を使い始める。
これで少しは楽しめるかな?
「くらえ!!」
1人が火球を放つ。
俺はそれを横に動いて回避する。
「ソコだ!!」
避けた方向の地面が尖り、俺に向かって伸びてくる。
その攻撃を飛んで避ける。
「これなら!!」
2人の男がそれぞれ電撃と風の刃を放ってくる。
「ジャンプした状態じゃ避けらんねえだろ!!」
攻撃をくらって落ちた処を狙おうと1人が接近している。
俺は空中で身を捻って電撃と風を回避し、接近していた奴の頭に肘を落とす。
「がふっ…」
肘をくらい倒れ始めた奴を素早く踏み台にして、地面を操作していると思われる、地面に手を置いている奴目掛けて跳ぶ。
「なっ!?」
俺の接近に驚いたそいつは、直ぐ様自分を覆う様に地面を操作し、土のドームを形成する。
「小賢しい!!」
俺は土のドームを気にせず踵落としをする。
ドゴオォォォン!ガラガラガラ…!
ドームを破壊し、中の奴に踵落としをあてる。
ドームを破壊した事で発生した土煙を突き破って火球が飛んできた。
避けたら後ろにいる…お。
「おー、起きたか染宮」
後方を確認すると目を覚ました染宮が周囲を見渡していた。
(かん、ざき、さん?あれ?ここは…)
「状況が解らないと思うがまあ、そこで大人しく待っといてくれ」
(えーと、神裂さん。一体何の!?神裂さん!!前、前!!火の珠が接近してます!!)
染宮が何かに気付いた様に動けない状態で慌てだす。
「どうした?何か問題発生か?悪いけど染宮。今お前腕につけられてる手錠のせいでテレパス送れなくなってるから、何かを伝え様としてくれても俺には解らん」
(そんな…神裂さん!!お願いですから前向いて下さいー!!)
「まあさっきも言ったが待っといてくれ。直ぐに手錠外してやるから」
そう言って前を向くと、火球がかなり近付いてきていた。あ、忘れてた。
もしかして染宮この事伝え様としてたのか。そりゃ悪い事をした。不安を解消してやろう。
「邪魔」
飛んできた火球を腕を振って掻き消した。
ちょっとだけ熱かった、かな。
「な、何なんだよ。アイツFランクなんだろ!?」
「火球消すとか化物じゃねーか!!」
「ふざけんじゃねえ!!あんなの勝てるかよ!!」
「逃げろ!」
俺が火球を消した事で、奴らはビビって逃げ始める。
つーか、化物とか失礼だな。
なあ染宮。
染宮の方を見ると、口を小さく開けて、ポカン、としていた。
い、いやいやいや。そんな筈はない。
…九条はきっと普通の顔してこっちを見ている筈!
九条の方を見れば、九条も同じ様に口を小さく開けて、ポカン、としていた。
ヤバイ、つらい。
「おい!!お前ら!!」
気付けば残ったのはリーダーらしき奴だけ…いや、まだいるな。
俺はその場から左に移動する。
ガイイィィィン!
すると俺がいた場所の床から鉄を叩き付けた様な音がした。
「何!?今のは!?」
「なっ!?」
「何!?」
その音の後にに九条とリーダーらしき奴と後1人誰かの声が聞こえた。
染宮は喋れないからな。つまり…
「‘透明化’または‘擬態’。まあ何にしろ姿を見えなくする能力か。東が電話で『誰もいないのに背後から頭をやられた。気をつけろ』って言ってたからな。いると思ってたぜ」
「くっ!!」
姿は見えないが、相手の声は聞こえてくる。
さっきの音からして鉄パイプでも持ってるな。
「だが!!たとえいるのが分かっていても、見えなければ意味はないだろ!!」
「大和!!じっとしてたら的よ!!相手が見えない以上動かないと!!」
九条が動くよう言ってくるが、俺は動かず目を閉じた。
俺は‘あの人’みたいに常に相手の気配を読めるわけじゃないからな。集中集中。
俺を除いて気配が動いてないのが3、気配が動いてるのが1、と。て、なんだ。「俺の背後か」
俺は振り返り、気配を探知した場所に手を伸ばし掴む。
「なっ!?」
「ビンゴ」
俺は姿が見えない奴の腕を掴んだ
「これで逃げられないな。お前には普通に一発と東殴った分さらに一発あてる」
掴んでいる腕を引き寄せ、脇腹が在る位置に肘を打ち込む。
「ぐふっ!!」
あてた感触がし、相手の姿が見えてくる。痛みでコントロールが乱れたか。
掴まれてない腕で脇腹を抑えて苦しそうにしているので…
「お休み」
顎に掌底をきめ、気絶させた。
「んじゃ、ラスト。お前」
俺はコイツらのリーダーの方を向き…
「かかって来いよ。潰してやるから」
そう言って、小さく笑った。