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13_指名依頼 護衛編その1

 ディープは、指名依頼が正式に来るまでの間は町で情報収集をする事にした。

 町の造りは石材やコンクリートで作られており、最初に田舎村とは大分違うなと感じていた。大通り沿いを歩いていくと市場がある通りや宿が立ち並ぶ通りなどもわかりやすく区切られていた。

(まずは市場に行って、食料を仕入れつつ、話を聞いてみるか)

 干し肉、香辛料などを仕入れ、その際に聖界について知っているか、聞いてみたりしたが、どこも異世界の門についても知らないとのことだった。

 

(参ったな、ここら一帯は異世界人は少ないのか?)


 思った以上に情報がなく、ディープはやはり大きい町じゃないとそういった情報も入ってこないのか、と感じるのだった。

 

 ディープが知りえた情報というのは、エナとノインからこの世界は堕界と呼ばれる世界であるという事だった。堕界のどういう所なのか、という考えが出ておらず、いずれすぐに元の聖界に戻れるだろうという軽い気持ちだった。


 ディープが異世界転移した場所はアレーサ半島と呼ばれる場所であり、東西に伸びた半島。クレッセントアーク共和国が統治し、東西を結ぶ貿易国として知られている。転移した場所はその半島のやや南にある位置にあり、東西の貿易路からやや離れた位置にある田舎であった。7つの地方にわかれ、それぞれ公爵家が統治を行い、治安対策や財政などを担い、王族がそれらをさらに管理している。

 堕界の中で様々な商人や冒険者が行きかうため、情報や貿易に対して質と量も良いとされている。

 だが、そんな国でも田舎となると情報が回ってこないものであった。ディープが元にいた世界は通信技術が発達しており、そういった情報を検索すればある程度わかる世界だった。

 

 不安感と焦りのようなものがディープの中で燻っていた。

 

 人口千人程度の町であり、周囲に開拓村がいくつかあり、その拠点となる町だった。まだ名前のない町であり冒険者などもさほど多くなく、貴族の兵士などが巡回やモンスターなどの討伐を請け負っていたりする。兵士といってもちゃんとした装備を支給されているわけではなく、各々が稼ぎ新調していく習わしだった。

 とはいえ、訓練をある程度しているため練度が高く、流れの冒険者よりも腕前があり、町の住民からの評判も良い。

 

 行きかう人たちとコンクリート造りの建物を見ながら、もっと大きな町に行かないと埒が明かないと気づき始めたのだった。ディープの感覚では、元の世界ではこういった町並は存在しなく、歴史か創作物の中でしか知らない景観だった。

 

(ほんとに、これは元の世界に帰れるのか?)

 

 文明格差を感じ、異世界の門の扱いすらわかっていない世界なのではないかと感じていた。そもそも異世界の門をどう認識しているのか、と疑問が湧いてきていた。

 

(魔術が主流とか言っていたけれど、魔界とは繋がってるはずだ。だとしたら、聖界にだってどこかに門が存在してもおかしくない。現に言葉が通じているし……)

 

 異世界人同時、異世界内の言語が問題なく通じるようになったのは、異世界の門は各異世界に出現し、いつの間にか言葉が通じるようになったからだ。通じていない場合、異世界と異世界が繋がっていないという事になる。

 

 ディープが知っている常識であった。

 

(これ以上、町の中で情報収集しても、あまり意味無さそうだ……戻るか)

 

+


「お、どうだった? ってその顔は無かっただろ」

 エナとノインがさっきまでいたテーブルにまだ居たのだった。

「お前、さてはわかっていたな?」

「ははは、悪い悪い。まあ、いい時間つぶしにはなっただろう?」

「ほら、指名依頼が来てンぞ。ディープはどうする?」


 テーブルの上には依頼票の紙が置かれ、ノインが人差し指でトントンと促してきた。

 一旦、ディープは席につき、その依頼票に書かれている内容を読む。

 

 依頼内容

 キャンプ地を経由し、貿易待合所キングスペイを目指す。

 途中、盗賊など脅威となる敵が発生した場合は討伐。

 護衛ではあるが、脅威となる対象の討伐が主となる。

 討伐対象の逃亡時の討伐は任意とする。

 

 日程三日

 固定報酬 一人二万クレジット

 依頼主 エルー・カッツヒ


 ディープは特段目立った記載がなく、詳細にかける情報しか提示されていない事にそういうものか、と思った。

 また二万クレジットが高いのか、低いのかわからなかった。

「この依頼料って……」

「お、ディープも気づいた? 割がいいよなぁ」

「だが、このキナ臭いンだよな」

「そこなんだよな、護衛寄りじゃなくてどちらかというと威圧目的としての護衛なんだろうな」

 二人の会話から、相場よりも高い事がうかがえたディープだった。

 

「ここに居ても仕方ないし、請けて他の場所に向かった方が可能性がありそうだな」

「そう言うと思ったぜ」

 エナはニヤッとし、ノインも頷いていた。

 すぐさま、エナは依頼票を手に取り、ギルドのカウンターへ行き依頼を請ける事を伝えていた。

 

「夕方あたりに飯食いながら依頼内容の詳しい話をするってさ」

 エナが受付から何か聞いたのか、戻ってくるなり話はじめた。

「表通りを行った先に一番大きな飯屋で個室とってるってさ、まるでオレたちが依頼を請けるのを見越していたようだぜ」

「そりゃ、そうだろうな。トレジャーハンターが空振りして大きな町に戻る途中なら赤字分を補填したいンだろって思うからな」

 

 夕方まで三人は夕飯は奢りなのか、どんな料理が出るのか、他愛のない話をして時間を潰したのだった。それはディープにとって、この異世界にきてからの違う文化の話であり、あっという間に時間が過ぎる程、刺激的だった。


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