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初めまして雀です。〜転生者特典で雀になった俺、小動物だからって舐めんなよ!〜

作者: 道端ノ雀
掲載日:2025/10/08

「ちゅん! ちゅちゅん!」


ふわふわな羽毛に包まれた丸っこいフォルムに、くりっとしたつぶらな瞳。


、、、はぁ。

俺、可愛すぎだろ!!


ーーーーー


えーと、、、俺、死にました。


冒頭一発目から何言ってんだって思うだろうけど、事実なんだよな。


しかも交通事故で。


急にでかいトラックが突っ込んでくるとか、こんなご都合展開が現実で起きるとはな。


はぁ、、、。


「やあ、はじめまして」


「、、え? あ、はい。はじめまして?」


背後から急に声をかけられ、慌てて振り返る。

そこに立っていたのは、金髪の男。絵画のように恐ろしく整った顔立ち。そして、何やら背中から後光が差してる、、、。


「え、えーと、、、どちらさまですか?」


「僕かい? 神だよ」


あっさりそう告げられた。


神? 神か?、、、、ちょっと待てよ、ということはまさか、、、。


「もしかして、、、俺を異世界転生させてくれるとか?」


「うん、そうだよ。理解が早くて助かるね。

君は、僕のちょっとしたうっかりミスで死んじゃったんだ。そのお詫びに、転生させてあげようと思ってね。これはお詫びだから、望みがあるなら、できる限り叶えてあげるよ。最強の力とか、王様になりたいとかなんでもいいよ?」


なるほど。やっぱりそういう流れか。お約束だな。

なら、俺の答えは決まってる。


俺の望みは――


「雀になりたいです!!」


「、、、え? 雀?」


神様、「こいつ何言ってんだ」って顔に書いてありますよ。


「はい! 雀になりたいです!」


俺は力強く言い放った。これだけは譲れない。誰が何と言おうと!


「、、、わ、わかった。君を雀に転生させるけど、後悔しても知らないからね?」


後悔なんてするもんか。これが俺の夢だったんだ!

体が光に包まれる。温かく、どこか懐かしい。俺はその光に身を任せ、そっと目を閉じた。


ーーーーー

、、、どれくらい経っただろう。


草木の揺れる音、水の流れる音が聞こえる。

転生完了か? 思ったよりあっさりしてるな。

この音からして、森スタートかな?


恐る恐る目を開ける。


そこには、見渡す限りの草木と、太陽光を反射してきらきら光る川。どれもやたらと大きい。


俺は川へ向かった。自分の姿を確かめるために。


水面に映ったのは、もちろん雀。

ふわふわの茶色い羽毛に、ぽってりと白い胸元。

黒くつぶらな瞳はビー玉みたいに輝いていている。


(か、かわいい!)「チュ、チュン!」


確かにそう言ったつもりなのに、出てきたのは愛らしい鳴き声だった。


ああ、なんでこんなに可愛いんだ俺!!


もう気づいてるだろうが、俺は雀が大好きなのだ。


このまん丸なフォルム、ちゅんちゅん鳴きながらちょこちょこ動く姿。

この世にこれ以上可愛い生き物がいるか? いや、いない!!


大満足だ、神様ありがとう!!!


というわけで、俺のニューライフは華々しく幕を開けた。


さて、まずは人がいる町を目指そう。


翼をばさりと広げる。

もちろん人間だった俺は飛んだことなんてないが、ご都合展開というやつだ。

体が自然と翼の使い方を覚えていて、難なく飛べた。


森がどんどん小さくなっていく。

これが飛ぶって感覚か。

全身で風を切る心地よさ、爽快感がたまらない。

俺は人生初の空の旅を満喫した。


しばらく空の旅を楽しんでいると、街が見えてきた。


(お、ラッキー)「チ、チュン!」


街へ降り立ち、人々に目を向ける。

人間、耳の長いエルフ、全身毛皮の獣人――まさしく異世界ファンタジー。


俺が雀になりたかったもう一つの理由。

それはこれだ。

勇者とか魔王とか、そういうのはごめんだ。

俺はモブにすらならず、勇者たちの冒険を陰から眺めていたい。例えるとするなら俺は最前線でリアルアニメを鑑賞したいのだ!


そんなわけで、俺は街から聞こえる声に耳を傾けた。


(何か面白いこと起きてないかな。)

「ちゅ、ちゅんちゅん!」


「母さん、今日のご飯なあに?」


「嬢ちゃん!やすくしとくぞ!」


「おい、聞いたか?最近薬物が出回ってるとか、、、」


「おい!お前ら飲みにいくぞ!」


多種多様な声が聞こえてくる。異世界と言っても会話内容は現代とあんまり変わらないな。


その中から俺は一際目立つ集団を見つけた


「あれが、S級冒険者か、、!」

「かっけぇ!!」

「俺もいつかああなりたいな!」


金髪の剣士、黒髪の魔法使い、茶髪の戦士、青髪の神官。

S級冒険者か、、、。

いかにも主人公っぽい。

よし、あいつらを観察しよう。


ーーーーー


俺は冒険者パーティを追うことにした。

ちょうど街の外へ出るところらしい。


依頼かな?


俺は空からこっそり見守る。さて、どんな冒険が始まるのか。


ーーその時だった。


最後尾を歩く神官めがけて、茂みの中から魔物が突進してきた。

だが、勇者パーティは動かない。


まさか気づいてない!?


(まずい!逃げろ!)「チュ、チュチュ!!」


俺は急降下して、必死に羽をばたつかせる。


「きゃっ!? なんですの?」

「なんだこいつ?」


必死に危険をアピールするが、、、伝わらない。所詮は雀の声。


もたもたしていると、魔物が茂みから飛び出してきた。


、、、って、あれ?


あっという間に全滅した。

さすがS級。十数匹いた魔物達を瞬殺してしまった。


「終わったな」

「ええ」


戦いが終わると、冒険者たちの視線が一斉に俺へ向く。

そうだろう? こんな可愛い雀が危険を知らせたんだから、感謝させるに違いない。


と思ったその瞬間ーー。


「で、結局なんなんだこいつ。」

「薄汚いし、獣くさいわ」

「弱いくせに襲おうとしたんじゃね?」

「小動物のくせに調子乗ってんな」


、、、は? なんだその言い草。


「チュ! チュチュチュッ!!」


俺は必死に抗議したが、逆効果だった。


「ちっ、鬱陶しいんだよ!」


ドゴッ。


全身に強い衝撃がはしり、体が宙を舞う。

痛い。全身ズキズキする。

こいつ、蹴りやがった、、、!?


「ちゅ、、ちゅ、、、。」


声も出ない。体もうまく動かない。

視界がぼやけて、意識が遠のいていく。

俺、また死ぬのか?

せっかく転生したの、、、。


ーーーーー


あれから、二ヶ月。


「ちゅん! ちゅんちゅん!」


俺は今、パンくずをついばんでいる。

パンって美味いな。ふわふわしてて、ほんのり甘い。

俺、人間の時は米派だったけど、今は完全にパン派だ。


あ、そんな話が聞きたいんじゃないって?


俺は、あのあと狩人に助けられたのだ。

傷ついた俺を見つけて、すぐに家へ連れ帰り、手当てしてくれた。


今はその狩人と、その母親らしきお婆さんと一緒に暮らしている。


「美味しいかい?」


お婆さんが優しく微笑み、パンくずを差し出してくれる。

その皺だらけの顔が、とても優しい。

おかげで俺はすっかり元気になり、また飛べるようになった。


ばあちゃん、絶対に恩返しするからな!


ーーーーー


「婆さん! 大変だ!」


家の扉を勢いよくを開き、慌てた声で男が入ってきた。


「婆さんの息子が治療院に運ばれたらしい! 毒草に触れちまったみたいで、重体だって!!」


お婆さんは血相を変え、治療院へ向かった。

雀の俺には何もできないが、受けた恩を少しでも返したい。俺はコッソリその後をついていった。


あの優しいお婆さんの息子は、額に大粒の汗を浮かべ、高熱にうなされていた。


彼が触れた毒は強力で、触れれば2日で命を落とすと言う。


そんな、、、今朝まで元気だったのに。


しかもこの毒は希少なもので、この街には解毒薬がないらしい。

唯一の方法は、山を越えた先の谷に生える特殊な薬草を手に入れること。

その薬草ならこの毒を中和できるらしい。


だが問題があった。


そこに至るまでには、魔獣が出没する危険な山を越えねばならない。たった2日で薬草をとって帰ってくるなど不可能だった。


、、、だが、S級冒険者なら、あるいは――。


案の定、お婆さんはS級冒険者たちに助けを求めに行った。


だが、返ってきた答えは、、、。


「は? そんな依頼受けるわけないだろ」


やっぱりこうなるか、、、。

薄々そんな気はしていた。 


「なんで俺らが、こんなババアのために命かけなきゃいけないんだよ」


「どうせ金だってないんだろ?」


必死に懇願するお婆さんを、嘲笑うように見下すS級冒険者たち。


、、俺は腹の底がぐらぐら煮えたぎった。


可愛い雀の俺を蹴飛ばしただけじゃ飽き足らず、今度はお婆さんにまでこんな仕打ちをするなんて。

こいつら、絶対後悔させてやる。雀の恨みは怖いんだからな!!


S級冒険者の協力は見込めない。


それなら、、、俺が行ってやる。

俺は空を飛べるのだ。


森へ急いだ。

もちろん空を飛ぶ魔物もいるから、楽勝とはいかない。

だが俺はただの鳥ではない、人間の知恵がある。


鳥頭の魔物なんかに負けるもんか!


目的地へ一直線に飛ぶ。

途中、飛行型の魔物と遭遇したが、木々の間に隠れたりしてなんとかやり過ごした。


そして、谷についた。

意外にも薬草はすぐ見つかった。


(お、ラッキー)「ちゅちゅん!」


俺は小さな嘴で薬草を摘み、街へ戻った。

お婆さんの家に戻ると、お婆さんは息子の手を握って泣いていた。


「ごめんね、、、私に力がないばっかりに、、。」


お婆さんは何も悪くない。謝ることなんてないんだ。

大丈夫だ! 俺が薬草を持ってきたぞ!


コツコツ!


窓を嘴で叩く。

だが音が小さく、なかなか気づいてもらえない。

今だけはこの身体がもどかしく感じる。


何度も繰り返して、ようやくお婆さんが気づいた。


「なんの音だい?」


俺はお婆さんが窓へ近づくのを確認し、すっと飛び立った。


これで、きっと大丈夫だろう。


そして俺は、ある場所へ向かった。


俺はあの冒険者どもを成敗する!

雀の怒りを思い知れ!


実は俺、S級冒険者たちの弱みを握っている。


偶然知ってしまったのだ。

彼らは違法薬物の売買をしている。


その証拠を突きつけてやればいくらS級と言っても一生牢獄行きは免れないだろう。この世界では薬物の売買はそれほど重い罪なのだ。


でも、雀の俺にどうやってって?


こうやってさーーー。


俺はS級冒険者たちが集まる場所で待ち伏せした。


お、来たな。


毎週この時間になると、奴らは必ずここで薬物の取引を行う。

やはり今日もS級冒険者たちが現れた。その後、取引相手の黒いフードの男が現れた。

両者こそこそと何かを話しているが、俺の位置からでは内容までは聞こえない。


だが問題ない。


大事なのは会話ではなく、“決定的な証拠”なのだ。


そう、今みたいに――


黒マントが金を受け取り、小さな袋を冒険者に手渡す。その時だった――。


「そこまでだ!!」


あたりに力強い怒声が響く。

現れたのは、筋骨隆々の逞しいおじさん。この街の冒険者ギルドのギルドマスターだ。


これが俺の作戦だ。


俺はお婆さんの家から紙とインクを拝借し、嘴にインクをつけて手紙を書いた。


「今夜 ヤクマル通り 薬物 取引あり」


雀だからって舐めるなよ。

あれから二ヶ月間、俺は情報収集に加え文字を習得した。

嘴で書いたため、ガタガタなのだが、読める程度には上達した。


まあ、でも正直、そんなイタズラめいた手紙でギルドマスター本人が動くとは思えず、賭けではあったのだが、俺はその賭けに勝ったのだ。


S級冒険者といえど、ギルドマスターという圧倒的権力には逆らえない。

あれよあれよとS級冒険者たちは捕らえられていった。


うむ、悪を成敗、完了だ!!


俺は満足して、胸を張って空へ飛び立った。


そして今日も、俺は平和な雀ライフを楽しむのだった――。


(さ!ばあちゃんの家でパンくずでも貰いに行くか!)

「ちゅ!ちゅちゅん!」 

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

初めまして、道端ノ雀と申します。


今回の作品は、自己紹介も兼ねて書かせていただきました。

「もっとたくさんの人に読んでほしい!」という思いで、できるだけ短く、読みやすく仕上げたつもりです。

少し展開が早すぎたかもしれませんが、、、

楽しんでいただけたなら嬉しいです!


もしこの作品を「面白い」と思っていただけたなら、

他の作品も覗いてみてくださると励みになります。イチオシは

呪いと勇者 〜勇者を押し付けられたやさぐれ魔女。気づいた時には胃袋を掴まれてました。〜


まだまだ三作目で、手探り状態ではありますが、これからも一歩ずつ成長していけるよう頑張ります!


アドバイスや感想など、コメント欄で教えていただけたら、すっごく嬉しいです!


そして、2025年10月15日から、初の連載作品をスタートする予定です!

そちらもぜひ読みに来てください!

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