2話
「そう気を落とすなって。団長の言うことも一理あるけどアドルフのしたことも間違いじゃない」
隣を歩いているカイがそう言った。今アドルフは独断行動の罰として一人買い出し係にされた。最も、一人で持ちきれる量ではないが。買い出しリストをみたカイが手伝いを申し出たのだ。
「別に落ち込んではねえけど」
アドルフは山賊の頭領と戦いアドルフは脇腹に一発もらい、頭領の右肩に一撃与えた。
相手が短刀をまともに振れる状態ではなくなりーこちらも同様だがー山賊側が撤退していったのだ。
「あのままだったら数が少ないこっちが不利だったしな。」
アドルフは頭領が逃げていく時に言った言葉の事を考えていた。
『お前にとって魔女は悪か?』
その時俺は、
『魔女そのものは悪じゃない。』と答えた。
「どうした、アドルフ?」
カイが心配そうな顔で覗き込んでいた。
「やっぱ傷が痛むか?」
「まあ、痛むが大したことじゃない」
「そう、ならいいが。お前に抜けられるとかなりの痛手なんだぜ、無茶しすぎんなよ」
「分かってるって」
「ったく、あの鬼団長め。」
アドルフはベッドに身を投げた。買い出しの量は2人でもギリギリで両腕が既にパンパンだった。
「おい、飯出来たってよ」
「分かった」
カイが呼びに来たので体を起こした。
日は完全に落ち暗闇が支配する中に一カ所昼のように明るい所が存在した。そこには村の住民の殆どが集まっていた。
中央には大きな焚き火があり、その火を中心に人々が集まっている。
(今日もか)
アドルフはうんざりしたような顔をしている。
「よう、アドルフ、警護ご苦労さん」
八百屋のおじさんが声をかけてきた。
「3日ぶりだっけか?祭り」
「そうですね」
3日ぶり、じゃない。まだ3日しかたってないんだ、前回から。
それにこれを祭りとか言うな。
「では、今宵の裁きを始める」
ざわめきが小さくなり全員が声の主の方へ顔を向ける。
アドルフ達より一段高い場所に声の主、司教は座っていた。
「今宵裁かれる者を箱へ」
焚き火の近くにある箱、と言うより牢に近い物に一人の少女が押し込められた。そしてそれが焚き火の上に吊された。
「被告、エーラ・セレスは黒魔法を用いて隣の家の赤ん坊を殺害した。また・・・」
教会の人が根拠のない罪を羅列していく。
「以上のことからエーラ・セレスを魔女と認める」
「エーラ・セレスを火刑に処す」
司教が木槌を振り下ろす。
木と木がぶつかり合う音がし、牢がゆっくりと落ちていく。
「いやーーーーー!いや、いや!いやーーーー!!」
断末魔のように叫びながら彼女は炎に飲まれていく。
「うっ」
人の焼ける臭いに思わず吐き気がしてしまう。
そう、これが祭。
魔女裁判と言う名の祭。
「いやー、今日も良い声で鳴いてくれたな」
なんでそんな風に思えるんだ。
「あんな根も葉もない言いがかりでなんで人が死ななきゃいけないんだよ」
アドルフの近くでそんな声が聞こえた。
(俺と同じ考えのやつがいるのか)
近くには人が沢山いて誰が言ったのかは分からなかったが同じ考えの人がいて安心した。
「今宵の裁きはこれまで」
司教のその言葉を最後に今日はお開きとなった。
翌日、アドルフは一人町の周辺の見回りを任された。
「昨日の今日で傷全然癒えてないんだけどな」
町の外を山賊の残党がいないか見て回った。
昨日の山の近くまで来たがそれらしい人物とは会わなかった。
帰り道、町から少し離れた草原に人影を1つ見つけた。
アドルフは不審に思ってその人影に近づいた。
どうやらしゃがみ込んで何かしているらしい。
近づいていくと草をむしるような音が聞こえてきた。
(草むしり?それとも)
アドルフは周囲の草花を確認した。
(いやしかし、この草を使うには)
アドルフが真後ろに来てもずっと草をむしって手元の籠に入れている。
その籠には同じ草が沢山入っていた。
「おいあんた、のそ草の効能しってんのか?
体をビクッと震わせ、半回転しながら前に飛ぶ。
こちらを向いたそいつを見て、そいつが少女であることに気がついた。
髪は肩の中程まである金髪、目も髪と同じ金色でまだ幼さが残る顔立ちをしている。年はアドルフとたいして変わらないだろう。
「な、なんだ、あんた!」
少女は少し後ずさった。
「お前、修道騎士か。何のようだ!」
「いや、君に用がある訳じゃないんだけど」
アドルフは足下の草を一つ取った。
「君はこれを使えるのか?」
少女は当然だろと言うような顔をしている。
「当たり前じゃん。じゃなかったら何でこんな草とる必要があんだよ、てかあんたも分かるのか。こんなマイナーなの」
「まあな、母親が薬師だったからな。そういう君は何でしってんだ?」
「ああ、あたしはこの町の診療所でお世話になってるから」
それを聞いてアドルフは納得した。この草は傷薬の薬草の効果を高める働きを持つ。この草だけでは何の効果も得られない。
「なあ、あんた。脇どうしたんだ?」
「え?」
アドルフは自分の脇のあたりを見る。特に不自然なところは・・・
「脇怪我してんのか?ちょっとみせてみな」
アドルフの目が細められる。
「何で分かった?」
アドルフが自分の服をたくし上げると腰からみぞおちのあたりまで包帯で巻かれていた。
「随分と乱暴な巻き方だな、痛くないのか?」
「もうそれほど痛くはないが、それより何で脇にケガしてることが分かったんだ?」
少女が包帯の上から傷に触る。少しだが痛みが走った。
「何でって見りゃわかるさ、うわっ、ナイフか?この傷」
(だから何で分かるんだよ)
「ちょっと診療所来い。ちゃんと手当てしてやる」




