終末の日 ♯10
2051年 1月2日
(待てレンメル。隊員を守ることが俺の役割だろ…みんな逝かないでくれ。)
あれから3日、碧狼は未だに意識が戻らずにいた。
時折酷くうなされ、見舞いにくる隊員達は隊長の安否を気遣っている。
「またうなされている…。隊長早く戻ってきてください。隊長まで失ってしまったら私達は…。」
ナラは悪夢にうなされる碧狼を心配そうに見つめている。
「隊長、天照は今宇宙にいますよ。戦いの様子は映像で見ました。あなた達が文字通り命をかけて戦ってくれたからこそ、今の私達がいます。」
意識が戻らない碧狼にナラは懸命に話しかけている。
「レンメルは残念でした。エマは兄が亡くなったことで悲しみに暮れています。隊員達にも動揺が広がっています。私達には隊長が必要なんです。…隊長。」
ナラの目にはうっすら涙が滲んでいる。碧狼の手を優しく握り、碧狼の回復をただ祈ることしかナラにはできなかった。
「……レ…ンメル。」
「え、隊長?」
ナラは最初聞き間違いかと思った。
だが碧狼の口からは弱々しいがはっきりと声が聞こえてきた。
「…ナラか。ここはどこだ…。天照は無事宇宙に上がれたか…。あの猫型は。…レンメルは。」
碧狼はゆっくりとした口調ながらもナラに質問を繰り返す。
いつもの冷静な碧狼と異なり混乱しているようであった。
「隊長、あなたは今重症なんですよ。無理はしないでください。」
ナラは碧狼の隊長を気遣い必死に宥めている。
「とにかく落ち着いてくださいね。今一つずつ説明しますから。まず、ここは天照の医務室です。そして天照は今宇宙に居ます。ほらそこの窓から地球が見えますよ。まあ私達が映像で見ていた地球と違って、青く澄んだ星ではないんですけどね。」
「…核か。」
悲しげに地球を見つめるナラ。
その視線の先には核兵器によってできた、ばい煙が地球を覆っていた。
「はい。私達が宇宙へ上がる瞬間を待っていたかのように各国が一斉に核を発射しました。もう地球は向こう100年は死の星でしょう。…それも全てP・C達のせいです。」
「そしてあの猫型のP・Cでしたが恐らくは、レンメルが倒したかと。」
「そうか、レンメルが倒したか。それでレンメルはどこだ。」
「…レンメルは猫型P・Cを道連れにして亡くなりました。」
ナラの報告に碧狼は言葉も出ず呆然としている。
自分を助け、レンメルが死んだという事実に、碧狼の目の前は真っ暗になってしまっていた。
「隊長、とにかく今は安静にしていてください。私も横にいるので何かあったら言ってくださいね。隊員達も隊長に早く会いたがってたので、早く元気になってみんなに隊長の元気な姿を見せてください。」
ナラは碧狼の心中を察し、無理に明るく振る舞う。
「それにレンメルもきっと隊長のそんな姿を望んでいませんよ。レンメルはきっと私達に人類の未来を託したんだと思います。レンメルの為に私達も頑張りましょう。だから隊長もいつもみたいに空気を読まないボケ隊長に戻ってください。」
ナラはそう言い、包み込むような優しい笑顔を浮かべ、碧狼に向け両手でガッツポーズするのだった。
「ありがとう、ナラ。気持ちの整理はまだついていないが今は怪我を治すことに専念するよ。それにエマとも話さないといけないしな。」
(空気を読まないボケ隊長とは何のことだろう。)
碧狼はそう言い残し、体を休める為、再び瞼を閉じるのであった。




