表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ちむちー季節シリーズ

あおてんじょうのサンタクロース

作者: ちむちー

 


 俺がまだ幼い頃、お袋からこんな話を聞いたことがある。


 某サンタクロースご老人は〝自分の到着を子どもたちに教えるために、手に持った鐘を鳴らしている〟とのことだ。


 いやはや何とも可愛らしいホラ情報である。


 母曰く、彼はとにかくシャイな性格で、自らの声を聞かれたり姿を見られたりするのが恥ずかしくて仕方ないらしい。


 だから声を出す代わりに鐘を鳴らして、各家の子どもたちに早く寝てくれるように伝えてくれているのだ、と。 


 たしかに『あわてんぼうのサンタクロース』という童謡にも、イの一番の歌詞に必死に鐘を鳴らそうとする爺さんが描かれていたりもする。


 なるほど、うまいこと夜更かし真っ最中の子どもを寝かしつけようとする親の悪知恵を感じられて、自分がその立場に近付いてしまった今、ついついフフフと微笑んでしまうのだ。



 しかしながら、残念ながら子供の頃の俺は、物分かりのいい知能(アタマ)を有していたわけではない。


 むしろその逆、人一倍に好奇心に溢れるガキンチョだった俺は、クリスマスの夜にご近所の家から鈴やら鐘やらの音を一度でも耳にしようものなら、それはもう居ても立ってもいられずに興奮してしまっていたわけで。


 もちろんのこと即座に寝られるような心境になれるわけもなく、絶えず目をキラッキラに輝かせながら布団に正座して、ご老人のご到着を嬉々として待っていたくらいなのである。


 ああ、あの頃はピュアだったなぁと電気毛布にくるまりながら、たった今、年越しそばを啜っている俺。


 月日の経過とは恐ろしいな。

 しかしながら気持ちは分かるぞ、幼き日の俺よ。


 人生で一度は見てみたいもんな。


 プレゼント袋を抱えて家に不法侵入してくる小太りシャイ爺さんの姿をさ。


 あわよくばサインをねだろうかと枕元に色紙を用意していた年もあるくらいだ。


 ……現実(ウソ)に気が付いたのはいつ頃だったか。



 サンタ氏の、正体見たり、加齢臭(ハゲ親父)


 ああ、なんと夢のない世界であろう。



 ちなみに後から聞いた話だが、いつまでも寝ようとしない俺を見かねたお袋は、更にこんなエピソードまで付け加えてみたらしい。


 曰く、鐘の音がたくさん聞こえてくればくるほど、サンタクロース氏は世の中の良い子たちに〝より良いモノ〟をプレゼントしてくれようとしているのだそうで。


 ただし、朝までに届けられなくてはサンタはお家に帰ってしまうから、欲しければ一刻も早く眠りにつかなくてはいけないよ、と。


 なるほど、考えたものである。


 それならば子どもは黙って寝るしかなかろうよ。



 ……俺もそれなりの大人になった今。


 クリスマスの当日にはデパ地下で適当な鶏の脚を買ってきて、それをツマミに適当な酒ボトルを一本開けるくらいの中年男性になってしまったわけではあるのだが。


 ふと、そんなお袋のサンタエピソードを思い出すうちに、クリスマスが12月25日ではなくて、12月31日だったらよかったのになぁ、としみじみ思うことがあったりする。


 だってさ、ほら。大晦日にはさ。


 除夜の鐘が108回(・・・・)も鳴り響くわけだろ?


 たった1回鳴るだけで良いモノが貰えるのであれば、108回も鳴るともなるといったいどれほどの高級なプレゼントが用意されているのであろうか。


 子どもに買い与えられる玩具がせいぜい5000円だとしたら、単純に108倍をしてみても540000円か。


 仮に108乗の計算でもしてみれば、あら不思議。


 到達する金額は100桁か1000桁か、それこそきっと国中の人間が末代まで遊んで暮らしても余裕で有り余るほどの金銀財宝の山が出来上がってくれるはずだ。


 なぁ、過労死待ったなしのご老体よ。


 そもそも支払いができるのかサンタ氏よ。


 もしも本当に可能ならば、仕事納めの日をどうかもうあと五、六日ほど後にズラしてはくれまいか。


 年越しそばと甘酒くらいは奢ってやるとも。


 民放テレビの歌唱番組でも観ながら、のんびりと酒でも酌み交わそうじゃないか。


 目の前の金銀財宝の山々を愛でながら、さ。


 

 ゴーン……ゴーン……ゴーン……。



 ああ、ちくしょうめ。

 今年もまた、今年が終わろうとしている。

 金儲けの話も美味しい話もあるわけもなく。


 残念ながら俺の煩悩は、まだしばらくの間は消えてくれそうにないらしい。


 むしろ毎年のように膨れ上がるばかりである。

 それこそ青天井のように、だ。



 人の夢と書いて儚いと読む。



 ジャンボな宝くじでも当たればいいのに。

 助けたご婦人が金持ちだったらいいのに。

 毎日イセエビとステーキを食って暮らしてみたい。


 全ては叶わずとも、せめて初夢くらいは良き内容であってほしいな、と。


 ただひたすらに願う今年最後の夜である。

 

 

 


さてさて。

最後までお読みいただきまして

誠にありがとうございます(*´v`*)


なんか好きだなぁ……くらいでも

思っていただけたら最高に嬉しいです!

星評価、感想などもドシドシ待ってます(*´v`*)


ざっくりと調べてみたんですけど

2の108乗は

324,518,553,658,426,726,783,156,020,576,256

になるらしいですね(*´v`*)何て読むのコレ。


ちなみに5000の108乗は即座に諦めました←


ではまたどこかでお会いいたしましょう!

ではではではっ。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ