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031 泣きっ面にスパルタなクオリオ

 突然だが──魔術には全部で六色あるらしい。

 火炎を司る赤。水氷を司る青。風雷を司る緑。大地を司る黄。

 これら四原色はあくまでメジャー。つまり他にも二色属性がある。

 それが『白』と『黒』である。


 黒とかいかにも闇を司ってそうだがそういう訳ではなく、定義としては「魔獣」と呼ばれる存在が使う魔術を総じて黒の魔術って呼ぶらしい。

 で、残ったの白の魔術。

 普通ならば光を連想しそうなもんだが、どうやらこの世界じゃ白は汎用。つまりはコモンスペルが大半なんだとか。

 コモンスペルとはつまり、魔術師が日常的に使う、『呪文(ルーン)』と『触媒』が無い魔術のことだ。


 例えばちょっとした物を宙に浮かべる「浮遊」だったり、ドアの鍵を開け締めする「施錠」だったり、魔素で出来た膜で対象を包み込む「包囲」などなど。

 そういう地味ぃ〜な魔術ばかりで、戦闘に使える魔術なんかは片手で数える程度しかないらしい。

 しかもその魔術も、ステータスにバフをかける"補助オンリー"ですって奥さん。


 えー、つまり、わたくし主人公でありながら魔術師だと後方支援タイプらしいです。


 光魔法? ビーム?

 赤魔術師に生まれ変わって来いだってさ。ははん。


 うわぁぁぁぁ〜ちくしょぉぉぉぉぉ〜〜なんでこぉぉなるんだよぉぉぉぉ女神様ァァァァァァァ!!!!!!







 はい。

 突然じゃあないけど、どうも。

 先日、空き地の中心で心を挫いた主人公です。

 実質、四原色に適正無しという判定に絶望しましたが元気です。無傷ではないけども。

 正直ショックだった。やっぱり王道に憧れる者としては、派手な魔術をぶっかます爽快感とか味わってみたかった。


 だが無気力になるにはまだ早かった。

 確かに俺には四原色の魔術を使うことは出来なかったが、そもそも当初の目的は魔素のコントロールがメインだ。

 で、クオリオが言うには魔素を扱う技術ノウハウ的は、別に白魔術であっても問題自体はないらしい。


「あー、つまり?」

「喜べヒイロ。調練じゃへばってばかりの僕だが、魔術に関しては得意分野だ。魔素の扱いを磨く為の修行方法なら沢山ある。徹底的にやろうじゃないか」

「⋯⋯おいクオリオ。なんか私怨入ってねぇか」

「まっさか。勘違いだよ。調練でダウンした僕を何度か煽ってくれた事を根に持ってるとかじゃあないさ、ははははは!」


 その日からというもの、俺の自主鍛錬のメニューに『魔術師修行』が加わった訳なんだけどな。

 いやもう⋯⋯これが本当にしんどかった。

 とりあえず魔素の扱いに慣れなければ始まらないからと、魔術をひったすら反復使用させられた。

 つっても俺に四原色の魔術を扱う才能はない。だから代わりにコモンスペルを用いて修行することになったんだけども。


 物体を浮かす白魔術⋯⋯「浮遊」。

 これを使って羽ペンやら本やら瓶やらを、延々と浮かせ続ける修行。

 鍵の開け締めをする白魔術⋯⋯「施錠」。

 これで南京錠の鍵や寮部屋の鍵を、延々と開け締めしまくるだけの修行。

 対象を魔素で包み込む白魔術⋯⋯「包囲」

 こいつでガラス瓶などの壊れてやすい物体を覆い、テーブルから落として強度を確かめるだけの修行。

 「感知」は魔素の扱いが未熟な俺にはまだ早いから無しとして、上三つの修行をひたすらやる訳である。


 さて、お分かりいただけただろうか。


 圧 倒 的 に ! 絵 面 が 地 味 !


 いやね、俺に四原色の才能がないのが悪いってのは分かる。

 分かるけどさぁ、ほんっと地味過ぎんの。最初の村外の草むらで延々とスライム狩るようなもんだし。

 しかも俺の得意な鍛錬とは勝手が全然違うから、コツを掴むだけでも相っっ当に苦労した。

 体力よりも精神力を費やす修行なもんだから、疲労感も段違いだし。


「白魔術の特徴は汎用が大半である事と、何より呪文と触媒いらずって所だね。つまり他の属性と違って魔素(気力)さえ続けばいくらでも修行し放題、という事だ。良かったなぁ、ヒイロ」


 って感じで監督役のクオリオはなーぜーか、ノリノリでスパルタだし。

 朝の鍛錬、そっから調練。夜に修行して、寝てまた起きて。

 そんな、こってり豚骨ラーメンよりも濃度の高い一日のスケジュールの繰り返し。

 そりゃあ、時なんてあっと言う間に流れてしまった。

 うん。具体的には二週間くらい。


 二週間後。ジェミニの月(5月)、7の日。

 つまり入団から丁度一ヶ月経過したことになる。

 はい。お分かりいただけますかね。



「それではこれより、選抜試験を行うっっ!!」



 あっという間に来ちゃったよ、ビッグイベント。

 



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