終末の日 ♯7
動物達との膠着状態が続く中、突如各自の無線モニターから映像が流れてきた。
「乗組員諸君。艦長のイーグル・ワシントンだ。突然で悪いがこの艦の今後の方針について報告したい。まず我が艦を取り囲む化け物共についてだが、今後奴らはパラサイトキメラ、略してP・ Cと呼ぶ。このP・Cは元々極微細な粒子でできており、そこから動物の体内に空気感染で入り込み寄生する。そしてある程度の栄養を得ると脳にまで侵食し自我を持ち変異し始める。その際に知能指数は通常よりも高くなり、今までよりも高等な行動を取ることができるようだ。P・Cの行動原理は今のところ解明されておらんが、一つだけわかっていることがある。それは人類の殲滅を目的としていることだ。奴らは遺伝子情報すら書き換え動物固有の能力が強化されておる。この情報は李広氏を始めとした科学者達が初日に確保した犬型のサンプルから解明してくれた。」
隣に得意気な顔をしている李広が映し出される。
「だが各国の政府機関との連絡は昨日から途絶えてしまっている。どうやら分水嶺は超えてしまったようだ。ただ各国の政府機関とは事前に決めていたことがある。『このままでは人類は滅亡する。だが天照だけは宇宙へ行ってくれ。人類の希望として次に繋げてほしい。』と。」
イーグルは話しながら目を閉じている。
「そして続けてこう言った。『これから24間後に我々は核を撃ち、この化け物共々自爆する。天照はその前に宇宙に上がってくれ。』と。…この天照は図らずも本当の意味で、人類の希望となってしまった。彼らの犠牲を無駄にしない為にも我々は20分後に宇宙へ上がる。総員3分前には所定の位置に着くように。以上だ。」
イーグルからの連絡は途絶え艦内には静寂が流れる。
碧狼は隊員達の様子を見ながら一拍置き、みんなに話しかける。
「みんな、放送は聞いたな。突然の事に俺も正直混乱している。今の話を聞いた限り、もう地球は奴らに侵略されかけている。だが俺達は最後の一人になるまで生き延びらなければならない。生きて生きて人類を次の世代に託すという責務がある。聞いた通り後少しの辛抱だ。俺たちの責務を果たそう。」
隊員達は碧狼の言葉に覚悟を決める。
「各員、定刻まで化け物共を天照に近づけさせるな。」
「了。」
碧狼の号令と共に隊員達は即座に行動を開始するのであった。