おやつ交換
ちらっ…。
きょろ、きょろ。
ちら、ちら…。
三人の子供が、神社の境内にいたよ。
三人とも、初対面。
三人とも、お母さんを待ってた。
「ねえ。」
「ね!」
「ねえねえ!」
「「「あーそーぼー!」」」
子供たちはすぐに仲良くなったよ。
一緒に境内の石を積んだり。
一緒にオオバコ相撲をしたり。
一緒に歌を歌ったり。
一緒に手遊びしたり。
一緒にドングリ拾ったり。
「ねえねえ、同じもの探ししよーよ!」
「なにそれ?」
「お互いの、同じものを探すんだよ。」
「目がある人ー!」
「「「はーい!」」」
「おへそがある人ー!」
「はーい!」
「しっぽがある人ー!」
「はーい!」
「羽が生えてる人ー!」
「「はーい!」」
「わっかがのっかってる人ー!」
「はーい!」
「けっこう似てるのに、似てないんだね!」
「同じところを見つけるの楽しいね!」
「違うところを見つけるの楽しいね!」
「ねえねえ、おなか空かない?」
「うん、おなかすいた!」
「おやつたべようか!」
「「「お母さんからおやつもらってるんだ!」」」
「僕ドーナツ持ってるよ!」
「僕いつくしみの心持ってるよ!」
「僕たましい持ってるよ!」
「「「おいしそうだね!!」」」
「そうだ!交換しない?」
「「いいねえ!!」」
「じゃあ、僕はこのドーナツをもらうね!」
「じゃあ、僕はこのいつくしみの心をもらうね!」
「じゃあ、僕はこのたましいをもらうね!」
ぱく、ぱく、もぐ、もぐ・・・!!
そこにお母さん方が戻ってきたよ。
「ぎゃあああああああああ!!!何食べてんのおおおお?!」
人間のお母さんが言ったよ。
「魂なんか食べて!!二重人格になっちゃったじゃないのおおおおお!!!」
天使のお母さんが言ったよ。
「ドーナツなんか食べて!!甘い事しか言えなくなっちゃったじゃないのおおおおお!!!」
悪魔のお母さんが言ったよ。
「慈しみの心なんか食べて!!!憎む心が消えちゃったじゃないのおおおおおお!!!」
お母さんたちはカンカンだったよ。
でも、食べちゃったもんは、仕方がない。
「「「もう!!知らない子と遊んじゃダメっ!!!」」」
ずいぶん時間がたったよ。
神社の境内に、若者が三人いるよ。
「ちーす。」
「やあ。」
「どうも、どうも。」
三人とも、人間みたいだ。
「どうよ最近。」
「やばいですね。」
「まずいですよ、ええ、」
でも影を見ると、角の生えて尻尾生えてるのと、輪っかの乗ってるのが二人いるよ。
「俺完全浮いてるんだよ、あだ名はジキルハイドだぜ?」
「僕悪人しか育てられなくて…。」
「私は魂一つも刈れてないんです。」
「「「おたがいやらかし」たよなあ」たよね」てしまいました」
「どうにかならないもんかね。」
「いい人を育てたらいいんですけど。」
「魂刈れたらいいはずなんですけどねえ。」
「俺ら幼馴染じゃん。」
「そうですね。」
「今でも親友です。」
「悪魔さあ、俺の魂刈れよ。」
「はあ?!できませんよ!!いやです!!」
「天使さあ、俺を育てろよ。」
「はあ?!僕にそんなの無理ですよ!」
「まあ待て、俺の中に魂が二つある。」
「その悪い方を刈るだろう。」
「それで悪魔の問題は解決だ。」
「俺の残った魂はずいぶんヤサグレている、厳しいことを言っても傷つくだけだ。」
「天使は甘いこと言って俺を甘やかせ。」
「俺が癒されれば天使の問題も解決する。」
「俺は今の生きざまを変えたいと願っているからな。」
「お前らに頼みたい。」
「いいんですか。」
「いいんだよ。」
「よろしいんですか。」
「はやくやれ。」
「頼んだぜ、親友。」
ざんっ!!
悪魔は人間から悪い魂を刈り取ったよ。
「…僕はもう駄目だ、僕は、僕は…。」
「「大丈夫ですよ、いいことがいっぱいありますよ、ほら。」」
天使は手のひらに幸運を出したよ。
「今からあなたは幸運の風に吹かれて、困難ない人生を歩み始めますよ。」
「何をしてもうまくいきますよ。」
「いい人と出会いますよ。」
悪魔は人間の目の前に立って言ったよ。
「あなたの周りに現れる悪いものの魂は私が刈り取りますね。」
「あなたが憎いと思うものの魂を私が刈ります。」
「悪い人は排除しますからね。」
ふるえていた人間は、天使と悪魔を見て、にっこりわらったんだよ。
「ありがとう!」
人間は、ずいぶんいい人になったんだよ。
人間の周りには、いい人がいっぱいなんだってさ。
人間の周りには、悪い人がいっぱい来るらしいけど、なぜかすぐに消えてしまうんだってさ。
今でも仲良し幼馴染はずっと仲良しなんだよ。
今日もほら、一緒におやつを食べているけれど。
「僕はやきとり食べようかな。」
「僕はジェラシーの心を。」
「私は嫉妬心をいただきますね。」
絶対に交換したりはしないんだってさ。
それがいいよね、うん、平和だよね。
種族を越えた友情は、まだまだしばらく、続くみたいだよ。
うらやましいね。
僕も友だち、欲しいなあ。
僕のおやつは世界。
僕とおやつを分け合ってくれる友達が欲しいなあ。
君のおやつ、分けてほしいな。
もらいに行っても、いいかなあ…?