24.俺はマヒロの愚痴を聞かされているのかもしれない
「上官の名前はリズっていって、鬼のような形相をしているんだ」
マヒロは何か怖いものを思い出しているかのように顔を青くさせながら言った。
「リズ上官はなー、それはそれはほんとーに鬼畜で、私たち鬼の訓練を担当しているんだが、裏ではな、リズ上官のことを非情のリズって呼んでるんだ。本当に鬼の心がないからな、リズ上官は」
その後もリズ上官の怖かった話を続けているとマヒロの隣で鬼に情はあっていいものなのかな、、と考えてしまった。
「リズ上官は、課題をしてこなかったら、夜中まで私たちを残して無理やり課題をさせようとするんだぞ、そのときの顔はもう思い出したくもないほど怖くて」
それは普通のことだと思うのは俺だけなのだろうか。考えれば考えるほどよくわからない。あまり深くは考えないようにしよう、そう心に決めた次の瞬間、ビュンという音がなり、マヒロの体が俺の目の前から消えていた。
「え」
マヒロの声が聞こえた1秒後にはマヒロは壁にぶつかっていた。
「マヒロォォ??よく言ってくれたなぁ?」
金棒を担いだ女がマヒロに向かって、地を這うようなくらい低い声でそう言った。何があったんだ。ショートしかけた頭でマヒロに向かって大丈夫かと声を掛けようかとしたそのとき、俺はその女と目が合った。
「お前が椿か?」
この女はただ、無防備なマヒロに一撃を喰らわせただけだ。だけど、その一撃を見るだけで、素人でもわかる。この女は強い。さっきの鬼なんて比べ物にならないくらい強い。ああ、俺はこの前この鬼に捕まって地獄を彷徨う羽目になるのか、俺はただ間違えられただけなのに。そう考えてしまうほど、目の前の女の殺気は強烈で俺は足が震えて動かなくなっていた。