家族
ミシュパハーはラズファに助けられ、小屋へと案内された。
「今日からお前はここで俺と暮らすことになる。なにかあれば言え。用意してやる。」
ラズファの言葉がミシュパハーを安心させる。
だが、ミシュパハーは実の兄に両親を殺されたことにより、人間不信になっていた。
状況の一個一個が呑み込みできず、黙って立ち尽くすことしかできなかった。
「その・・・どうしてラズファさんは見ず知らずの僕に優しくしてくれるんですか?」
そう言うミシュパハーの声は、震えていた。
ラズファはそっとミシュパハーの頭をなでる。
「どうしてって、困っている人を助けるのが普通だろ。それに俺はほっとけない性格なんでね。俺も家族を失った身だ。」
そう言ったラズファの顔はどこか悲しそうだった。
小屋に住み始めてからはミシュパハーはラズファに恩を返すため。家事に専念した。料理から洗濯、小屋の掃除とできることは何でもやった。
またラズファは日が沈むとどこかへ出かけるため、一人で食事をすることも少なくはなかった。
ミシュパハーの中ではある疑問が浮かび上がっていた。
―彼はいったい、何者なのだろうか―
見ず知らずの赤の他人にここまでできるのには何か裏があるのではないかと・・・。
ある日の昼過ぎ、ラズファと一緒に出掛けていると、
「ママ!見て!お花の冠を作ったよ!」
「まぁ。上手にできたね!ママにくれるの?うれしいわ。」
「パパぁ~抱っこぉ~・・・。」
「しょうがないなぁ。それっ!」
と家族の楽しそうな声が聞こえてくる。
「・・・。」
ミシュパハーは、暗い顔になってしまった。
ラズファはしゃがんでミシュパハーの目線に合わせ、
「そんな顔をするな。俺はお前の家族にはなれないけど、家族の代わりになることはできる。」
と彼を励ました。
ほんの少しだけ、ミシュパハーの顔が明るくなった気がした。
「抱っこでもしてやろうか?」
ラズファは揶揄うように言った。
ミシュパハーは顔を赤くして照れくさそうに怒った。
するとラズファの胸元についているネックレスに目がいった。
「あの・・・それは・・・?」
「あぁ、これか?これは俺の大切な人が入っているんだよ。お守りみたいなものかな。なんだか俺たち似た者同士だな。」
そう自嘲した。
「ラズファさんは、寂しくないんですか?」
想定外の質問が飛んできてラズファは目を丸くした。
「そうだな。寂しくないといえば嘘にはなるが、吹っ切れたという気持ちの方が強いな。失ったものはかえってくることはない。だから前を向いて進んでるんだ。そうでなきゃコイツと約束したことがすべて消えるからな。」
その表情は真剣だった。
「暗くなってしまったな。さぁ、この話はもう終いだ。帰って飯の支度をしよう。今日はお前の好きなものを食っていいぞ。」
ミシュパハーの顔が一気に明るくなった。
気づけば空は綺麗なオレンジ色に輝いていた。
他愛のない話が夕焼けの空に消えていった。
ミシュパハーの中でラズファに対する疑いはすっかりと消えていった。




