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Anonymous Killer  作者: あねき
深く
11/24

ノルマ

 ―君は将来、ここの跡継ぎをするんだ!―

 ―君は頭がいい。―

 ―いつか、真実を知って―


 最後の女の一声でハッと目を覚ます。今まで自分の記憶で見た内容ではなかった。

(誰の夢・・・?)


  その声は、まるで自分に言っているかのように。

 嫌な汗が体を伝う。


 外は真っ暗だった。風が木々を仰いでいる。その音はまるで呻き声のようだった

(兄は今どこで・・・。何をしているんだろうか・・・。)

 ここ数日の出来事で本来の目的を忘れそうになっていた。


 一向に兄の影を見つけることすらできない。

 今どこで何をしているのか、そもそもなぜ両親を殺したのか、考えれば考えるほど疑問が増え続けていくだけだった。


 その時―


「おいお前!こんなところで何している!泥棒!」


 声のほうを振り向くと見知らぬ夫婦がこちらを見ていた。


 顔を見られた


 ―絶対に顔は見られてはいけない。もし見られたら殺さなければならない。―

 あの集団での暗黙のルールだ。


 ミシュパハーは咄嗟にナイフを取り出し、夫婦に刃先を向けた。

 心臓がバクバクと鳴る。ラズファが部屋を血濡れにした時以来の鼓動の大きさだった。

 夫婦が何かを言っているが、正気じゃないミシュパハーには何も聞こえなかった。


 次の瞬間、ミシュパハーは男の心臓を目がけて刺した。生暖かい血が手につうっと伝う。

 女は、悲鳴をあげる。倒れた旦那に近づき、体を揺さぶる。

 ミシュパハーは血の付いたナイフで次に女を刺した。女はナイフを受け止め、即死にならなかった。

 女は泣きながら懇願する。

「せめて・・・。この子だけは・・・・。」


 女は血濡れた手で、赤子を庇う。ミシュパハーはハッと冷静さを取り戻す。女は力尽きて倒れた。気づいた時には目の前には夫婦が倒れていて、血の海が広がってき、赤子の泣き声だけが耳に響く。

 ミシュパハーは目の前の光景を見て青ざめる。両手についた血を見て、血の気が引いていく。

 呼吸がどんどん荒くなる。


 時の流れがゆっくりに感じ、自分の心臓の音と、乱れる呼吸しか聞こえなくなっていた。


 その時、トンっと肩に重みを感じた。その一瞬だけ周りの音が静寂になった。


「初めてにしては上出来なんじゃないか・・?」

 聞き覚えのある声、どこか落ち着く独特な香り。ラズファが後ろに立っていた。

「ラ・・・ラズファ・・・さん・・。」

「悲鳴が聞こえたんでな。聞こえた方向に向かってったらお前を見つけたのさ。」


 ラズファは目の前の光景を見る。

「派手にやったねぇ・・・。今日のノルマ達成じゃないか。ゆっくりしようぜ。」

 ラズファの言葉が頭に入らなかった。そして彼はミシュパハーからナイフを奪い、赤子を目の前で刺した。

「いいか。ミシュパハー。”慣れ”だ。繰り返しているうちに”慣れる”ぜ。」

 赤子の泣き声が消え、風の音だけが耳に残った。


 ―慣れ― 


 ミシュパハーがちゃんと聞き取れた言葉はそれだけだった。


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