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目覚めの時 ♯11

2200年4月17日


帰還当日の朝、大ホールにはほぼ全てのクルーが集まっていた。

クルー達の視線は先遣隊として出発する者達とイーグル艦長に向けられている。

クルー達の視線を確認したイーグル艦長はポツリポツリと話し始める。


「…我々は新天地を探しに宇宙へ飛び立つはずであった。だがあれから150年経ってしまった。150年という月日があれば我々か、若しくは子か孫が新天地を見つけ、穏やかに暮らしていたのかもしれない。だがそのような甘い妄想はP・C共に打ち砕かれた。…今の我々は一体何だ。先に進むもなく、黙っていればやがて滅びる存在になってしまった。だが150年前我々は地球と約束をした。人類の希望として次に繋げてくれと。今がその約束を果たす時だ。我々はもう150年前のようにただ奪われる者ではない。今日の為に様々な犠牲を出し準備をしてきた。それが今日実る時だ。…我々は奪還者だ。奪い返しに行くぞ。」


イーグル艦長の演説に大ホールには自然と歓声が上がった。

「ではこれから呼ぶ者達は前に出てくれ。」


歓声が収まるのを待ちキング司令が話し出すも、まだ大ホールには熱気と興奮が渦巻いておりざわめきは完全には無くなっていなかった。

キング司令は気にせず話し始める。


「まず戦闘部隊としてオルトロス隊25名、アンクーシャ隊25名の計50名。隊長は碧狼、ガネーシャが務める。」


キング司令の紹介に沸く天照クルー達。

2隊は恥ずかしそうに前へ出てきて敬礼をする。

碧狼が周りを見渡すと、ふとルイスと目が合った。

ルイスは手をヒラヒラさせ、早く行ってこいと言いたげな表情で碧狼に合図を送っていた。

思わず笑みがこぼれる碧狼を見て傍で緊張していたナラの気持ちも少し和らいでいた。


「そして2人たっての希望によりネレアー、セレーネーの2人も先遣隊に帯同する。彼らの力は皆も知っての通りだ。純粋な力ならここにいる誰よりも強い。きっと戦力になってくれるだろう。」


天照クルー達はまだその姿に慣れていないのか少し動揺している様であった。


「私達と一緒に来てくれてありがとう。頼りにしてるね。」


そんな空気を察したナラは2人をフォローするも、肝心の2人は大勢の前に出てきたことにより、緊張しそれどころではない様であった。

エマはそんな2人の姿を見て少し複雑そうな顔をしていた。


「続いて支援部隊として科学者10名、エンジニア10名、乗組員15名の計35名。科学者は李広教授、エンジニアは本田技士長、乗組員はシモン副長が各部門のトップを務める。科学者部隊には現地調査や怪我の治療。エンジニア部隊は機器のメンテナンス等。乗組員は大気圏突入機である「流星」の操作をしてもらう。そして現地における艦の全権はシモン副長へ依頼する。シモン副長、まずは動物の種類として比較的安全かと思われるオーストラリア大陸へ降下してくれ。しかし想定外の事象が起こった際には貴官に全ての裁量を持たせている。よろしく頼むぞ。」


シモンは無言でキング司令とイーグル艦長に敬礼をしている。

その隣では教授へと昇格した李広は満面の笑みを浮かべクルー達の前へと進んでいった。


「リコウ様、昇格おめでとうございます。この帰還サクセンで新たな発見をすればレキシに名を残すでしょうね。」

楊貴妃の持ち運びが不便だからと、李広によって犬型ロボットへと移植された楊貴妃が突然李広に向かって話し始める。

李広のこだわりで本物のチワワの様に精巧につくりあげられたロボットが突然話始めたことに本田、シモンは思わず二度見をしてしまった。


「以上計77名が先遣隊として一足早く地球へと帰還する。では各員、「流星」へ乗り込んでくれ。」

キング司令の号令と共に移動を開始する先遣隊。各員は重責を担っていることに対してのプレッシャー、喜び、不安など様々な表情を抱えつつ、各々が士気の高い表情で「流星」へと乗り込んでいった。


「…イーグル艦長、先遣隊全員乗り込みました。」

「キング司令、了解した。ではカウントダウン開始だ。」


ー1分前からカウントダウンを開始します。60、59、58…ー


流星内では各員が体をベルトで固定し出発の瞬間を待っていた。

無事に地球に帰還できるかという不安もありみんなの表情は固い。

部下達の様子を見た碧狼はオルトロス隊に向け唐突に話し始める。


「…みんなよく今日まで頑張ってくれたな。みんなのおかげで今日という日を迎えることができた。」

碧狼の話に口を閉ざし耳を傾けるオルトロス隊。


「…故郷のはずである地球が今となっては遠い惑星のようになってしまってみんな不安だろう。正直俺も同じ気持ちだ。だが俺達は150年前とは違い、P・Cに対抗できる力を持っている。…みんなの命をもう一度俺に預けてくれ。俺達オルトロス隊は一つの群となり敵を殲滅する。」

「隊長大丈夫ですよ。私達は隊長のことを心から信頼しています。絶対に奪還しましょう。」


ナラが言うように、碧狼の檄によりオルトロス隊の面々皆の意思は強固に結ばれた。

気迫に満ちたその視線は窓の先にある地球へと向けられるのであった。

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