昨日の敵は今日の友か?~2話~
前編から続きです!少し長くなってしまったので中編作りました。よかったら楽しんでください。
何かがおかしい。
誰からもしゃべりかけてもらえない。
授業中はもちろんだが、休み時間すら誰1人も寄ってこない。
小さい頃から転校ばかりしてきたが、こんなことは生まれて初めてだ。
隣の席の西郷さんとの謎のやりとりはあったものの、それ以後の1時間目、2時間目の休み時間は、自分の席から微動だにせず、ずっと一人でポツンとしていた。
私の半径2メートルくらいの範囲で、人を寄せ付けないバリアでも張られてるのかと思うくらい、閑古鳥が鳴いていた。
あっという間に3時間目の休み時間だ。
授業のレベルにはついていけると安心しても、カーストトップどころか、最底辺ボッチになってしまう可能性が出てきた。
流石にまずいと思い、話しかけれそうな人を探すのだが……
なんかほんと異様に静かなんだよね……
とりあえず周りを観察していると、ふと、前の方から視線を感じた。
最前列のど真ん中にいる、片耳をかけたボブスタイルヘアの女の子がこちらをじっと見ていた。
あれは確か……
タッセル事件でほとんどの人を覚えられなかった
が、あの子はなんとかわかる!夢野さんだ!!
ぱちん、ぱちんと夢野さんは何回もこちらにウインクをしている。
え?なに??可愛い!もしかして私を呼んでる!?お呼ばれしちゃってる合図なの!?
ふへへ!!これで孤独ともオサラバ!!急いで駆け寄って「あの!!」とウキウキで声をかけたのだが。
「……」
まったく夢野さんは反応がない。
なぜっ!?
だが、何故かまだこちらを見ながらウインクをしている。
「あの〜、夢野さんですよね?」
「!?」
その幼げな可愛い顔が、びっくりするくらい険しい顔へと豹変した。
「なにあなた!!?今がどういう状況かわかってるの!!!邪魔しないで!!!」
「ええええ!?」
ど、どういう状況!?とは聞けないくらい、なにやら切羽詰まったような様子だった。
そして、まだウインクし続けている……。
な、なんか取り込み中?だったのかなあ…わかんない。
とほほ。勘違いだったのか…
よろけながら自分の席に戻ろうとした瞬間だった。
「きゃっ!!」
ぶつかってしまったその女の子は、一言の感嘆詞でわかるくらい透明感があってとても綺麗な声だった。
「あっ!!ごめんなさい……」
私は慌てて謝るもその子の名前はわからなかった。
しかし、声も素敵だが顔もびっくりするくらい可愛い。このクラスレベル高すぎでしょ……
凝ったヘアアレンジをしていて、なんとなく趣味が合いそう……是非、友達になりたい。語りたい!
「あの〜」
「うひいーーー!?ごごごごめんなさい!!」
彼女は突然ぶるぶる震えだし、理由はまったくわからないが酷く怯えている様子だった。
「調子こいてすみませんでしたぁ!!」
途端に彼女はあろうことか、膝から崩れて土下座しだした。
「あっ?え?え?え?」
あまりのことに私はドン引きしてしまう。
同級生の女の子の土下座を初めて見た衝撃たるやいなや。
「これでぇ!!勘弁してくださぁーー!」
そう言うと彼女は何を思ったのか、私に財布手渡して「ひええええ!!」と叫びながら教室を飛び出して行ってしまった。
「……え?なにこれ?」
私はもはや涙目になって絶望すらしている。
どうやら人生初のカツアゲをしてしまったようだ。
どうしてこうなった……
皆目見当もつかない。
時間は残酷に時を刻み、心ここにあらずな状態で授業を受け、4時限目の終了のチャイムが鳴る。
そして、とうとうボッチのままお昼ご飯の時間に突入してしまう。
流石にこの時間はクラスも賑わい始める。
私は1人呆然としていた。
財布の彼女も飛び出したきり帰ってこない。
しかし、いつまでもここでボッーっとしてるわけもいかず、 だが、既にできあがったグループのランチに混ぜてもらう勇気はもう1ミリもなく、教室の片隅で1人お弁当を食べようとする。
1人で食べるのは初めてだなあ……私ってもしかして嫌われてるのかな……
ゴソゴソ。
リュックからお弁当を取り出そうとするが、なかなか見つからない。
「あっ!?」
人がいるのに思わず声が盛れたのは、まさかのお弁当を忘れてしまったからだ。
ええ?なんで?
私不幸すぎない?
グーっと腹の虫がなる。
こんなに落ち込んでてもお腹が減るのは、そういえば朝ごはんすら食べるの忘れてた。
……どうしよう先生に言って取りに帰ろうかな?
えーと、先生は……
教壇の方に先生がいるのだが、何やらどんよりしている。
なんだか話かけづらいな……
あんなに脚フェチについて語ってた時は明るかったのに。
そっとしておこう.......
うーん……しかしどうしたものか。
……そうだ、家に電話かけてみようかな。
ここではかけれないな。よし。
教室から近いトイレも人がいる可能性があるので、私は少し離れた図書館前のトイレに直行する。
長年の勘でそういうとこはお昼休みすぐ行けば人もほとんどいないはず……故にぼっちは静かに電話をかけられる。
到着してそっと中に入り、辺りを見回す。
よし!溜まり場になってない!
しかし、人が来ないとも限らないのでさっさと用を済ませることにする。
ドアを閉めて便座に腰を下ろし、家に電話をかけコールが鳴る。
待てよ……考えてみると親にお弁当届けてもらうってはずしいことのような…
うーん。まあお母さんならいいか…
「はいはいはい朝倉です」
「うわあお父さんかあ!?私!朋花だよ!」
「うわあ!?お?おお?おおおおお!朋花ぁ!どうしたこんな時間に?」
我が家のサンドバッグことお父さんである。
大抵の事は笑って許してくる。
「ちょっと聞いてよ!それがさあ!学校でムキムキの裸の女の子が!」
「ん〜??ちょいちょい?興味深いワードではあるけど、用件はムキムキ裸女がいるってことなのか?」
「違う、違う。あー、実は家にお弁当忘れちゃって……苺の巾着袋入ったお弁当が私の部屋にあると思うんだけど……」
「ん?んんんん?あー!!なんか玄関前にあったわそれ!!可愛らしいあれな!」
「玄関前にあったの?よかった!もうパパっと学校に持ってきちゃってよ!」
「すまーーん!なんかムラムラして食べちゃった!!」
「ええ!!?」
「悪い!!学食かなんかで食べてくれるか?後で立て替えるから!!お父さんこれから大事な会議があるから!じゃ!!」
「ちょっ!!?」
電話が切れる。
「おっ、おやじーーーーーーーーーー!!!」
「転校初日のぼっちの学食はきついでしょーがー!!」
無情な叫びがトイレに響く。
「どうしよ……。財布は鞄の中だっけ……あれ?そういえばさっき調べた時なかったような」
信じらんない…あんなに準備したのに……もうやだあ。もう帰ってお菓子作りでもしたい……
「はー……」
とりあえず教室に戻ろうとするが…
「何だ!何事だあ!!?」
「え!?うわあああ!!?生首!?」出し抜けに頭上から大きな声がしたと思ったら、あの西郷さんがドアに顔だけ引っ掛けて物凄い形相でこちらを見ていた。
「さっ、西郷さんか!?どどど、どうしてここにゃ!?」
「教室から叫び声が聞こえたんでな。急いで駆けつけたんだが。どうした?気分でも悪いのか?」
え?心配してくれたんだ……。でも教室からここってかなり離れてるんだけど……
まあいいや。
結局、西郷さんだけだな……私に話しかけてくれる人。
実は悪い人ではないのかも?死ぬほど非常識だけど。
西郷さんごとドアをそっと開ける。
「あの、大丈夫です。ありがとうございます」
正直、まだ正面切ると怖いし、友達になれる気は今はしない。でも、気にかけてくれているのは素直に嬉しかった。
「ふぇっ!!フィクショーーーン!!フィク!!フィキショーーーーン!!!!……おおっとくしゃみがすまん!今日は冷えるなあ!」
「あはは……」
服着ればいいのに。
「クンクン」
「へ??な!?」
不意に詰め寄るやいなや、犬みたいに体を隅々まで嗅がれた。
「なんか良い匂いするな貴様!」
貴様って……付けたあだ名は呼ばないんだ……
「ええっと、ちょっとだけ香水つけてます……もしかして匂いきついですか?今朝急いでたもんだから」
「ふむ……ちょいトイレ臭いかな」
いや、ここトイレだからでしょ。なんかやっぱり話噛み合わないような。
「なるほどね。……女の子は良い香り纏わせたいもんな……わかった!」
「え?」
「せっかくだ!特別に転校してきたお祝いをプレゼントしよう!」
「ええ?いいですよそんな悪いですよ」
これまでつかみどころのない言動に振り回されたが、これはこれで予想外で少し照れる。
「トイレ臭いのやだろ?ちょっと待ってろ」
「はい??」
お尻をこちらに突き出し、前傾姿勢の謎の構えをとりだした。
だから私臭くないって…… まーた不穏な空気になったなあ。一体何が始まるんだろ?ぷりんぷりんのお尻こっち向けてるけどプレゼントなんだよね?喜んでいいんだよね……?
「封印解除ぉぉ!!!」
「ひ!?何が!?」
「トワレトワレトワレ!トイレでトワレ!!」
「はあ?なんなの!?怖ァ!!」
「あああああ!!!パルファム!!」
ボフンッ!!
「ええ!?お、おなら??おならをしたの!?なんでぇ!?てかなんかフローラル系の香りがするぅっ!!」
「喜んでくれいるようだな?まだまだこれからあぁぁぁ!!」
「パルファム!」ドゴッ!!「パルファム!!」ドドッゴラ!!「天然のぉーパルファムゥ!!!」バッフーーーンッ!!
一言一おならというべきか。何か叫ぶ度に放たれる無尽蔵な放屁に、初秋には似つかわしくない、澄み渡る春の花の匂いで、トイレ一帯が優しい香りに包まれていく。
「うあああああ!!!なにこれぇ!!どうしてぇえ!?」
優しい香りと相反して、轟轟たるおならの爆音に腰が抜け、その場に座り込んでしまう。
「よっしゃ骨抜きかあ!?ならば今度はこれだあ!!!ロールオーーーンタイプゥ!!!!」
「むごご!?」桃のような生尻を顔に擦りつけられる。
「ああああ!!なんだこれは!!なんなんだぁこれはぁ!!!!!」
「むごーー!!!」 いやあんたがなんなんだ!!?いや!待って!!そんな馬鹿な!?なんか凄い柔らかいというか、パウダーパフでポンポンされてるような気持ちよさと、ベビーパウダーのような良い匂いに包まれてるぅーー!!!女性らしい柔らかさが気持ちいい!
「はぁはぁはぁ定着完了!!……よーし!!!オーデコロンモードに移行!!」
「はへぇ???」
西郷さんはわけのわからないことを言い続けながら、十分間くらいの間ずっとおならを放ち続けた。
ブルルッ!!ボフフフン!!ボフッ!!
「イェイ!!フレグランス!!!おぅ!ピュアなフレグランス!!」
いつになったら終わるんだろ……ぷりんぷりんなお尻を眺めながら、その場で立ち尽くすことしかできない。
ポフッ!
「おっと失礼!これはサントゥール!!」
「……うへへぇ?」
「よーし!!大丈夫だぞ?仕上げだ!!」
「これがぁぁ!!魅惑のオリエンタルフローラルハミングだあーーーーー!!!」
ぼふぅーんっっ!!!
「ぐああああああああ!?深みがあるぅ!!」
……終わった……の……?あたりは静まり返る。
西郷さんはいつの間にかいなくなっていた。
何か最後に言っていたような……?
「なんか私……凄く良い匂いがする」
茫然自失で少しの間動けなかったのだが、何故か清々しい気分になっていた。
「なんか匂わない?」
「ねー。高級感ある的な???」
ハッ!?どうしよ誰か入ってきた?
あわわわわ!
「あっ、なんか人倒れてる?大丈夫ですかー?」
「はぁはぁ、あへぇ、そのお尻が柔らかくて、はぁはぁ、あへぇ!!そゆことなんですぅ!!」
「は?お尻?」
「え?なにこの人?息荒いし、髪ボサボサだし.........トイレで何してたの?」
「私はこれで!!!」
脱兎のごとく逃げ出した。
これが後に世に語られる連続おなら事件なのである。
文章力ないけどがんばりました!クスリとでも笑えてもらったら幸いです。