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終末の日 ♯1

今より遥か昔、遠い銀河を漂う小さな粒子の光。

光にはどこか冷淡さを感じる。

光はただそこに存在するだけでそれ以上でもそれ以下でもなかった。

(・・・。)

その光に感情はない。

(・・・・・・。)

感情はないはずである。

(・・・・・イ・・・・。)

誕生から2億5千万年かけ銀河を1周した光は、初めてそこに何かを感じた。

何かはわからない。

ただ妙に惹きつけられるその何かに向けて、ゆっくりと動き出すのであった。



2050年、地球は悲鳴をあげていた。

温暖化による地殻変動。

人口増加による食料問題。

大国が小国を飲み込む侵略戦争、国家内の紛争が多発していた。

そう遠くないであろう地球最後の日を回避する為、人類は宇宙へ上がり新たな地へ入植するという選択を取らざるを得ない状況であった。


2050年12月19日。日本宇宙開拓ステーション「JAFS」。多くのビルや実験棟が立ち並ぶ広大な土地の一画に、全長3,000メートルはあろうドーム型の物体があった。


その物体の名は超長距離宇宙移民船「天照(AMATERASU)」。

それは人類が他の惑星へ入植し生き残る為の最後の希望であった。


そして天照を中心に、様々な人種の人々が慌ただしく各々の作業に専念し、来たる大晦日出航に向け準備をしていた。


「出航まで2週間を切ったぞ。」

天照に隣接する訓練場では、多数の戦闘員達が各隊に分かれ訓練をしている。

その中の一団から一際大きな声が響いた。

「入植先では俺達が想像できないような場面がきっと出てくる。どんな場面でも柔軟に対応できるよう今の内に体に叩き込んでおけ。」

「了。」


天照オルトロス隊隊長、狩生碧狼カリュウ・ヘキロウ30人の隊員達に対し、実践同様の緊張感を持たせようと奮起を促していた。

後ろで束ねられた黒髪が汗で首にへばりついている。


碧狼の激励により隊員達は再び徒手格闘技の訓練に励み出した。

「隊長、もう17時ですよ。流石にもう切り上げませんか。限界です。」

オルトロス隊副隊長であるナラ・アイバーソンは金色になびく髪をかきあげ、碧狼に進言している。それは部下達の体力を気遣うというよりはむしろ自分の為の進言のように思えた。


「いや、俺の限界はまだ先にあるぞ。」

碧狼はきょとんとした顔つきでナラの提言に答える。

「あなたじゃなくて部下がですよ。」

(ふざけんなよ、この体力バカ。お前に付き合ってたら乳酸も鼻から出てくるわ。)

碧狼の言動に悪気がないことを理解しているナラではあったが、碧狼の天然ぶりに半ば呆れ顔で訂正する。

そして部下の前では理路整然と話すナラだが、心の中のナラは碧狼に対してキツく罵っていた。


(地上にはまだ天使がいたのか。)

ナラの心の中を知らない部下達は、ナラの美貌も相まり、純粋にナラに対し羨望の眼差しを向けるのであった。


「それにさっき言ってたじゃないですか。出航まで残りひと月だって。最後のひと月くらい地面の上でゆっくりさせましょうよ。次の入植先が見つかるまで何年かかるかわからないんですし。」

(こちとら無駄に引き伸ばされたドラマの中途半端なシーズンを、適当に見るという作業があるんだよ。早く帰らせろ。)


部下を隠れ蓑にした完璧な進言に、ナラの本音に気づかない純粋な部下達はまるで天使でも見るような目でナラを見つめている。


「お前らそんなに地面が好きなら腕立てでもするか。お前らの好きな地面がいつでも見れるぞ。しかも近くで。」

「この天然馬鹿。いや隊長。そういうことではなく、皆さん身体的にも精神的にも疲れ果てていて、このままでは出航前に倒れてしまいます。そうなったら元も子もないですよ。隊長、訓練の効率化の為に、みなさんに休暇を取らせたいのですが。…例えば1週間くらい。」


碧狼のあまりの天然ぶりに、思わず心の声が出てしまい慌てるナラであったが、平静を装い、改めて碧狼に多めに休暇を進言するという勝負出るのであった。

それを察知した隊員達も固唾を飲んで碧狼を見つめている。

「あー、まあ確かに。…それではオルトロス隊はこれより1週間の休暇に入る。各自各々休め。」

「了。」

ナラを始めとした隊員達は一斉に歓声を上げ狂喜乱舞し、碧狼が天然馬鹿であることに感謝するのであった。

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