目覚めの時 ♯2
(…寒い、頭が重い。醒めない夢をずっと見ている気分だ。なんだ……眩しい?暖かい?)
碧狼の瞼の奥に光が入り込む。眩しさに目が開けられず手探りで周りの状況を確かめる。
(数分前にコールドスリープに入ったと思ったが、もう出てきたのか。…今の日付は?ダメだ、思考がまとまらない。とりあえず起き上がらなければ…。)
150年という年月を寝たきりで過ごしてきた体には少しの動作も重労働である。
やっとの思いで上半身を起こした碧狼の目の前に、見知らぬ少年少女が元気に飛び出してきた。
「「おはよーございます。」」
「…き…み…たち…は。」
甲高い2人の声が頭の芯まで響き、若干の目眩がおきる。
気を取り直して、今の状況を聞こうとするも、体同様発声することすらままならない碧狼は、かすれた声でなんとか話しかける。
「僕の名前はネレアー・カマウ。そして妹のセレーネー・カマウ。…その黒い髪と碧い目はもしかして碧狼隊長?」
「…ああ、そう…だが。なん…で俺のこと…を………なぜお前らがここにいる?」
前よりは少し声が出るようになった碧狼は、なんとか2人から情報を聞き取ろうと必死に会話を続けようとする。目も明るさにだいぶ慣れてきて、2人の顔もはっきりと確認できるようになり、改めて2人の姿を確認した瞬間、碧狼の脳裏にP・Cによる襲撃がフラッシュバックした。
その姿はあの日レンメルを亡き者にしたP・Cと同じように耳、鼻、髭がライオンのような形状をしていた。兄のネレアーに至っては顔の周りに立髪まで生えている。
「くそ…、侵入されて…いたのか。」
碧狼は落ちるようにベッドから下り、台にあった鉗子を手に取り、2人へ向ける。
「碧狼さんどうしたの?」
「にーに、もしかして私達の姿を見て動揺してるんじゃない?記録によると碧狼さん達の時代はまだ技術が確立されていなかったから。」
「あー、なるほどね。」
納得する2人を前にして、未だ警戒を解くことがない碧狼。まだはっきりしない頭には無数の疑問が浮かんでいた。
「碧狼さん落ち着いてください。僕達はムカミ・カマウの子孫なんです。」
ネレアーが話始めた途端、奥の方から悲鳴が聞こえてきた。碧狼に続き覚醒した者達が続々と起きてきては、ネレアー達の姿を見て動揺している。
「みんな、お願いだから落ち着いて。僕達は敵じゃないよ。話を聞いて。」
大声を張り上げ一生懸命、弁解するネレアーとセレーネー。
状況が飲み込めない碧狼の手には、いまだに鉗子が握られていた。




