24_遺跡見学 トレジャーハンター3
必死に的当てさせられ、どのくらいの時間が経ったのかディープにはわからなかった。だが、無心にも近いような形で熱中していた。次第に光る円の使い方が理解してきたのもあり、投擲武器としての特徴が身体に馴染んでいった。
的当てが段々難しくなっていく中で使い方を学んでいく事の楽しさが勝り、気が付いたら光る円の使い方をマスターしていたディープだった。
的当てが終わると台座は白い地面にしまわれていき、手元には光る円が残っていた。
「あれ、これってどうすればいいんだ?」
ディープはエナとノインに光る円を見せながら聞くと、二人はニヤニヤと頷きながら、おめでとうと肩を叩いたのだった。
「え、どういうこと?」
「無事に遺物は回収できた、ってことだぜ」
「お前のものになった、っていう事になンだよ」
「こういう事って遺跡でよくある事なのか?」
「「稀によくある」」
「これってクリアできなかったらどうなるんだ?」
「遺物を失う」
「そして、強制的に遺跡の外に放り出される」
ディープは手元にある光る円を手に入れた事を現実として受け入れづらく、どうしたものかと思うのだった。
「おつかれ、ディープ」
「おつかれさまだったな」
何事もなかったかのようにエナとノインは二人を労い、戸惑いを感じつつも照れたのだった。閉まっていた扉も開き、駐車場があるフロアに出て遺跡から無事に出ることができたのだった。外に出たらすっかり暗くなっていたのもあり、その日は遺跡内に泊る事にした。
遺跡内で野営をしている時に、ディープは光る円が自身の持ち物であり他人に貸せない、渡せない物だと気づく。感覚的にそういうものだと認識し、どういうことなのかエナとノインに相談した。
「なあ、この光るコレってなんというか自分の物になってて、誰にも渡せないような感じになっているのだけど、どうしたらいいんだ?」
さすがのエナとノインも苦笑いしていた。
「まあ、戦力が増強したと思って喜ぶしかないな」
「自分専用の投擲武器か、やったな」
戦力が増強され、中距離での攻撃が可能になったとはいえ、これが元でトラブルに巻き込まれるんじゃないかと思い始める。
「……あのドクエクトルからさらに目を付けられるのではないか?」
ディープはぼそりとつぶやき、項垂れたのだった。
「絶対それは面倒な事になるから、町中とかで出さない方がいいな」
エナに言われ、しょぼくれるものの、仕方ないと思うのだった。
「まあ、滅多に遺物の武器なんて手に入らないし、逆によかったと思うのがいいさ」
ノインに励まされ、元気を出すことにした。
「それよりその光るそれ、名前とかあるのか?」
「逆に遺跡産の遺物って名前とかわかるのか?」
ディープは光る円をじーっと見て、こういった形の武器を見たことがなく、よくわかっていなかった。だが、光る円からディープに訴えかけるように名前を告げられたような気がしていた。
「……天輪」
「へぇ、遺物そのものが名を所有者に教えたとなるとその遺物は中々レアリティが高そうだな」
「レアリティ?」
「遺物にもランクがあンのさ、地域や国によって呼び名が色々あるがレアリティが高いってことは滅多にお目に掛かれない業物って事だ、つまり目を付けられる」
「やったなディープ、モテモテになるな!」
エナにからかわれ、気分は台無しになる。
「冗談でもやめておくれよ、しかし、これをずっと持ち続けるわけにもいかな……あれ……」
ディープは天輪を鞄の中にしまうにも武器であるため、普段すぐに使えるようにと考えた瞬間に手のひらい吸い込まれるように消えたのだった。
「え、あれ?」
「「おお」」
出したいと思ったらまたシュッと現れ、ディープはこれは便利だなと思うのだった。
「投げる動作をして直前まで見せずにし、投げる瞬間に召喚すればかなりのアドバンテージになるな」
エナの武器も似たような使い方をしていたのもあり、同じ仲間を見つけたのか笑っていた。
「いい武器だな、自分も欲しいくらいだ」
「いやこんなに光っていたら攻撃する時にバレるだろ」
ディープは天輪の光具合にケチをつけると光量がなくなり、白い輪に変わったのだった。
「はーっはっはっはっはっは」
エナは指をさして笑い出した。
「ノイン、ノイン! 見えてないだろうけど、あの天輪が光らなくなったぜ」
「フフッ、それは笑うな。意思疎通できる遺物なのか、これはまたレアリティが高いな」
二人から笑われ、自分が持つ新たな武器から少しばかりバカにされた感じがしたものの、こういう時間は悪くないなと思うのだった。
何より、新しい武器を手に入れた、というのがなにか嬉しかったディープであった。
たが、装備解除不可であることに気づき、これは呪われたものじゃないのかと考えたら、天輪から何か失礼なという思いを感じるような気がし、少し驚いたのだった。




