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第四話

「…で?何で木の上なんかにいたんだ?」

降ってくる女子を見事キャッチした俺は、女子をその場に座らせ事情を確認している。

『実は、木の下に鳥の雛がいて、巣に戻してあげようと木に登って…』

「雛を巣に戻す事は出来たが、自分が木から下りれなくなった、と」

『…はい』

「はぁ。まあ木の上にいた理由はわかった。だが俺にはもう1つ謎がある」

『何ですか?』

こいつ、解ってないのか。

「お前が降ってきた理由だ」

上見上げたらもう降ってたからな。

『そ、それは…早く木の上から下りたくて、それに神裂さんならちゃんと受け止めてくれると思ったんです!!』

その自信は何処から来るんだ?

おっと、そういえば今俺が話しているのが誰か言ってなかったな。

彼女は[染宮志穂(そめみや しほ)]。

身長は150後半、髪は黒の肩まで届くツインテール。顔は、童顔とゆうのだろうか、幼い感じだ。体は、見た感じスレンダーだ。…察してくれ。因みに、ランクはE。

「本当、染宮は何かある度に俺にテレパスを送るな」

別に昔からの知り合いでもないのに。

『そ、それは…神裂さん以外に頼れる人がまだいませんから』

俺以外にまだいない、か…。

染宮は喋る事が出来ない。

理由は詳しくは知らないが子供の頃に何か在ったらしい。だから染宮はテレパスで相手とやりとりをしている。

その上で人見知りだからな…。

「俺が同じクラスだったら、お前をボッチにはしなかったのに…」

俺は、何て無力なんだ。

『お友達はちゃんといます!!』

「なん、だと!?」

そんな馬鹿な!?

『何なんですか!?その衝撃の事実を知ったみたいな顔は!!』

いやだって。

「お前さっき俺しか頼れる人がいないって…」

『それは今日みたいな時に頼れるのがまだ神裂さんしかいないってだけですよ!!』

成る程な、つまり…

「友達に面倒をかけたくないから、友達でもない俺に面倒をかけると!?」

染宮志穂、恐ろしい子!!

『違います!!神裂さんは大事な友達ですよ!!…だってこの学園に来て初めて出来た友達なんですから!!』

「わかった、悪かったからテレパスの出力を抑えてくれ。頭に響く」

俺は左手で軽く頭を押さえながら、染宮との出会いを思い出す。

そう、あれは入学して直ぐだった。…筈だ。




その日、俺は何時ものように登校していたんだ。

「はあ…ダルい、眠い。昨日徹夜でゲームするんじゃなかった」

昨日発売のゲームを買ってやり始めたら、止められない、止まらない〜。の状態になってしまった。

『…けて…』

「ん?」

今何か聞こえたような。

周りを見渡すが、特に何もない。

「気のせいか。…よし、今日はもう帰ろう!!そして寝よう!!」

『誰か、助けて…』

また聞こえた。けど周りを歩く他の人達には聞こえていないようだ。

「テレパス。しかも内容からして周囲に無差別か?」

だが、どうやら聞こえているのは俺だけのようだ。

『誰か、助けて下さい!!体育館裏です!!』


「…仕方ない、聞こえちまった以上、無視するわけにはいかないよな」

体育館はアッチだな。




「うわ…」

体育館裏に行くと、一人の女子に対して数人の男子が囲う様にしていた。

「どう見ても、これからあの男子達が女子に何かしようとしてるんだよな」

人数は…4、いや5か。

俺は男子達に向かって歩き出す。

「おーっす、お前ら、おはようさん」

急に声をかけられたのと、それが知らない奴からの挨拶なので、男子達はその場で呆けている。

俺は気にせず近付く。

「いやー、参った参った。昨日発売したあのゲーム。やり始めたら止まらなくて気付いたら朝だったわ」

男子達に近付き、一番近くの奴の肩に手を置く。

「え?あ、ああ。そうか」

肩に手を置かれた奴は戸惑いながらも返事を返す。

俺はその男子の鳩尾に拳を打ち込んだ。

「かっ…!?」

鳩尾を殴られた男子はその場に倒れ、気を失った。

「は?な、お前!!なにす…」

驚いた男子達が行動をおこす前に近くの奴に回し蹴りを当て、気絶させる。

残り3人!!

「お前!!いきなり何しやがる!!」

3人の内1人が何か言って近付いてくるが、返事をせずに足を払う。

「うえ!?」

急に足を払われバランスを崩し、がら空きになった腹に拳を叩き込む。

「がはっ…」

後ふた…あれ?

俺は辺りを見渡すが、残りの2人がいない。

「逃げた?」

面倒だな。顔覚えられてなかったらいいんだが。

「っと、そういや」

俺は男子達に囲まれていた女子の方を見る。

するとその女子は俺に何かされると考えたのか、震えだした。

「あ〜。安心しろ。お前のテレパスが聞こえたから来ただけだ」

そう言うと女子は驚いたような顔をした。

『…テレパス…届いたんですか?』

「ああ。だから来たんだよ」

『そ、そうなんですか。あ、えと、た、助けてくれて、有り難う御座います!!』

女子は俺に対して頭を下げる。

…何でテレパス使い続けてるんだ?

『…あの、私、1-1の染宮志穂って言います。…名前を、聞いてもいいですか?』

「ん、ああ。俺は1-3の神裂大和だ」

『神裂さん、ですか。このお礼はちゃんとさせてもらいます!!』

「いや別にいい『あー、ちょっといいかな?』は?」

俺と染宮が声がした方を向けば…

「風紀委員の者なんだが、少し話を聞いてもいいかな?」

風紀委員がいた。

その後俺と染宮は風紀委員に事情を聞かれた。




「…こんな感じだったな。俺と染宮の出会い」

『そうですね。それから何度か神裂さんに助けてもらって、私にとって神裂さんは‘ヒーロー’みたいなものなんです!!』

ひー、ろー…。


−ヒーローみたいに私を守ってくれる?−

−守るよ!!僕が○○ちゃんのヒーローになってあげる!!−


「うぐっ!?」

頭が、痛い!!記憶が!!“あの時”の記憶が!!頭の中で再生される!!

「っ!!違う!!俺は、俺は!!ヒーローなんかじゃ、ない!」

俺みたいな奴が!

『かん、ざき…さん?』

「!!悪い、染宮。何でもない…そろそろ昼休憩が終わる。お互い教室に戻ろうぜ」

そう言うと俺は歩き出した。

『あ…はい…』

染宮も歩き出す。


その日、残りの授業中、俺はずっと上の空の状態だった。

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