いたちごっこ
親子による壮絶な戦いは治まることを知らなかった。
「そもそもなんで父さんは俺たちにこんなことを!」
クロ―フがホシェフに問いかける。するとホシェフからとんでもない答えが返ってきた。
「ただの実験さ。」
「なん・・・だと・・・!?」
「俺がただただ気になってやっただけさ・・・。お前ら兄弟は偽の親を、本気で自分の両親と信じこみ、何事もないままに育て上げられ、兄弟の関係に亀裂が入ってここまでに至った。レイダは”お前が生まれる前までは”って言ってたが、それは少し違う。お前もレイダもこの俺が捨てた。偽の両親は確かにお前が生まれる前に子供を身ごもっていた。だが、生まれた後、俺が取り替えたのさ・・・。」
常人には考えられない発言と思考で、クロ―フは頭が真っ白になる。
「・・・その子供は、どうした!」
「どうしたって?・・・殺したさ。」
ホシェフのその発言にクロ―フは完全に思考が停止した。
クロ―フは反射的にホシェフのことを刺した。だが黒い霧となって消え、背後に現れる。
「おいおいだめじゃないか。まだ話の途中だぞ。」
クロ―フは間髪入れずにホシェフに向けて刺す。それでも当たらない。
「よくない教育をされたな。」
クロ―フは呆れてものが言えなかった。育児放棄もいいところだった。
「だがこの実験には失敗した。レイダが俺が父親ということに気づいた。あいつの才能には尊敬する。そして、あいつを育て上げたノーランにもだ。だがあいつは掟を破った。だから死んでもよかったな。」
光を失った翡翠色の瞳にはもはや、何も映っていなかった。
「なぜ自分の子供に、そこまでのことができる。」
「なぜと言われても別に何とも思わないな。お前たちの母親が子供が欲しいといったから願いを叶えただけだ。別に俺は子供に興味なんかない。」
「俺たちは!お前のせいで!こんなに辛い思いをしたんだぞ!ふざけるな!!!」
クロ―フは喉がはち切れそうなくらいに叫び散らかす。レイダに刺された怪我もあってか、喉の奥から血が遡り、吐き出してしまう。ホシェフはクロ―フの悲痛な叫びを聞いても顔色一つ変えず、睨みつけた。
「だったら何だ。俺の知ったことではない。」
ホシェフがそういうと両手を前に出し、黒い渦を作り出す。
「しばらく眠ってもらう。先にノーランを痛めつけてからお前をじっくりと嬲り殺してやる。」
目に見えない速さで目の前に現れ、クロ―フの顔を黒い渦が覆いつくす。
クロ―フは渦に飲まれる中、意識を失ってしまった。目の前で倒れこむクロ―フを見て、ホシェフはその場を立ち去った。
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ノーランの前に二人のホシェフが並ぶ。
「どういうことだ。クロ―フ君はどうした。」
「しばらく眠らせた。お前とはゆっくりと話したいものでな。」
二人だったホシェフが合体して一人になる。
「ははっ奇遇だな。俺も同じことを思っていたところだ。だが生憎俺は、屑の戯れ言に、耳を傾ける気はないな。」
「言ってくれるじゃないか。俺たちは親友だろ?」
これまでの大罪を犯しても、けろっとしているホシェフに、ノーランは殺意が高まっていく。
「残念だがもうその関係に戻ることはできないな。たとえ俺たちが死んでも。」
「残念だな。」
ホシェフは霧になってノーランに襲い掛かる。
ノーランは剣で防ぐ。このままだと消耗戦になってしまうだけだと察し、ホシェフの弱点を探る。
「戦闘中に考え事とは、のんきな男だな。」
いやみったらしく笑みを浮かべ、力で押し通そうとする。だが体格的にノーランの方が大きく、なんとか力で押し返した。ノーランは攻撃を防ぎ切ったあと、院内を走り回る。
「おやおや。戦闘中にしっぽ巻いて逃げるというのは、どういうことかな?」
ホシェフは、逃げまわるノーランに向かって霧で作った黒い槍を投げる。ノーランはそれを避けながら走り続ける。院内の薬瓶が割れ中の液体が所々に散らばり、いろいろな臭いが嗅覚を襲う。
対策をあれこれ考えていたせいで、その先が行き止まりになっていることを忘れていて足が止まった。
「鬼ごっこは終わりかな?」
ホシェフが口角を上げてこちらへ向かってくる。その時ノーランはホシェフの異変に気付いた。
ホシェフの歩き方を見るからに、散らばった薬剤を避けて通っている。それにひらめき、ノーランは腰についている薬瓶を取り出すと、蓋を開け自分の武器にかけた。
結晶の剣と薬剤が化学反応を起こして綺麗な水色に光る。
「まだまだここからだ!」
ノーランはホシェフめがけて突っ込んでいった。




