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目覚めの時 ♯5

2200年1月2日


「諸君、150年という長い眠りはいかがだったか。昨日の今日で悪いのだが天照の今後の行動について相談したいことがある。」

会議室には司令を始めとした隊長格以上の面々と科学者、エンジニア。各部署の責任者が集まりイーグル司令の言葉に耳を傾けている。


「P・C襲撃から約150年。地球から逃げてきた我々であったが、宇宙に上がってからは感染症の蔓延、内乱等様々な危機があった。おかげで地球脱出時には700人いた人員は645人まで減ってしまった。この事については全て艦長である私の責任である。だが責任を取るのは我々人類が地球を奪還した時まで待ってほしい。それまでは私を信じてどうかついてきてくれ。」

イーグルの言葉にクルー達は無言でイーグルに対して敬礼をする。その姿を見てイーグルは静かに目を閉じるのであった。


「…それでは今後の行動について話をする。李広君とネレアー君、セレーネー君前に来てくれないか。」

「はい承りましたー。」


間の抜けた声で登場した李広はセレーネーに車椅子を押してもらい登場してきた。

体の弱い李広にとって150年の眠りから完全に目覚めるには、まだ日数が必要なようであった。

後ろではネレアーがパソコンを持たされ立っていた。


「まだ頭はボーとするがこの天才の頭脳はそれくらいハンデにもならないのさ。…でも喋るのが辛いから、僕の愛しの宝物に代わりに話してもらうよ。」

李広がそう言うとネレアーはおもむろにパソコンを開き始めた。


「ワタシの生みの親であるリコウ先生にお褒めいただきコウエイであります。」

急にネレアーが持っていたパソコンから器械のような音声が聞こえてきて驚く一同。


「ちょっと、みんな楊貴妃と初対面なんだから、びっくりしちゃうよ。あ、この喋るパソコンなんだけど、これが昨日話した人工知能の楊貴妃だよ。なんだか人間みたいでしょ。」

ネレアーはそう言いあっけらかんと笑っている。


「多分なゴショウカイ痛み入ります。それでは早速ですが今後の行動についてセツメイさせていただきます。」

楊貴妃は周囲の動揺も意に介さず淡々と説明をし始める。


「まず、チキュウの汚染状況ですが問題はないでしょう。150年間計算し続けていたので精度はモンダイないはずです。」

「おいおい、そんな言い切っちゃって大丈夫なのかよ。」

「これはワタシの計算結果なだけで、それ以上でもそれ以下もありません。あなたは確かオセロメー隊のルイス・ジャガー隊長でしたね。ワタシの計算に何かモンダイでもあるのでしょうか。そのコンキョを教えてください。もしかしてカンカクだけで言っていませんか。」

「…すいません、なんでもないです。」


理詰めで攻める楊貴妃にルイスは尻尾を巻いて逃げるしか無かった。後ろではガネーシャがニヤニヤと笑っている。

「ルイス隊長のせいで1分無駄にしました。ではツヅキを話します。」

(…俺が悪かったよ。)


「次のモンダイはP・Cへの対抗手段です。チキュウに帰還してP・C達が生き残っていた場合、今のままではゼンメツです。いや、P・Cは恐らく生き残っていると思います。その為にリコウ先生は、コールドスリープ前の段階でワタシにP・Cの細胞のサンプルを人体に取り込めないかのシミュレーションを依頼されておりました。」


「…隊長、コールドスリープ前に戦闘員は同意はしていましたけどやっぱりやるんですね。…やっぱりP・Cは生き残っているんですね。」

「そうだな。反対派の抵抗もあり計画は遅れていると思っていたが…。P・Cに関しては人工知能得意の計算とやらだろ。だが下手な憶測よりは信憑性がある。」

「おいおい碧狼よ、今更ビビってるのか?私は早く力を取り込んでP・C共を全滅させてやりたいよ。」

「ガネーシャ隊長、血気盛ん過ぎますよ…。」


小声で話す碧狼とナラに絡んでくるガネーシャ。

楊貴妃の話の受け止め方は各々違っており、中にはP・Cが生きているという事を聞き青ざめている者もいる。


「最初の数年はワタシだけでシミュレーションをしておりましたが、過去のジレイがないことから机上の空論に終わっていました。しかしムカミさんを始めとした6名が自らジッケンタイになることを申し出てくれました。ワタシは彼らのゼンイに甘んじ実験をカイシいたしました。最初の代、2世代目、3世代目で様々なジッケンをしたのですが特に何も起こらずデータ取りのみで終わってしまいました。4世代目からは胎児にサイボウを直接取り込ませました。その結果ネレアーとセレーネーという成功例が生まれたのです。」

「…成功例って。…今の話を聞いていた限りだと、結局胎児から細胞を取り込まないといけないと聞こえたのですが。」


ナラは非人道的な行為に対し、何も思わない楊貴妃とネレアー、セレーネーに違和感を感じている。


「端的に聞くとその通りですね。ただワタシ達は何世代にも渡り膨大な量のデータを取ってきました。そしてそれは失敗例だとしてもムダではありません。この失敗例のデータと成功例である2人のデータを元に98%の確率で細胞を取り込む方法をシミュレーションしました。」

「説明ありがとう楊貴妃。ということで誰か代表して実験体になる者はいないかい?僕が開発したAIが導き出した数字だ。信憑性は高いぞ。まあ98%なら大丈夫だろ。」


突然の話に会議室はどよめいている。

いくら98%の成功率でもまだ実績のないことである。

クルー達の目は自然とオルトロス隊、オセロメー隊、アンクーシャ隊に向けられていた。

「「「俺(私)がやります。」」」

そんな視線を知ってか知らずか3隊の隊長達は迷いなく、実験体になることに志願した。


「よくやるねー、…おっと。えーと3人同時だと色々と効率が悪いから誰か一人にしてくれないか。」

「ルイス、ガネーシャお前達は下がっていろ。オルトロス隊の隊長としてムカミの意志を俺が継ぐんだ。」

「碧狼…、お前だけいいカッコさせないよ。」

「私はなんでもいいから早く力をつけたいんだよ。」

「…なんでもいいから早く決めてくれよ。ジャンケンでもすればいいだろ。」


疲れが抜けず早く終わらせたい李広は適当に提案をする。

3隊の副隊長達は、隊長達に遅れをとった事に後ろめたさを感じつつ、心配そうに様子を見るのであった。

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