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終末の日 ♯4

オルトロス隊は天照へ向け歩みを進めていた。

だが歩みを進める彼らの目の前では地獄のような光景が広がっていた。


チャチャに似た犬型動物が非戦闘員を見境なく襲い、道端には無数の死体が転がっている。

犬型の口、爪からは血が滴り落ち、一匹で非戦闘員達を蹂躙してきたことがわかる。


数多の経験をしてきた屈強な隊員達も、その異質な光景に皆絶句している。

「助けるぞ。」

碧狼は短く言葉を発し、白衣姿の中年男性に襲いかかっている犬型に小銃で攻撃を仕掛ける。

しかし、犬型の反応は異常に早く碧狼から放たれた弾を全弾避け、標的を白衣姿の中年男性から碧狼へ変え猛スピードで突進してきた。

碧狼は小銃からナイフに切り替え応戦の構えを取る。犬型が目と鼻の先まで迫り、碧狼の顔へ五本の爪を突き立てようとした瞬間、犬型は弾け飛ぶように後方に吹き飛んだ。


「標的に命中。」

後方の森の中の木の上から、エマが冷静にスナイパーライフルを覗き込んでいるレンメルに報告している。

(レンメルか。助かったぞ。)

「ナラ、非戦闘員を救助しつつ天照へ向け前進だ。」


レンメルに感謝しつつ、指示を出す碧狼。

再び目的地である天照へ目を向けようとした時、暗闇から動物の光る目が出現した。

咄嗟に身構える隊員達の目の前には、半ば信じがたい光景が広がる。

先程レンメルの狙撃で倒したはずの犬型が再び碧狼の前に姿を現したのである。

レンメルがライフル弾を命中させた犬型の頭部からは軽い出血があるだけで、致命傷には全く至っていなかった。

唸り声を上げながら威嚇しているその姿は、碧狼達を完全に脅威と認めたように見える。

間髪入れず、後ろからナラ、ムカミ、イーターが小銃を犬型に向け一斉射撃するも、弾は犬型の皮膚を貫通せず力なく地面に落ちるだけであった。

生物の理から外れたその現象に唖然とする隊員達をよそに、碧狼は未知の生物の対策に向け頭を回転させていた。


「ナラ隊10人は引き続き犬型に向け射撃。弾切れになったらムカミ隊、イーター隊の順番で続け。射撃で動きを止めている間にカルフ頼んだぞ。」

碧狼は隊員達に指示を出し、自らも犬型に小銃を撃っていく。

犬型は隊員達の一斉射撃を脅威とも感じないのか、避けることすらせず、一斉射撃の圧力を押し戻すようにジリジリと碧狼目掛け歩みを進めていく。

だが10人以上の一斉射撃の圧により次第に動きが止まってきたのであった。


「今だカルフ。」

碧狼の声と同時にハルマーは、犬型にCー4爆弾を投げつける。

Cー4爆弾は犬型の腹部に直撃する。直撃と同時に凄まじい衝撃が隊員達の目、耳、鼻に襲いかかってくる。

(これでダメなら厳しいぞ。)


碧狼は半ば願うように黒煙の中を見つめている。

徐々に晴れてきた黒煙には犬型のシルエットがまだ残っていた。

一同は無言で銃を向ける。

しかし黒煙から出てきた犬型の足はちぎれ腹からは腸のようなものが飛び出ていた。

黒煙が完全に腫れると同時にその場に倒れ込む犬型であったが、その目はまだ碧狼達に敵意を向けている。

追い詰められた獣ほど怖いものはない。

今までの経験から碧狼はナイフを手に持ち、犬型の首へ突き立てようとした瞬間、先程助けた白衣の男性が碧狼と犬型の間に割り込んできた。


「ちょっと待った。犬を殺すのちょっと待った。おいそこの脳筋、お前は馬鹿か。状態は悪いが、こんな意味不明な化け物のサンプルを脊髄反射で処理するんじゃないよ。これだから脳筋は。」

急に現れ、碧狼に脳筋と捲し立てる白衣の男性に隊員達は呆然としていた。


「だ、だけど早く始末しないと次は何をしでかすかわからないよ。」

「いや、確かに俺たちはこの生物のことを何もわかっていない。」

混乱しているムカミは現実から逃げたいのか犬型の処理を提言するも、冷静さを取り戻した碧狼は白衣の男性の主張を肯定し、しばらく考え込みキング司令に無線で報告するのであった。


「司令、犬型一匹と会敵。交戦後捕獲。損傷は激しいですがまだ息はあります。これから基地を移送しようと思いますがいかがいたしましょうか。」

「碧狼隊長、よくやった。損害はあるか。」

「隊の損害はないですが、多くの非戦闘員が犬型にやられました。奴らは銃が効かず、Cー4でようやく倒せたのですが、この生物は一体何なのですか。」

「貴重な情報をありがとう。ただその生物については私もわからないんだ。とりあえず細かい報告は天照で受けるから、オルトロス隊は早く帰投するように。」

「了。」


「よし、イーター、ハルマーは犬の捕縛を。ムカミはこいつの護衛を頼む。」

「ちょっと待て。こいつとは誰のことだ。僕の名前は李広。世界最高峰の頭脳かつ天照搭乗が決まっている科学者だ。仲間からは敬意を込めて李先生と呼ばれている。野蛮な君らに僕の価値を理解できるかは些か疑問だが、どうしてもというなら君らも僕のことを李先生と呼んでもいいだろう。」

「天照まで残り500メートルか。各員こいつを護衛しつつ目標まで最短で向かうぞ。」

「無視するな脳筋がー。」


各地で激しい戦闘が起こっているのか戦闘音は鳴り止まない。

その喧騒にかき消されるように李広の小さい体から出る金切り声は、虚しく夜空に消えていくのであった。


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