終末の日 ♯9
ーカウントダウン開始します。発射まで残り10・9・8ー
艦内放送では最後のカウントダウンが開始されている。
「…もう時間もないみたいだけどあんたは乗らなくていいの?。まあ10秒もあれば扉を蹴破って中に侵入できるから別にいいけど。要するにあんたの犠牲は無駄ってことさ。」
猫型はそう言いながらレンメルの腹部から爪を抜こうとするも、その爪はどんなに力を入れても抜けなかった。
「何最後に足掻いてるの。邪魔だよ。」
そう言いながらもう片方の爪をレンメルの脇腹に突き刺す。血を吐きながらもレンメルは、決して猫型の腕を離さない。
ー5・4・3・2ー
無情にもカウントダウンは進む。
「早く離してよ。」
瀕死のレンメルの思いもよらない力に、苛立ちを隠せない猫型は再度レンメルの体に爪を突き立てようとしたその瞬間、レンメルは最後の力を振り絞り、猫型を建物の奥まで押し戻す。
驚く猫型をよそに、レンメルはポケットに忍ばせていたスイッチに手を伸ばす。
「化け物め。人類はお前らに屈しないぞ。」
そう言い放ったレンメルの視線の先には爆薬が積み重なっている。
レンメルの意図に気づいた猫型は、レンメルの腕を振り解き素早く外に逃げ出そうとする。
だがレンメルの指の方が早かった。
ー1・0・出航しますー
凄まじい爆発と同時に、宇宙へと発射される天照。
エマと共に新天地へ旅立ち、エマの幸せを見届けるという願いは叶わなかったが、仲間達を守り抜く事ができたという誇りを胸にレンメルは地球の大地に散っていった。
数分後、天照は無事に宇宙へと上がった。
ナラ、イーターが負傷した碧狼を医務室に運んでいる。
レンメルが碧狼と一緒にいない事に気づいたエマは、呆然とその場に立ち尽くしている。
各部隊の状況確認等で慌ただしい艦内の様子とは裏腹に窓から見える地球には、音もなく無数の核が降り注いでいた。