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第六話


ピピピピピピピピ!!


「…ん…」


ピピピピピ、ピッ!!


「…朝、か…」

学園に用意されている一年男子寮の自分の部屋で、目覚ましの音で目が覚めた。昨日は寮に帰って、何もせず寝たんだったな。

「……昨日は…やっちまったな…」

昨日のやりとりは今も頭の中で繰り返されている。

当分このままだな。

「…アレで良かったんだ。俺に関わらない方が、九条の為だ」

そう、アレで良い筈なんだ。…なのに、何で胸の中のモヤモヤは消えない。

「…学校行ける状態じゃないな。休むか…」

俺は携帯を持ち、東にメールを送った。




『ダルい、休む』

朝、出発の前に大和からそうメールが来た。

まだ一ヶ月だけだが、一緒に行動していたから分かる。大和はダルい程度じゃ休まない。…まぁ、気分で休もうとはするけど。今回は、違う。

やはり昨日俺と染宮さんと別れて、九条さんについていって何かあったのだろう。

一体何があったのかは分からないが、今はゆっくりさせて落ち着くのを待った方が良いのは間違いない。

そう考えた俺は大和に了解の返事を返し、学校に向かった。




『あの、藤堂、さん』

「え?」

俺の頭にテレパスが送られる。えっと、テレパスってことは…

前方にそれらしき人影が見当たらない事から後ろを振り返れば、昨日知り合った染宮さんがいた。

「あ、おはよう。染宮さん」

『お、おはよう、ございます』

う〜む、流石に昨日今日じゃ仲良くはなれないか。染宮さん人見知りっぽいからな。今も結構よそよそしいし。

『あの、神裂さんは?』

「大和は今日は体調不良で休むんだって」

『そう、ですか。…体調不良、なんですよね?』

…鋭いな、染宮さん。

「…多分…いや、間違いなく昨日あの後何かあって、それが理由だと思う」

嘘をついても意味はないからな。

『神裂さん。大丈夫何でしょうか?』

「さあね、俺にもそれは分からないよ。…それに、今はもう一人精神が不安定な人がいるみたいだから」

『え?もう一人?』

俺は染宮さんの後方からやって来る人を見詰める。

染宮さんも俺が誰を見ているのか確認する為に後ろを見る。

そこにいるのは何時もは明るい雰囲気で堂々と歩いているのに、今はそんな雰囲気を微塵も感じさせず俯いて歩いている。

昨日大和と一緒に何処かに行き、大和が今日学校に来ない一番大きな理由に最も関わっている人。

九条彩音が歩いている。

大和だけじゃなく、九条さんまでとは…時間で解決は、出来そうにないな。あれは。

俺は歩いて来ている九条さんに声をかける。

「おはよう、九条さん」

「っ!?え、ええ。おはよう。…確か、3組の藤堂くん、だったわね」

「ああ、そうだよ。…ちょっといいかな?」

「…何?」

出来れば聞きたくないけど、俺の予想じゃ、放っておいたら大和も九条さんも、もっと酷くなる。

だからそうなる前に、2人の事を知らなきゃいけない。知ったから何が出来るかなんて分からないけど聞かなきゃいけない。

「あのさ、九条さ『あ〜や〜ねちゃ〜〜ん』!?」

俺の声に被せる様に発せられた声と同時に前から複数の男子達が近付いてきた。

その中の一人が前に出て来る。制服の胸元に有る学年を示すバッジには[Ⅲ]の文字が、三年が何のようだ?

「久しぶりだなあ〜、彩音ちゃ〜ん」

「えっと九条さん。知り合い?」

三年が九条さんに話かけたので、俺は九条さんに彼が誰かを尋ねたが…

「え?貴方の知り合いじゃないの藤堂くん」

まさかの返答だった。

「いやいや。どう考えても名前で呼んできてるから九条さんの知り合いなんじゃ…」

「ごめんなさい。私、馬鹿っぽい人とどうでもいい人は覚えない主義なの」

相手の目の前で言います!?それ!!

絶対怒ってるって、この先輩。チラリと見てみると…

「カフッ!!ゴフッ!!」

あまりのショックに吐血していた。

一緒にいる男子達も可哀想な目で見てるし。

何か一気に場の雰囲気が変わったな。

「…藤堂くん、隙を見て逃げなさい」

「九条さん?」

急に九条さんが小声で言ってきた事に俺は驚いた。

「あの先輩はBランクよ」

「なっ!?」

「入学式の時に絡んできたのを倒したんだけど、結構しぶといのよ」

「なら人数がいるんだし一人より二人の方が…」

「私の異能は範囲が広いわ。一対多は兎も角、味方がいると巻き込むわ」

そうか。つまりここいたら足手まといになるだけなのか。…悔しいがここは九条さんに任せて俺と染宮さんは…あれ?染宮さんはどうした?さっきから一度もテレパスが着てないぞ!?

「はあ、はあ、やるじゃねえか彩音ちゃん。だが今日は戦わず平和的にいこうじゃねえか」

そう言って男子達をチラリと見ると、男子達の中から一人が女子を肩に担ぎながら、あれは!?

「染宮さん!?」

染宮さんが担がれていた。気絶しているのか反応がない。

「さっき藤堂くんと一緒にいた子!…何のつもり!!」

九条さんの周囲が少しづつ熱くなっていく。感情が昂って異能が発動仕掛けているのだろう。

「おいおい彩音ちゃ〜ん。平和的にいこうって言ったじゃねえかよ〜。落ち着こうぜ〜」

何が平和的だ。こんなのはただの…

「人質を取っておいてよく『平和的』何て言えるわね」

人質を使った脅しだ。

「安心しろって、彩音ちゃんが大人しく俺達についてくるなら、この子には何もせず帰してやるから」

「…本当ね?」

間違いなく、口先だけだと俺も九条さんも分かっているが、ここは従うしかない。

「じゃあ行こうぜ彩音ちゃ〜ん。…お前はそこで大人しく寝てろ」


ゴッ!!


「がっ…!?」

突然背後から固い物で後頭部を殴られ、意識が薄れる。何、だ!?

「藤堂くん!?」

「心配ね〜よ。気ぃ失ってもらうだけだからよ。そいじゃ、行こうぜ〜」

三年と男子達は染宮さんと九条さんを連れて、歩いていく。

ち…く…しょう…。はや、…や…とに…し…ら…せ…

俺の意識は途切れた。

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