惨劇
「おい・・・。おい・・・!聞こえるか・・・!?・・・おい・・・!」
とある青年の声で目が覚める。
「ん・・・。ここは・・・。」
ゆっくりと緑色の瞳をした少年が目を開く。
「ここで何をしている。そんなに汚れて・・。何があった。」
青い髪の青年は少年に問いかける。
「僕は・・・。なぜ・・・?」
眠っていた間までの記憶をたどろうとするが思い出せない。
「お前・・・。見た感じまだガキのようだが、”家族”はどうした。」
”家族”という言葉を聞いたのと同時に焼け落ちた建物が視界に入り、失っていた記憶が鮮明によみがえった。
「父さん・・・?母さん・・・?」
目の前に映る光景は暗闇の中で倒れている両親と、ドロドロと流れる赤黒い液体だった。
理解できない状況に全身が凍り付いた感覚に見舞われその場に立ち尽くしてしまった。
「父さん!母さん!どうして!!一体誰が!!?」
両親のもとに駆け寄ろうとすると炎の渦が周りを覆った。咄嗟に手で顔を覆う。
その時だった。
「兄・・・さん・・・。?」
炎の渦の隙間から見えた人物は、なんと血まみれになった大きめのナイフを持っていた兄の姿だった。
「どうして!兄さん・・・なんで!」
大声で叫んでも兄は振り返らない。悲痛な叫びは炎と共にかき消されていった。
あまりにも突然のことで涙も流れず、その場から動けなかった。まるで見えない縄で縛りつけられているかのように。
炎はたちまち屋敷の中を覆いつくし、酸素がだんだん薄くなる。身体がよろめき、床に倒れこんでしまった。
(父さんも母さんも、みんな死んだ・・・。僕もここで・・・・。)
時の流れに身を任せるように、目を閉じた。
「・・・・地獄で会おう・・。」
完全に閉じきる前に、目の前で兄が一言だけしゃべった。その表情はどこか悲しそうだった。
現実世界に引き戻され、だんだんと感情が込みあがってくる
「父さん・・・。母さっ・・・!」
目の前で両親を惨殺された少年は、その一秒一秒の記憶が鮮明に蘇ってきて過呼吸を起こした。
「待て。落ち着いて深呼吸しろ。」
青い髪の青年は少年の肩を掴み、目線を合わせた。言われた通りに深呼吸をし、心を落ち着かせる。
「帰る途中。散歩をしていたら焼け落ちた建物を見つけてだな・・。お前が瓦礫に埋もれていたのを見つけて助けた。何があった。覚えている範囲でいい。」
少年は身に起きたことをすべて話した。家族が自身の兄によって殺されたこと。近づいたら突然炎の渦に囲まれたこと。兄が最後に言ったこと。覚えている範囲内で男に喋った。
「そうか。そんなことがあったのか・・・。だがお前の両親の遺体は探した限り見つからなかった。
一体何が目的だったのか・・・。」と男は一人でに考え込む。
少年は俯いてしまった。
「お前。帰る場所がないんだろ。なら俺のところに来い。面倒を見てやる。」と男はそういうと、少年に手を差し伸べる。
少年は男の手を取り、「よろしくお願いします。」と小さく一言だけ添えた。
「俺の名前はラズファ。お前の名前は?」
「・・・。」
少年は精神的なショックが強く、一部の記憶が消えて自分の名前を思い出せなくなっていた。
「名前が思い出せないのか・・・?なら、今日からお前の名前はミシュパハーだ。」
このラズファという男の出会いが少年の運命を変えていくのだった。




