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070 夏の入口。春との再会


 初っ端から珍道中をかました俺ではあったけど、今日が半人前から一人前としてのスタートなのに変わりは無い。

 栄えあるブリュンヒルデ本隊の一員として、こっから更なる躍進を遂げる。薔薇色未来に夢を馳せてる内に、団長も団長補佐筆頭も登場しなかった開会式は終わった。


 そんでもってここからが本題。なんでもブリュンヒルデ本隊なんて呼ばれているが、本隊全体が一個として動く訳ではないんだとか。

 隊長一人、他隊員の四、五名での一個小隊のチームで動くのが基本らしい。となれば気になるのはこれから先、戦友となる同期についてなんだけど、うん。


「まさかアンタ達と一緒の隊とはね」

「あァ?そりゃこっちの台詞だっての」

「うーん。なんとなくこうなるんじゃないか、って予感がしてた僕が居るよ」


 各小隊に与えられた待機室で顔を合わせたのは、今朝と代わり映えのしない面子でありましたとさ。


「予感?なにか根拠であるの?」

「根拠ってほどでもないよ。ただ、小隊はいわばチーム。チームに大事なのはバランスだろ、エシュラリーゼさん」

「この際シュラでいいわよ、クオリオ。にしてもバランスね⋯⋯ま、確かにヒイロは典型的な脳筋前衛だし、そうなればアタシやクオリオが目付け役に選ばれたって不思議じゃないわね」

「誰が脳筋だコラ。テメェだって暴走しがちだろうが」

「ぐっ⋯⋯」

「⋯⋯うん、まぁ、多分僕は後衛兼、ヒイロとエシュ⋯⋯もとい、シュラの分のフォロー役としても組み込まれたって所かな」

「フォローだァ?そんな細腕で俺を抑えられるとでも思ってやがるか、クオリオくんよォ⋯⋯」

「そういうとこだって言ってるんだ馬鹿ヒイロ」


 好き勝手言ってるクオリオだけど、言い分は分からんでもない。手綱握りはともかく、俺はインファイター、シュラは魔術も使うけど役割は前、中衛だろうし。クオリオもがっつり後衛だ。

 こうして分けてみれば、綺麗にバランスが取れてるといえるだろう。


「だが小隊っつうのは四、五人の隊員が居るもんじゃねーのか? 数が足んねえだろ」

「確かにそうね。隊長サマもまだ来てないみたいだけど⋯⋯あのパエリアみたいに変な奴だったら、いっそ叩っ斬ってやろうかしら」

「恐いこと言わないでくれよ」

「冗談よ」

「冗談に聞こえないから恐いんじゃないか」

「──然り。だがここは、やれるものならやってみせよ、と言っておくとしようか」

「「「!!」」」


 雑談にまさかな答えを挟んできたのは、まさかな人だった。

 ガラガラと戸を開けて入って来る、これまた俺達に縁のある眼帯の男。ついこの間お世話になったばかりの、シドウ教官その人である。


「し、シドウ教官?!教導官の貴方が何故ここに?」

「ベイティガンか。なに、因果なものでな。かつて私を教導職へと追いやったオードブルの不正を暴いた功績で、また本隊の騎士と返り咲く事となったのだよ」

「本隊って。じゃあ、アンタが⋯⋯」

「然りだ、ミズガルズ。私が貴様らの隊長という事となる」

「ハッ、マジかよ」

「マジだとも。ヒイロ・メリファーよ」


 しかもシドウ教官が俺達の隊長かよ。マジか。まあパエリアとかより全然マシだし、頼り甲斐ある人なのは間違いなかった。

 でもここだけの話、一回コテンパンにされたから少し苦手意識あるんだよな。


「では、僕たちとシドウ教官とで一個小隊ということですか?」

「教官ではない。隊長である。そして質問への回答だが、隊員は貴様らだけにあらず。今より紹介するとしよう────入れ」

「はいっ!」「は、はい」


 シドウ教官、もとい隊長に促されて入って来たのは、ひと目で双子と分かるほどに似ている姉妹だった。


「えーっとぉ⋯⋯はじめましてだねい、野郎共!ウチはシャム・ネーシャナ!天下無敵のシャムちゃんだよ!以後よろしくぅ!」

「ね、姉さん声大きい⋯⋯えっと、リャム・ネーシャナです。よろしくお願いします」


 もう夏の入り口に差し掛かったのに。

 過ぎたばかりの春の桜が、ふわりと舞った気がした。



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