逆鱗
一方その頃、ガスマスクの男とラズファの間に奇妙な空気が流れていた。
「お前がリウを殺したのは本当か?」
ガスマスクの男がラズファに問う。だが、ラズファはめんどくさそうな表情でこう言った。
「何回も同じことを言わせるなよ。あの女は俺のことを裏切っただけだ。それ以外の何でもない。」
「なら質問を変えよう。お前がリウの姉を殺したのは本当か?」
ラズファの眉間にシワが寄る。
「何のことだ。」
「リウが最期にこう言葉を残していた。ラズファが姉を殺したとな。」
次の瞬間ラズファは失笑した。
「何か勘違いしているようだな。まぁ、そう言われてもおかしくは・・・ないか。なんせ、ナタリーを殺したのは俺の・・・双子の兄だからな。」
光の宿らない瞳が、ガスマスクの男を真っすぐと捉えた。ガスマスクの男は驚愕する。
「ナタリーは俺の住んでた町では絶世の美女と言われるほどルックスが良かった。だから狙っているやつも多かった。俺の兄もナタリーのことが大好きだった。だがナタリーはこんな俺を選んでくれた。だが、それをナタリーは公言しなかったのさ。面倒になることを知って・・・」
いきなり過去の話を切り出す。ガスマスクの男はそれを真剣に聞いている。
「だが、ついにそのことが、兄に知れ渡って、兄は嫉妬に狂って、ナタリーを殺したのさ。だから俺は、兄を殺した。今思えば、先に殺していれば。と後悔してるよ。」
自傷気味に笑いだす。その表情をうかがうからに、過去のことを悔やんでいる様子だった。
「これで納得したか?」
「お前ら兄弟がそろってクズだったということが分かった。」
ガスマスクの男は結晶で剣を作り、刃先を向ける。煌びやかに光るその剣はラズファの醜い顔と、ガスマスクの男の真剣な顔を映していた。
「お前は、尚更生かしてはおけないな。俺がこの剣で貫いてやる。」
ラズファの額に青筋が立つ。ガスマスクの男が自身の話を理解してくれないことに腹を立てていた。
「お前・・・。さっきの話を聞いていなかったようだな。なら、これ以上言っても無駄なようだな。お前を殺してミシュパハーも殺すことにしよう。」
背中にある大鎌を抜いたと同時に、ガスマスクに一直線で向かってきた。
お互いの武器が激しくぶつかり、火花を散らしていた。一瞬の隙も出させないスピードで両者がぶつかり合う。
「今日はつくづく苛立つ日だなぁ。どいつも勝手に勘違いして矛を向けてくる。」
ナイフポケットからナイフを取り出し、ガスマスクの腹にめがけて刺す。すると、ガスマスクの男は水になって消えた。
「またそうやって消えるか。」
「少しお前の力を見くびっていたよ。ラズファ。」
すぐに水が集まり、元の姿に戻る。
「悪いけど俺にはやることがあるからここで死ぬことはできないね。」
ガスマスクの男は手に無数の結晶の針を作り出す。そしてラズファに向かって投げた。
ラズファはそれをうまいことそれらをかわしていくが、光の反射などで見えていなかった最後の一針が、ギリギリでかわしきれず、頬が切れる。ラズファは、頭が真っ白になった。自身の頬から赤い鮮血がつうっと伝う。それを指で拭い、滲んだ指先を見る。
その瞬間、ラズファは爆笑した。
「はははははは!。やるじゃないか!お前だけは絶対に、綺麗な死に方はさせねぇ!!!」
ラズファは激昂した。




