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12_この世界の常識?

 外壁もない村から、外壁が存在する町に到着した三人は身分を示す冒険者カードを門番に提示し、町の中に入れてもらった。

 

 冒険者ギルドに盗賊に襲われた報告をし、証拠品を提出する。

 

 盗賊を五人退治したことと証拠品の提出を行い、盗賊一人を逃した事とテイマーだと受付カウンターにいる係の女性に説明をした。すぐさま、盗賊との戦闘があった場所の確認依頼と逃げたとされる盗賊の追跡依頼が発行され、印刷された。

 

(エナとノインは手慣れたように報告をしているけど、ここ辺では普通のか?)

 

 球体型から紙へ照射されることで、紙に依頼内容が印刷されていた。それを係のものが依頼ボードに貼り付けに行くと待機していた冒険者が受けるかどうか話し合っていた。

 

「こちらが最低査定クレジット額になります。追加依頼の達成によってクレジットが加算される事があります。その場合、後日カードに通知が表示されます。張り出された依頼の期限内に通知が来なかった場合は加算はなかったと判断してください」

 

 事務的なやり取りにディープは頷く、エナもノインも同様に頷いた。

 

「盗賊退治、倒した五人の分け前はパーティ結成時のルールに従い四棟分にされます。パーティ用資金に一、個々人に一、となっていますがお間違いないでしょうか」

 

 受付の女性は宝玉型の端末を操作しながら、ディープたち一行に確認した。

 

「問題ないぜ」

「同じく」

「ボクもだ」

 

 三者同時に肯定する返事をすると係のものが頭を下げ、それぞれの冒険者カードに通知が入った。

 

「それではおつかれさまでした」

 

「なあ、ちょっと聞きたい事があるんだけどあのあたりの席が空いてるから、あそこで話そう」

 エナが指を指した場所は周りに冒険者もいなく、六人は使えるような大きめのテーブルと椅子がある場所だった。二人はエナについていき、その椅子にそれぞれ腰掛けた。木製の椅子であるため、クッション性はなく、長時間座るには適してなく、テーブルもどことなく汚かった。埃などはないものの、傷が目立っており、お世辞にも居心地の良いとは言えなかった。

 

「それで何を聞きたいんだ?」

 

 対面のエナに質問内容を確かめると彼の視線はディープの腰あたりを見ていた。

「それ、その剣だよ。普通、あんなにスパッと斬る事できないだろ」

「はぁ? お前のそのスキルだって大概だろ。似たようなものだ」

 ディープは戦闘中に何もない所から何かして盗賊を倒したエナに対して切り返した。

「いやいや、全然違うから。ノインもそう思うだろ?」

「闘気を刃に乗せていたからエナと似たようなものだろ」

「はぁ!? まじかよ」

 エナが大きな声で驚いた事によって、ギルド内の視線が向く。その視線からエナは周りにぎこちない笑顔で何でもないですと頭を下げた。

 

「いや、お前そこまでできる剣士だったのか?」

「英雄と成りうるじゃなンかな?」

 二人は楽しみだと言わんばかりのテンションだった。

「全く、ボクをなんだと思ってるんだ」

「まあ、いいじゃねえか。それでその剣って業物?」

 エナはディープにずかずかと前のめりになって聞くのだった。

「普通の、訓練用の剣だよ。それよりエナはスキルを何?」

 

 ディープはノインが言っていた闘気を刃に乗せていたからエナとにたようなもの、という言葉が気になっていた。

 

「ん、まぁ……」

「なんだ? ボクは答えたぞ。これは訓練用の剣だ。何なら触って確かめて見てみるか?」

 ディープは鞘から剣を抜き、テーブルの上に置いた。

 

「確かに普通の……いや、重心や造りに粗がない刃こぼれもない、歪みもない、名剣だなこれ」

 エナは手に取って、ショートソードを確かめながら口にした。次第に目が見開き、釘付けになっていた。

「おい、もういいだろ。返してもらうぞ」

「あっ」

 ディープはエナから剣をとると、鞘にしまった。

 

「わかったよ、オレの武器は確かにスキルと言われてるようなものだ。外で教える、ここだと人目が多いからな。それでいいだろ?」

「わかった、その時はしっかり教えてくれよ」

「それにしてもディープは、荷物がそのウェストサックだけっていうのは……」

「何って、これはマジックバッグだ」

 エナは怪訝な表情をし、ノインは身を乗り出した。

「お前、マジックバッグ持っていたのか」

 周りに聞こえないような小さな声だった。

「なんだ? それだってマジックバッグなんだろう?」

 指さした方向にあるのは、エナが床に降ろした大きいリュックサックだ。

「まぁ、そうだけど。なんだか、さも当たり前のように知ってるっていうのがな」

「知らないと思うが、『普通』じゃなンだからな?」


 マジックバックは見た目ではわからない程、中に空間が広がっており、物を一定量収納が可能な遺物である。ディープは容量の大小があっても誰もが持っているものだとディープは思っていた。

 

「ここらじゃ持っているのは貴族やランク上位者くらいだ」

 どんな田舎なのだろうかとディープは感じていた。それが常識のズレがまだ本人にはわかっていなかった。

 ディープは田舎からある程度大きめな村に移動した事でまともな情報を得られると思っていた。だが、情報格差が存在するという事をディープはあまり認識していなかった。この世界より高度に発達した文明での生活をしていた為、この堕界においての情報の伝達、共有、精度というのを全く誤解していた。

 

 それは無理もなく、事前に行く先の歴史、文化、環境、様々なリスクを知らずに転移したのだから。

 

「お放し中、すまない。ちょっといいかな?」

 巨体な顔つきが怖い大男と大女が現れた。ディープは二人をサメのような顔だと思った。大男は分厚いガントレットを装備し、大女は三本のサーベルを腰に帯刀していた。どちらも色白で目つきがきつく、冒険者というよりも暗殺者みたいな強面だった。

 

「我々は商人の護衛任務をしていて、盗賊を退けた君たちのパーティも一緒に参加可能か、依頼主から確かめてきてほしいと言われて声をかけた」

 

「護衛? どこまで?」

 エナとノインが当たり前のように話に応じていた。ディープはそれに少し不思議な感じがあり、とんとん拍子に進んでいくことに違和感を覚えていた。

「ここから北の都市――」

 大男が地図を出し、説明してくれた。

 ディープはテーブルに敷かれた地図を見るとエナが持っていたものと違うタイプのものだとわかった。そこから地図が統一されていないのもあると知ったのだった。

 エナとノインは大男と話しを進めていた。ディープは話が終わるのを聞きながら待ち、冒険者ギルドだとこういうことは良くある事なのかと思っていた。


「それでは、後で指名依頼を出しておく……トレジャーハンターのエナとノイン、そちらは……」

「ディープだ」

 大男は頷き、名乗る。

「申し遅れた、私の名前はデュラアー、後ろの相棒はクアクーラだ。今日中に指名依頼が君たちに行くと思うのでそこで依頼料など確認してほしい。よろしく頼む」

 そう言うと二人は依頼主と思われる人物のところに戻っていった。


「請けるか、請けないかは依頼料もだけど、請ける方が良さそうだとは思う」

「どうして?」

 エナの言う事がどうにも確信めいたものでディープだった。

「この町には、ディープが求めている情報は手に入らないからさ」


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