第三話
この学園には、学食と売店の両方がある。
昼飯何するか迷う時あるわ〜。
しかし今日は…。
「何で…」
「ん?」
「何で自分の昼代が500円で済んでるのに、友達の昼代に1000円も掛かるんだよー!?」
東が自分の昼である和食セットAを食べながら嘆いている。俺はカツ丼をがっついてる。いや美味いね誰かの奢りは。
「そんなことも在るさ」
「無いからな!!普通は!!」
ちっ!!ウダウダと煩い奴だ。自分から昼を奢りたいと言ってきたくせに。
「まあ落ち着け東。この借りはちゃんと返してやるから」
「あ、いや別にそんなつもりで言ったわけじゃないんだが…」
「全世界にアフロブームがやってきたら」
「返す気無いだろ!!」
何だと!?
「何故言い切れる!!」
「アフロとかもう絶滅危惧種じゃないか!!」
「わかんねーだろ!!もしかしたら明日突然アフロブームがやって来るかもしれないだろ?」
「絶対ない。全くお前は」
「気にすんな。俺とお前の仲じゃないか」
「いやいや、仲って言うけど、俺達まだ1ヶ月しか付き合いないからな?」
「そうか、お前と出会って1ヶ月。つまり入学して1ヶ月か…」
東との出会いは学園に入学して直ぐだ。
入学式が終わり、教室に行ってそこに在った座席表を見て、[藤堂東]をわざと[藤堂東]と呼んでやったんだ。
それが始まり。
「今考えれば、何で俺お前を[東]と呼んだんだろうな?」
「そんなの俺に解るわけないだろ」
フーム、謎だ。…ま、別に良いだろう。今はデザートだ。
「…大和、お前カツ丼定食食べてその上でパフェまで食うとか」
「心配すんな。普通に食える」
俺は目の前にそびえ立つ巨大パフェを食べ始める。
「くう〜!!甘いものはやはり最高だな!!」
「そりゃよかったな」
やはり学園を卒業したら金を貯めて全国甘いもの巡りをしなくては!!
『助けて〜!!』
「………」
突然頭に響く声。しかし気付いているのは俺だけ。現に東はのんびりとお茶を飲んでいる。
『助けて下さい〜!!裏庭です〜!!』
「………」
『神裂さーん!!』
はあ、仕方ない。行くか。
「どうした?パフェ食べきれないのか?」
「なわけあるか。非常に不服だが、残りはやる。」
俺は立ち上がり移動する。
「え!?は!?ちょ、おい!!いや無理だって!!食いきれねーよ!!」
学園の裏庭。昼の時間もそろそろ終わる頃だからか、人の数は少ない。
そんな場所に来た理由は…
「…この辺か」
俺は周囲を見渡す。
「来たぞー!!」
『ここですー!!』
大きな声を出すと返事が返ってきた。近いな、けど…。
「ここって…‘テレパス’じゃ場所まではわかんねーぞ!!」
テレパス…テレパシー。
つまり相手に自分の考えを口に出さずに伝える力。ヤッホー!!携帯要らずだー!!
何て事にはならない。これはこれで素質がいるからな。
発信者はテレパスを送る相手をイメージして、メッセージを飛ばす。
熟練者はイメージしなくても送れるそうだ。
『えっと、木の上です』
「木って、どの木だよ!!」
周囲にいくらでも木々が立ち並んでいるんだが。
『裏庭の真ん中にある一番大きい木です』
「ああ、そこか」
俺は裏庭の真ん中にある一番大きな木の真下に立って上を見上げ…
『見上げないで下さいよ!!』
ようとしたが、ストップがかかったので止めた。
「見上げなかったらお前が何処にいるかちゃんと解らないんだが」
『大丈夫です。神裂さんの真上にいますから』
「ああ、そーかそーか、って真上!?」
その言葉に俺は驚いて上を見上げる。
そこに見えたのは…
降ってくる女子だった。